True One. 〜偽れざるモノ〜

 

「おっはよ〜♪」

「..........」

 僕の挨拶の対象になった相手は、僕の挨拶に机に俯せていた頭を眠そうに持ち上げ、そしてこちらを一瞥すると挨拶を返すことなく「ん〜」と聞こえるか聞こえないかの声で呟いて再び視線を机に戻す。

「.....相変わらず眠そうだねぇ」

 この一見無愛想とも思える反応も、気が付けば当たり前の日常だった。低血圧という事もあってか、このクラスメイトとそろそろ2年目の付き合いになろうとしてるが、未だに明け方にテンションの高い彼を見たことは無い。

 .....最も、今の時期は更にその他の要因が重なってもいるんだろうけど。

「..........」

「やっぱり学祭の準備が忙しいのかな?」

「..........」

 反応が無いのにもめげることなく(慣れてるだけかもしれないけど)、僕は更に会話を続けようとすると、『学祭』の所でぴくんっと彼の体が反応を示す。分かってはいたけど、どうやらこれが核心らしい。

「.....せっかく今だけはその事を忘れて眠りに就こうとしてたのに、嫌な事思い出させるなよ.....」

 そして恨めしそうな目でじろりとこっちを見る。

「刹那的だねぇ」

 始業10分前の何処まで本気か分からない台詞を苦笑混じりで受け止めると、彼はふんっと鼻を鳴らして、

「お前に比べてたら俺の安らぎといえる時間は『刹那』という程しか無いんだ」

 とそう宣った。

 この無愛想なクラスメイト、直樹はこれでも学園トップの秀才にて生徒会長、ついでに文化系ながらクラブの部長も兼任している。容姿端麗、長身の体躯と整った顔立ちから発せられる鋭い眼光は一種のカリスマすら漂わせている.....というのは彼に憧れる者の弁だが、とにかく天が二物も三物も与えてしまったという人物なのは間違いなかった。

 最も、彼に言わせればその所為でそれに見合う言動を強いられ、幼児期からその相応の代償を散々払わされてきた分寧ろ貧乏くじを引いていると不平をこぼしているが、やっぱり外野から見ると羨ましいことこの上なかったりする。

「ん〜、直君も大変だねぇ」

 とりあえず良い慰めの言葉も見つからなかったので無責任に相槌をうってみる。

「.....直君はやめろ」

「おろ?直ちゃんの方が良かった?」

「.....何で素直に直樹と呼び捨て出来ない、お前は.....」

 机にふっ俯せたままで更に脱力する仕草を見せる直樹。

「なんでと言われても.....そんなに嫌?」

「嫌だ」

 脱力気味ながらも、返答を面倒くさがる事無く間髪入れずにきっぱりと言い切る。最も、このやりとりは彼と初めて出逢った時から延々と続いている日常会話なのだけど。

「なんで?その方が可愛いよ?」

「.....お前と違って俺は可愛いと言われて喜ぶ趣味はないんだ」

 そしてぷいっと僕と反対の方向を向く。

「ん〜.....でもさ.....」

 と僕が何か言おうとしたところで彼は不意にこちらに振り向き、不機嫌な表情で

「言っておくが、俺の方が圧倒的多数派だからな」

 ぴしゃりと僕の反論を遮った。

「う.....」

 状況は明らかに劣勢になりながらも(というか優位に立った事なんて無いけど)、まだ引き下がらない。

「で、でもボクは言われたら嬉しいよ?」

「.....そりゃお前を構成している85%位は女だろうからな、雪音」

 雪音。およそ男子には似つかわしくない名前(直樹談)だけど、それが僕に与えられた名前だった。どういう意図でつけられた名前なのかは忘れたけど、確かに名前に見合う様な男っぽさとは随分かけ離れた成長体系を進んできている自覚は自分自身でも少しはあった。

 だからといって別に気にしてる訳でもないけど、やはりこういう「本当にお前男なのか?」みたいな事言われてるとやはり困ってしまうもので。

「え、えっと.....残りの15%は.....?」

 おそるおそる聞いてみる僕。

「一応、生物学的には男って事になってる筈だからな」

 "一応"の部分を特に強調する直君。

「まぁこの学校は男子校だもんねぇ」

 そう言った後で、そう言えばうちの両親からは男子校に入るのをえらく反対されていたのを何となく思い出す。それなら女だと言い張って女子校にでも入った方がマシだとすら言い切って。

 .....最も、その理由は良く分からない。両親も余り詳しくは語ろうとしなかった。んで直君にその事を話した時も、「.....まぁ、そりゃあな、察してやれよ。」と彼は頭を抑えながらそう呟いていた。

 もしかしたら僕は知らず知らずのうちに人に心配をかけてるのかもしれない。.....最も、その理由がイマイチ掴めないんだけど。

「そもそも、何でお前はこの学校に入学したんだよ?」

 そこで今日初めて直君の方から話題を持ちかけてくる。

「いやそう言われても.....たまたまなんだけど.....」

 曖昧な様で、紛れもない本音だった。現に入学試験の面接の時の志望理由を聞かれたときも同じ様な事しか言っていない。一応あの時は「自宅と近いので」位は付け加えた様な気もするけど。元々進学に関して強い興味は無かったし、男子校だとか共学だとかいう希望も全く無かった僕としては、適当に進路指導の先生に勧められるままに受験して、そして何校か受験した中でたまたまこの学校と縁があって入学することになった.....それだけの話でしかない。

「そもそも、それを言うなら直君だって.....」

 ついでに言うとこの話題を持ちかけた彼も似たようなものではある。彼の場合、肝心の本命校の受験時にクラスメイトから移されたインフルエンザで寝込んでしまい、その中でスケジュール的にどうにか受験できたのがこの一校だけだったという、それだけの理由だった。

「まぁな.....」

 .....よく考えたら雲泥の差がある様な気もしないでも無いけど、受験に関して無頓着なのは確かにお互い同類ではあった。別に移された相手を怨んでる訳でもないし、その事の話題が出ても「ああ、そう言えばそういう事もあったな.....」と、どうでも良さそうな表情を見せるだけで特に関心を示そうとはしない。

「まぁ俺の場合は結果オーライなんだがな.....と、俺が言いたいのはそういう事じゃなくてだな.....」

「ん?」

「.....いや、いい」

 何か言おうとして口をもごもごさせて所で、突然会話を締めくくって再び向こう側を向く。

「あ、そ、そう言えば、元々は何か悩み事かなーと思って話しかけたんだったよ」

 そして不意に話題が止まってしまったので、慌てて本題に戻す僕。

「悩み?」

「そうそう。やっぱり生徒会長としての責務とか、そういう感じ?」

「いや、そっちの方は別に大した事じゃないんだが.....ふむ.....」

 そこで考え込む直君。

「僕で良かったら相談に乗ろうか?」

「お前に相談に乗って貰ってもなぁ.....いや、しかし.....」

 更に考え込む。.....どうやら思ったより深刻らしい。いつもなら「気にするな。」でさっさとうち切ってしまうというのに。

「まぁまぁ、ダメもとでさぁ」

 .....自分で言ってどうすると思いながらも、とりあえず親身になってあげたいという気持ちが勝っている

「.....そうだなぁ。ダメもとでも少しはマシかもしれないな。」

 .....思いっきり真に受けないで少しくらいはフォローしてくれい。

「そ、そうそう。人に話したら案外楽になるかもしんないしさ。.....あ、でも.....」

 そこで僕はある事に気が付いてちらりと時計を見る。

「.....ん?」

「.....5.....4.....3.....2.....1.....」

 とゼロを告げようとした瞬間にチャイムが鳴り始める。どうやらタイムアップの様だ。

「続きはお昼休みだねー」

「.....その様だな。」

 にこにことそう告げる僕に、短い溜息をついてそう答える直君だった。.

*********そして、その日のお昼休み。

「.....つまり、学祭でのクラブの出し物で困っている訳なんだね」

「まぁ、平たく言えばそういう事だな」

 教室で僕と向かい合わせで弁当をつつきながらそう呟く直君。ちなみに背丈は僕より20センチ以上も高いくせに、お弁当箱は僕のより小さい。

『.....食べれば伸びるってもんじゃないって事か』

 最も体重の方も同じ位の差はあるんだけど.....って、いやまぁそれは蛇足として、

「でも、今年も去年と同じでしょ?プラネタリウムでカフェ」

「.....ああ。毎年の伝統にする予定だからな」

 直君は一端そう答えた直後に、

「.....とゆーか、うちの部が出来そうな事と言ったらその位のものだからな」

 補足するように付け加えた。つまり、直君は天文部の部長さんだった。

「.....というか良くそんな無茶通ってるよねぇ(汗)」

 そもそもプラネタリウムで飲食させるという自体暴挙に近いんだけど.....それもまぁ直君の話術の一つというか。プラネタリウム自体が比較的年期が入ってきているのと、原則火を必要とするものは出さないとか、きちんとした使用後の清掃プランとか、常に見張りを立てて機材類の半径2メートル以内には食べ物は近づけさせないとか色々細かい条件を自らリストアップし、それを一気に捲し立てて強引に通してしまったという。

「気にするな。一見無理に見えても、やり方によったらなんとかなるもんだ。コンピューター部の連中だってネットカフェの企画を通してしまっただろう?」

 あれに比べれば可愛いもんだと事も無げに答える直君。

「.....まぁそれはそうだけど.....どっちも良く認可されるよねぇ」

 最も、あのネットカフェの企画にしても、裏では直君が暗躍したという噂もあるけど。.....去年散々降りかかってきた教職員の監視の目から逸らせる為に。

「まぁそれはともかくとしてだ。.....一応狙いとしては間違ってないはずなんだがなぁ」

「まぁ確かに綺麗だけど、この学校の学祭向けとしてはちょっと地味かもねぇ」

 僕も頷く。これが共学とかならまだ話も別だったんだろうけど。やはり男子校なだけあって、顧客のほとんどは男子が占めているのが現状な訳で。

「うむ。結局はそこだよな。他から来た女性には割合好評なんだが.....何せ絶対数が少ないんだよな」

 僕に同意する代わりに渋い表情で唸る直君。

「まぁ、確かに綺麗なんだけど何か地味だよねぇ。華が足りないっていうか」

 ここで直君がほしいのはフォローじゃない事は分かっているので、とりあえず僕も素直な感想を述べてみる。確かにプラネタリウムの天井で作られる星海は綺麗だけどやはり決め手には欠ける観はあるし、そこで出せる食べ物も普通の教室での出店と比べて相当制限されているしで。

「華.....か。まぁ、そうだよな.....ふむ.....」

 直君は箸を止めてそんな事を呟きながら天井を見上げていたが、不意に視線を僕の方に向けた。

「..........?」

 そしてそのまま約1分経過した辺りでぴんっと何かを閃いた仕草を見せる。

「.....雪音、お前確かまだ帰宅部だったよな?」

 その直君の語調にはいつもながらの静かさに加えて強い語気が込もっていた。

「え?う、うん.....」

 その威圧感に少したじろぎながら頷く僕。

「うちを手伝ってみる気はないか?何ならこっそり裏予算でバイト料を出してやってもいい。」

 う、裏予算.....???

「ま、まぁいいけど.....人手が足らないの?」

「人手というか.....「人材」が足りないというか」

 と、にやりと笑みを見せる直君。.........人材???

「う、うん.....まぁ良く分からないけど、直君が必要としてるんなら僕はいいよ」

「.....よし。手口としてはちょっと邪道だが、まぁこの際仕方がなかろう」

 そして彼は一人納得してほくそ笑み始める。

「..........???」

 一人納得して満足そうな表情を浮かべる彼とは逆にその表情に何やら嫌な予感がする僕だった。

********そして一週間後、

「.....雪音」

 放課後、帰宅しようと席を立った所で、珍しく直君から声をかけられた。

「ん?今日は一緒に帰るの?」

「ああ。ちょっと用がある。俺の家まで来てくれないか?」

「学際の準備はいいの?」

「だから、それ絡みだ」

「.....ああ、なるほど」

 そういえば先週手伝ってくれって言われてたのを思い出した。

「何か手伝うことがあるの?」

「そういう事だな」

 無愛想にそう答えると、僕の返事を聞く前に一人すたすたと教室の外へ歩き出した。

「あ、ちょっと待って.....!」

 .....うーん.....役に立てるのは嬉しいけど.....久々に一緒に遊びに行けると思っただけにちょっと残念なのもあったりして。

 そして、

「.....と、いう事で早速だがこれを着てみてくれ」

 直君の部屋に着くや否や、僕は衣類が入っていると思われる紙袋を突きつけられた。

「.....何がどういう訳だか分からないけど、とりあえず着てみればいいんだね?」

「うむ」

 僕は紙袋を受け取ったあとで、その中身をちらりと覗いてみる.....と、

「っ?!こ、これって.....」

 自分の目に飛び込んで来た意外な物を思わず袋からつまんで引っ張り出す。

「知らないのか?メイド服だ。これをお前に着てもらう」

「え?えええ.....?????」

 突然の事に一瞬思考が停止して頭が真っ白になる。な、何がどういう因果でこういったものがで出てくるんだろう.....???

「正確には、メイドスタイルのウェイトレス衣装なんだがな。まぁ実質的には区別は無いものと見ても支障は無かろう」

「う、ウェイトレス.....?」

 その一言で止まった思考が再び動き始める。

「つまり、"華"だ、華」

 そう言って、初めて思いついたときとまったく同じにやりとした笑いを浮かべる。

「.....華.....?もしかして、僕が華?」

「そういう事になるな。お前がこの格好で接客してくれれば華になるという訳だ」

 .....いや、別に接客を手伝うのはいいんだけど、華って言われても.....

「でも、どうして僕なの?」

 直君ならその気になれば接客してくれる女の子位何とか調達できるでしょうに。

「.....ルールだからな。各学級、クラブの出し物に学校外のスタッフを呼び込んではいけないという」

「あ.....そっか」

 一応生徒会主催でゲストを呼んでの特別公演という例外はあるものの、うちの学際は設備の設置、経営は原則的には学内の生徒だけでというルールがあった。ただし、その代わり運営に関して教職員は完全に生徒の自主性に任せるという約束も得ているけど。

 ちなみに直君達一部のクラブやクラスが無理を通してるのも、全てこの「自主性」というお題目を盾にしたものだったりする。

「うちは男子校だからな、どの道うちの生徒から賄わなきゃならん。.....そこでおそらくうちの学校で一番女顔をしてるのがお前という訳だ」

「.....でも、いくらなんでも突拍子も無さ過ぎない?(汗)」

 そもそも全然天文部と関係ないし。

「客を呼び込む為だ。このくらいはアリだろう」

 ここで彼の言う客というのは、男子生徒という事になるんだけど.....

「.....僕がメイドさんの格好したらお客さんが寄ってくるもんなの?」

「それをこれから見極める為に、今日お前に来てもらったんだ」

 いとも当たり前の様にそう答える。

「.....なんだかなぁ」

 何かが間違ってる気がするんだけど.....うーんー

「まぁ、とりあえず変り種って事で宣伝材料に出来ればしめたものだからな」

「うーん.....」

「ついでにこの件に関しての責任もちゃんと俺が取ってやるから、あまり深く考えなくていい」

「.....どういう責任?(汗)」

 とりあえず確認してみる。

「.....さぁな。とりあえず言ってみただけだ」

「..........」

 僕は、はぁーーーっとひとつ大きなため息を付くと、諦めて着替える為に「隣の部屋、借りるね」と告げてトボトボと隣の部屋に向かった。

「ここで着替えないのか?」

「やだよっ!」

 特に今回は直君の前で着替えるのが何か妙に嫌だった。 

*********

「ふぅ.....変なコトになっちゃったなぁ.....」

 隣の部屋のドアを後ろ手で閉めた後でもう一度深くため息を付く。

「..........」

 本音を言えば、こういうのにもちょっとだけ興味が無いことも無かった。だけど.....

『人前に晒されちゃうのは.....ねぇ』

 しかし、直君が困っているのを手助けしてあげたいという気持ちも確かにあるし、他に何か手助けしてあげられるアイデアがある訳でもないし.....

「.....まぁ、しょうがないよね.....」

 自分にそう言い聞かせる様にして、僕はさっき1度少し引っ張り出してまた乱雑に戻した紙袋の中に入っている衣装をゆっくりと引っ張り出す。

 エプロンドレス本体に、エプロン、カチューシャ、グローブ、ニーソックス、それにガーターに.....ってえええっ?!

「.....こ、これは.....っっ!(汗)」

 更に底の方には上下お揃いで白地のレースの下着が入っていた。しかもご丁寧にガーターベルト付き。

「え、えーっと.....こんなモノまで.....??」

 思わずショーツの方を両手で掴んでまじまじと見据えてしまう。

『.....直君、自分で全部買いに言ったんだろーか』

 何だかその光景を想像して、僕は一筋の汗が滴り落ちた。

「.....う〜む.....徹底してるねぇ」

 この袋の中にあるって事は、一緒に着ろって事なんだろうなぁ。まさか下着まで着けさせられる羽目になるなんて.....まぁ完璧主義の直君らしいといえばらしいんだろうけどね。

「.....仕方がないか」

 とりあえずやると言った以上は覚悟を決めるしかない。そう自分に言い聞かせて、今いる部屋に鍵がきちんとかかっているのを確認した後で僕はまずは着ているものを全て脱ぎ始めた。

「..........」

 一枚、一枚をゆっくりと脱いでいって、そして最後の下着を脱いだ瞬間、途端に僕の心臓がドキドキと高鳴りを始める。生まれて初めての行為への高揚だとか、他人の家で裸になってる事とか、あと直君がこっそり覗いていないだろうかだとか色んな要因が合わせあってなんだか落ち着かなくなってしまう。

「えっと.....まずはこれをつけるんだよね.....」

 先ほど両手で掴んでまじまじと見てしまった純白のレースのパンティを手に取り、それから少しだけ躊躇した後で意を決してそっと片足を通す。

「..........」

 ついでもう片足を通し、ゆっくりと腰まで引き上げる。大きさはまるで誂えた様にぴったりだった。

「う〜.....っ。なんか変な感覚.....」

 腰周り、とりわけ男の子の部分の辺りを包んでいる生地から伝わる感触に妙な違和感を覚える。それは中学に入る位まで穿いていたブリーフに近い様で全然異なる感覚で、何だか触れてるだけでくすぐったいような違和感。それが不快な様なそうでも無い様な曖昧な刺激となって微弱気味に僕の躰を巡ってきていた。

 .....ついでに心臓のドキドキは更に大きくなってくる。

 そして次に色々悪戦苦闘しながらもブラを着けてみた時、その違和感は何倍にも増幅されて僕の躰を駆けめぐってきた。ワイヤーやカップ付きではなかったので比較的僕の胸の部分に密着してきて、そこから伝わる刺激はショーツの部分とは比べものにならないくらい強かった。もしかしたらこの今感じてる不思議な緊張感と共に下着の生地が触れてる部分の感覚自体が敏感になってるのかもしれない。

 .....この着ているだけでどうにも落ち着かないような感触はやっぱり慣れてないから?女の子も初めて着けた時ってこんな感じなのだろうか?

「.....ううん。ちょっと違うか」

 やっぱりその理由を簡単にまとめれば僕がやっぱり男の子なんだって事なんだろう。こんな形で性別を感じさせられるとは思わなかったけど.....

「.....でもまぁ、どっち道慣れるしかないんだよねぇ.....」

 とりあえず着けてないとならない事は確かなので、次第に慣れていって違和感が無くなるのを待つしかなかった。.....いや、まぁもしかしたらそれはそれで困りものなのかもしれないけど。

「さて、と」

 ともあれ気を取り直し、次にその上にガーターを着けて、ベルトをニーソックスに繋げる。.....と結果だけ述べるのは簡単だけど、実際は後ろ側をくっつけるのにえらい苦労を強いられた。ここらは誰かが着付けを手伝ってくれれば楽だろうけど、でもまぁ、だからと言ってお母さんに頼む訳にもいかないだろうしなぁ。

 .....いや、うちのお母さんなら喜んで手伝ってくれそうな気もするかも(汗)。

 その後、下着類を一通りつけた後でふと部屋の隅に視線を向けると、そこには姿見があったのでこちらまで一端引っ張って持ってきた後で自分の姿を映し出してみる。

「むぅ.....」

 カーテンを閉めて薄暗くなった部屋に立つ姿見に映った自分の姿は.....女の子だった。自分の裸を鏡に映して見ることなんて今まで無かったけど、いざこうして、しかも女性用の下着を付けた自分の姿は思ったより女性らしい曲線を描いていた.....気がする。

 そして鏡に映してみた後で、そういえば自分の後ろ髪を縛っていたのを思い出し、髪を縛っていた紐を解いて解放してみた。

「..........」

 その瞬間、ふわりと解き放たれた後ろ髪が棚引いて僕の両肩にまばらに落ちていく。セミロングヘアーに変わった僕の姿は更に女性的になっていた。

『似合って、る.....?』

 自画自賛かもしれないけど、なんとなくそんな言葉さえ不自然に感じる。むしろ普段よりこっちの方が自然に見えなくもなかった。

「..........」

 何となく複雑な心境も覚えたものの、呆けてても仕方がない。今度は上下一体型になっているエプロンドレスの方を着ていく。さっきの下着ほどじゃないけど、やはり袖を通した時とか腕に微弱な刺激が伝わってきて、更にそれと同時に何だか不思議な新鮮味も感じていた。しかもそれが僕にとって決して不快なんかじゃなくて寧ろ心地よかったりもして.....これは下手すると.....

『.....癖になったらどうしよ?』

 .....それはちょっと困るかもね。

 心の中で苦笑しながらもドレスを着付けた後でエプロンの袖を通して後ろで紐を締め、更にカチューシャ、グローブといったアクセサリ類を身につけて、紙袋の中に入っていたすべての物を着け終えた後に再び姿見に自分の姿を映し出してみる。

「むぅ.....」

 再び先程の台詞を反芻する。ドレスアップして鏡に映った自分の姿は普段とは完全に別物.....な様で、そうとは決して言えないのが逆に戸惑いを覚えさせていた。自分自身でも目の前にいるのはどう見ても女の子にしか見えないのに、でもそれと同時に彼女は紛れも無い僕だという事を伝えていたのだから。

「男の子も化けるもんだね〜.....って化けきってないから複雑なのか」

 最も今回の場合は人前に出る訳だからその方がいいのかもしれない。出来るだけ不自然さは無いに越したコトないし。

「..........」

 完全に着替え終わった後で直君の部屋に戻るとき、直君の部屋のドアをノックしようとした手が止まる。心臓も再びドキドキし始めてきて、そして同時に復活した緊張感が僕の体を縛りつけて一瞬硬直してしまう。

『直君.....どう思うかな?』

 彼からの希望でこんな格好したというのに、僕は何故か後ろめたさを感じていた。

『やっぱり、イケナイことしてるって感じが.....^^;』

 ちょっとためらいをのこしたまま、閉ざされた直君の部屋のドアに手を伸ばそうとした瞬間、

「雪音?どうした?入ってこないのか?」

 実際に僕がノックするより先に直君の声がドア越しに僕の方へ飛んできた。

「え?わわっ!」

 直君に虚をつかれてどきんっというひときわ大きな心臓の鼓動音が鳴る。け、気配でも読んでるっ??

「あ、うん.....んじゃ入るね.....」

「おう。遠慮するな」

 .....いや、遠慮じゃないんだけどね。

 ともあれ、こうなってはもう躊躇も何もあったもんじゃないので、僕は思い切ってドアのノブに手を掛けて、ゆっくりと直君の室内に向けて開いていく。

「あ.....ども。着替え終わったよ.....」

 とりあえずおずおずとそう答える。

「..........」

 それに対して直君は一度頷いた後、それからしばらくベッドに腰掛けたままの姿勢で無表情に僕をじーーーーーーーーーっと見据えたかと思うと、徐に口を開き、

「.....雪音?」

「は、はい?」

 再びどきんっと心臓が鳴る。そして一瞬間をおいて、

「.....お前、そりゃ反則だ」

 そんなのありかよとでも言わんばかりの表情でそう宣った。

「い、いや、反則って言われても.....(汗)」

 僕はどう反応しろと???

「.....むう、これじゃ洒落ですまないかもしれないぞ.....」

 ドアの前で突っ立ったままでいきなり反則呼ばわりされて困惑している僕を放って置いたままで、直君はブツブツと呟きながら自分の思考に入り込んでいく。よく分からないが僕が直君の予想の範疇を越えてしまっているのは確からしい。

「あ、あの.....それで僕はどーすれば?」

 しかし、こんな格好をしてしかも直君の部屋に一人取り残されたままにされても困るので、僕は彼に困惑の感情を添えて次の指示を促す。

「..........」

 僕の呼びかけに直君は一瞬こちらの世界に帰ってくるものの、今度は無表情なまま更に無言で僕を下から上へ舐める様に見回し始めた。

「???」

 .....もしかして、直君壊れちゃった??と、心配し始めた所で不意に直君が口を開く。

「.....なかなか可愛いいぞ、雪音」

「えっと.....ありがと」

 直君に可愛いと言われて、一瞬顔がぽっと赤らむ。が、

「..........」

 再びだんまり。ま、間が持たない.....

「..........」

 もうしばらくだんまりでじっとこちらを見ていたと思うと、今度は指でちょいちょいと自分の元に来る様に促してきた。

「???」

 いまいち真意がわからなかったけど、とにもかくも現状の打開に繋がる希望が出てきたので僕は一も二も無くトコトコと彼の元に向かう。

「どうしたの?」

 彼のすぐ目の前に立ってベッドに座ってる直君を屈みこむ様にして彼の顔をのぞく。

 .....しかし、それは不用意だった。

「..........」

「あ、あの.....わわっ!!」

 次の瞬間、僕は直君に強引に引き寄せられ、そして、

「..........!」

 .....そのまま僕はどさっとベッドの上に押し倒されてしまった。

「え.....えっと.....」

 両手を押し付けられて無理やりベッドに仰向けにされた状態のまま、直君の顔が間近に迫る。直君の顔を間近で見ること事態は慣れっこなのに、こういう場面だとまったく別の話になっていた。

「雪音.....」

『というか直君目が据わってるしーっ(汗)』

 め、目付きがいつもと全然違う.....っ

「ち、ちょっと待って、待って!」

 理性の箍が取れかかってると思われる直君への恐怖感から出てくるのは拒絶の言葉だけだった。何かやっちゃいけない事をやってしまった、そんな感じで。

「それで、あの紙袋にあったものは全部着けたのか?」

 僕の台詞などまるで気にかけていない様子で問い掛けてくる。

「う、うん.....一応」

「そうか」

 そして、僕の返答とほぼ同時に、直君は僕のスカートを派手にめくった。

「わあっ!」

 当然慌ててめくられたスカートを戻そうと手で抑える僕。自分でもはっきり分かる位顔が高潮していた。

「よーし。ガーターも含めてちゃんと付けてるな」

 直君は満足気にそう呟いた後で、更に言葉を続けて、

「んで、上の方もちゃんと付けたのか?」

「う、うん.....一応」

「よし、見せてみろ」

 またも間髪入れずに今度はエプロンドレスのボタンを外して脱がしにかかってきた。

「ち、ちょっと待って!ダメだってちょっと.....!」

 僕の意思と同時に自然に体が直君の手を跳ね除けようとするが、それでもやっと直君の手を止められた時は既に半分くらいボタンを外され、はだけた部分から胸を包んでいる生地の一部分が直君の視線の先にちらちらと覗かせていた。

「なるほど、こっちも一応ちゃんと着けてるみたいだな」

 妙に冷静にそう宣う直君。直君らしいといえばらしいんだけど、やっぱりこの冷静さが逆に怖い。

「んじゃもういいでしょ?確認できたんだから.....っ」

 涼しい顔で台詞を吐く一方で、僕は何とか更に服を脱がそうとする直君の手を必死でどけようとするが、直君は決して力を緩める事無く抵抗する僕の腕を押さえつけようとしていた。

「ダメだ。着けてるのは確認できたが、それだけじゃまだ不充分だな」

「ふ、不十分って......?」

「ちゃんとお前の体にフィットしてるかどうか確認してやらないとな。でなければ意味が無いだろう?」

「確認.....?.....あっ?!」

 素早く直君の右手が僕のスカートの中に潜り込んでいく。ち、ちょっとちょっとちょっと!

「わー、だからダメだってっっっっ」

「確認だ確認。いいから黙って従え、話が進まないだろうが」

「はうっ.....」

 そう言う直君の鋭い眼力に当てられ、思わず黙り込んでしまう。

「ったく。別にお前をとって食おうと言う訳じゃない」

「.....ホントに?」

 ライオンに捕らわれたウサギの心境でじっと直君の目を見る。

「...............」

 頼むからそこで黙り込まないでっっっ

「.....ともかく、身体検査だ身体検査」

 .....しかも話をはぐらかされた。というか、身体検査って何???

「ちょっと、直く.....」

 納得できない僕は更に食い下がろうとしたが、

「とっとと終わらせないと、姉貴が帰って来るかもしれないぞ」

 う.....それを言われると.....

「何なら姉貴にも見定めてもらうか?」

 はぅっ.....そ、それは.....嫌。直君のお姉さんの聡美さんって、僕を玩具にして遊ぶのが趣味だと豪語してる様な人だし(汗).....いや、どっちみちこのままでも直君に何をされるか分からないんだけど.....

「ほら、分かったらとりあえず身を起こしてみろ」

「はぅぅ〜.....っ」

 ともかく直君に強引に押し切られる形で、直君に腕を引っ張られて上半身を起こす。そして、

「わ..........っ!」

 後から直君の手が伸びてきて、先ほど一つ二つ取れてしまったエプロンドレスの胸の部分に直君の手が滑り込み残りのボタンを滑らせる様な手つきで外していく。結構たくさんあって付けるのに苦労したボタンも、脱がせる時は一瞬だった。

「やっぱり.....恥ずかしいよ〜っっ」

 程なくして、エプロン部分は残してそのまま肩口まで裾をずらしてブラで覆われてる胸の部分だけを露わにされ、僕は無意識に胸を隠そうとするが、

「ほら、そこで隠すな」

 と直君に釘を刺されて、しぶしぶと手を下ろす。斜め後ろからの直君の視線に僕の体が火照ってくるのを感じていた。

「こっちは少し不安だったが、ちゃんとブラの方もフィットしてるな。良く似合ってるぞ」

「そ、それはどーも.....あんっ?!」

 そしてその台詞から間伐入れず、後ろから直君の手が胸に伸びきて、鷲づかみにブラの感触を楽しむ様に撫で回してくる。

「や.....直君.....ダメぇ.....っ」

 思わず身をよじるが、後ろからがっしりとつかまれている以上は逃れようも無く、直君も僕の抵抗には全く気に止める様子も見せずにその手を止めようとはしなかった。

「それで、どうだ?付け心地の方は?」

「ん.....なんだか.....くすぐったくて.....変な感じ」

 .....そしてそれは直君に揉まれていくうちに更に増幅していた。

「ほう?.....じゃあ、こういうのはどうだ?」

 僕の返答を受けてなのか、直君は一度揉んでいた手を止め、両方の人差し指で胸の先端の部分を擦りつけるようにして刺激していく。

「はぁ.....っ、そこ.....ぉ.....」

 薄い生地の上からゆっくりと動き回る直君の指の感触。そのくすぐったい様な強すぎない刺激が僕をどんどん変な気分にさせていく様で。

「.....直接触られるのと、どっちが感じる?」

「そんなの.....分からないよ」

「.....それもそうか」

 そう言うと、直君はぐいっとブラをせり上げて、

「んじゃ今度は直接してやろう」

 と、直接僕の胸の先を弄り始めた。

「ふふ、乳首とか弱そうだと思ってたが、ホントに弱いみたいだな」

 もう、そんなコト言わないで.....そんな台詞も沸き上がってくる様な快感にかき消されて喘ぎの中で消えていく。こんなに胸が気持ちいいなんて.....自分が男の子なのを思わず忘れてしまいそうな程敏感になっていてた。

「それに小さくて綺麗な色で.....つい食べたくなる」

「.....え?ふぁっ.....!」

 そして直君の唇が右の胸に吸い付き、柔らかい舌の感触が僕の乳首を生き物の様に這いまわる。

「はぁ.....はぁ.....ぁぁ.....っ」

 体の奥からゾクゾクと感じるこの感覚。とっても恥ずかしいのに.....もっとされていたい。

 .....そして、もっと過激な事されたら.....どうなるんだろう?

「直.....君..........っ」

 体に沸き上がる様な刺激が理性を駆逐して、目がとろんと恍惚のものに変わっていく。.....それは直君に自分が弄られて感じてるという肯定。直君はどう受け止めるだろう.....?

「.....どうした?もう嫌がらないのか?」

 段々と素直に直君を受け入れていく僕に、にやりとした表情を浮かべて見据える。

「..........」

 .....意地悪。否定出来ないのを分かってて言ってるくせに。

「.....さて、それじゃ今度は下半身の方の検査だ。雪音、スカート自分で捲り上げてみろ」

「う、うん.....」

 さっきはあんなに恥ずかしくて嫌だったのに.....今はこれからどんなコトされるのか、期待してドキドキしてる。まるで羞恥心がそのまま扇情に変わって体中が敏感になっていく、そんな心地だった。

 そしてそんな地に足が付かない心地で膝立ちになって、直君の突き刺さるような視線を身に受けながら、僕は言われるままにスカートの裾を両手でゆっくりと上げて直君の目の前に晒け出していく。

「ど、どう.....?」

「ふ、なかなかいい眺めだぞ。.....それと」

「..........?」

「.....お前ってホントに女装向けな体格みたいだな」

 じっと股間の方を見てそう言う直君。

「.....っ?!わ、悪かったね.....!」

 直君の言っている真意を理解した僕は、恥ずかしさでゆでダコみたいに顔を真っ赤に染めて思わず大きな声を出してしまう。しかもこれは恥ずかしさと一言で言っても、今までのちとちょっとばかり違う恥ずかしさだった。

「いいや、悪いどころか大いに結構だ。勃起してても思ったより目立たないしな」

「..........っ!」

 そして直君はショーツ越しに僕のモノに触れる。

「や.....は.....っ」

 手の甲に触れるか触れないか位で全体を包み込むようにして、その上で指で軽く生地からなぞる様に下着の上から刺激を与える直君の繊細な手つきに、ショーツに包まれた僕のモノがぴくぴくと痙攣させられる。直接弄られてない分それだけでイかされてしまうという事は無いけど、いつしかショーツの先端が当たっている部分には丸い染みを作っていた。

「やれやれ。さっそく汚しちまったな。.....悪い子だ」

 それを見て直君はそんな意地悪な台詞を囁きながら、湿りが付いた辺りを指でなぞられると、背筋に抑えがたい様な感覚が突き抜けていく。

「それは.....直君が弄り回すから.....っ」

 そのまま力が抜けてしまい、僕は直君に倒れ込むような体勢でシャツをぎゅっと握って何とか体勢を保ちながら弱々しく答える。.....どうしてこんなに感じちゃうんだろう?

「俺が弄り回したから.....どうなったんだ?」

「うぅ.....意地悪だよぉ.....んぁっ.....はぁ.....はぁ.....」

 直君の胸元で荒い息をしながら直君を非難するが、直君の弄る手が止まらないのでうまく声に出ない。

「.....んじゃ止めてやろうか?」

「..........っ」

 そして追い討ちをかける様に続く直君の問いかけ。直君自身ここでやめる気なんて無いのは分かっているのに、それでも僕の方が圧倒的に立場が弱かった。

「..........」

 直君が何を言わせたがってるのかは分かってる。でも、それが直ぐに口に出てくるには僕の心にほんのわずかに残ってる一抹の理性が阻んでいた。

 .....そして、直君はそれを壊してしまおうとしてる。

「.....雪音、続けて欲しかったら四つん這いになってどうして欲しいか言ってみろ」

「..........」

 もうそれは問いかけじゃなくて命令だった。

「..........っ」

 まるで催眠術でもかかったみたいに、僕は直君の視線に促されるまま彼の前にお尻を突き出す様な形で四つん這いになり、

「.....あの.....もっと.....して.....欲しいです.....」

 その直後に体中の血液が顔に集まり、そのままオーバーヒートしそうな程熱を帯びる。

「それで、どうして欲しいんだ?」

 それに対してワザと冷たい口調で言い放つ直君。

「.....今度はお尻.....弄って.....欲しい.....あんっ!」

「.....綺麗なものだな。それに、手触りも申し分ない」

 僕の返事が終わる前に直君の手が伸びる。まるで品定めでもする様に下着の上から全体を撫でるように直君の指が泳いでいく。

「まぁ、それでこそわざわざここまで完璧に衣装を用意した甲斐があったというものだがな」

 直君、まさかこれって個人の趣味.....?と一瞬疑問が浮かぶけど、『だったらどうした?』と居直られても困るので聞かないでおこう。

「はぁ.....ん.....っ」

 そんな事を考えている一方で、直君の手は段々と表面から割れ目の辺りに伸びていき、指を軽く押し込みながら輪郭を浮かび上がらせていっていく。

 .....なんか、こういうのって変態チックなんだけど.....でも.....

『もしかしたら嫌じゃないかも.....』

 勿論、誰にでもって訳じゃないと思うけど。

「..........っ!」

 そして、直君の指は奥にあるお尻の一番敏感な部分に到達した時、一瞬電気が走ったような感覚が体を走った。

「直.....君.....そこ..........っ!」

「.....そこ、なんだ?」

 直君の目指していた所がここだったのか、今度はその部分を重点的にグルグルと円を描くように指を動かしたり、軽く押したりして刺激していく。

「.....恥ずかしいよ.....」

 こんなトコロを弄られて感じてる.....そんな後ろめたさも感じながら、下着越しに胸を触られた時と似たような、それより強い刺激に快楽を覚えてしまう。

『お尻ってこんなに感じるんだ.....』

 .....だったら、こっちも直君の指や舌で直接されたら.....一体どうなっちゃうんだろう.....?

「なぁ、雪音」

「え.....?」

 そんな願望が芽生え始めた頃、直君が不意に手を止め、後から覆うようにして僕の耳元に顔を近づけてきた。そして、

「下着、脱がせていいか?」

 .....トクン。心臓が一瞬一際大きく高鳴る。それは、直君からの次のステップへ進もうと言う誘い。

「それも.....検査の内なの?」

「.....ああ、そういう事にしておく」

 最早僕の質問には対して大きな意味合いは無く、体裁だけのものでしかない。直君もそれを分かってて受け答えてくれた。

「.....うん。いいよ」

 僕の返事と共に、視線と共に直君の手が僕の腰の辺り、お尻を包んだショーツの端へ伸びていく。そして、

「ちょっと脱がすのが勿体ないけどな」

 名残惜しそうに一度、二度と撫で回した後で改めてゆっくりと引き下ろしていった。

「..........」

 しかし、少しずらせた所でぴたりと直君の手が止まる。いや、止まると言うよりこれ以上は何かが引っかかって脱がせられないというのが正しいんだろうけど.....

「直君.....?」

「..........」

 首だけ後に捻ってみて直君の表情を伺うと、難しい顔を見せていた。そして唸るようにして、

「.....ガーターベルトに引っかかって脱がせられん」

「あのね.....(汗)」

 思わず転けそうになる僕。こんな所でボケないでよ、直君..........

「.....んじゃ今度はベルトの上からショーツを穿くよ.....」

 溜息混じりにもうどうにでもしてって感じの僕だけど、

「それも気に入らないな。横から外せるタイプのものも確かあった筈だろう.....」

 どうやら直君の方はマジだったみたいで、ぶつぶつと呟きながら考え込む。.....それも直君のこだわり.....なんだろうか?

『う〜〜っ.....』

 仕方なく、固まってしまった直君に代わって自分で手早くガーターベルトを一つ一つ外す。

「はい、どうぞ.....」

 そしてその後で再び直君に自らお尻を向けて促した。.....もう、こういう事させないでよね。直君になら見せてもいいけど、それでも死ぬほど恥ずかしいんだから。

「うむ」

 直君も気を取り直し、脱がしかけていたショーツをまたゆっくりと引き下ろし始め、脱がせる直君の指が僕のお尻の表面に直接触れて滑っていき、それに沿ってじわじわと直君の前に晒されていく。

『.....ああ.....っ』

 下着を目の前で脱がされていく感覚。これも女性用のショーツだからこんな気分になるのだろうか?

 一方、片足だけを完全に脱がせもう片足に掛かった分は膝下で残したまま、再びガーターベルトを繋いでいく直君に、

『直君.....もしかして、フェチ??』

 と勘ぐってしまうも.....まぁ深くは突っ込まないでおこう。

「ほら雪音、広げて見せてみろ」

 その後で、更に直君が命じ、

「こ.....こう?」

 そして言われるがままに、僕は自分でお尻の谷間を広げて直君が見たい部分を晒け出す。

『見られてる.....直君にこれで僕の恥ずかしいところ全部.....』

 そんな思考が頭を巡っている僕はもう既に、空気に触れるだけで刺激を感じてしまう程敏感になっていた。

「ね、見えてる.....?」

「ああ。なかなかイヤらしくていい眺めだぞ、雪音」

 そして僕自分で広げていたお尻の谷間に当てていた手を直君は自分の手と置き換えて、更に僕が広げていたよりも広く広げて、

「.....色も綺麗なサーモンピンクだしな」

 そう呟いて直君の舌がお尻の割れ目から入り込んでいった。

「ぁ.....ふぁっ.....!」

 今度は下着からでなくて直接に、しかも直君の軟らかくてぬるぬるした舌が僕の敏感な場所に触れる。

「やぁ.....そこぉ.....気持ちいい.....っ」

 しわをなぞるようにして蠢く直君の舌遣いに抑え切れない快感が喘ぎになって部屋に響く。もうとても声を抑ようとする余裕も無くて、体が痙攣するように小刻みに震えながらお尻から感じる刺激を受け止めていた。これまで色々敏感なトコロを弄られたりしたけど、お尻が一番感じるなんて.....

「はぁ.....はぁ.....もっとぉ.....」

 その刺激のフィードバックは、僕の前の方の性器にも確かに伝わってきて自分なりの限界まで痛い位にそそり立ってるのが分かる。.....このままじゃお尻だけで暴発してしまいそうな程に。

「.....わかった」

 そして、やがて始めは入り口周辺が中心だった今度は直君の舌が、入り口からゆっくりと中に進入してきた。

「.....っ!あ.....いい.....そこ.....」

 入り口から直君の尖らせた舌先が出たり入ったりを繰り返す。そして時折入ったままでぐるりと回転するような動きもみせたりして.....直君、上手すぎ.....っ

「はぁ.....はぁ.....はぁ.....とろけちゃいそう.....」

 直君の執拗なまでの愛撫に段々頭の中がぼんやりしてきて.....そして指が自分の胸に延びていく。 なんかこういうのって女の子みたいだけど.....心の中も染まっていくのかな?

「あ.....はぁぁ.....気持ちいい.....よぉっ」

 ダメ.....このままじゃ.....なんか.....戻れなくなりそう.....っ!

「.....なぁ雪音、今度は俺のもしてくれ」

「え?う、うん.....」

 そこで意識が何かに飲み込まれそうだった僕は不意に直君に促されて一度我に帰る。

『..........、ま、いっか』

 とりあえず僕は一度直君から離れて、そして膝立ちになった直君の股間の辺りに跪く様にして顔を向けると、そこで見た直君の股間の部分はズボンの上からでもはっきり分かる程膨らんでた。

『.....直君、もうこんなに.....』

 ともかく、ズボンのベルトを外し留め金を外して下着と一緒にズボンを下ろし、酸欠になるんじゃなないかと思わせるほどぎゅうぎゅう詰めになっている直君の分身を解放してあげると、僕の目の前に勢い良く飛び出してきた。

「わっ.....!」

『大きい.....』

 そして、すぐ目の前にある直君のそそり立ったモノを驚きと好奇心を交えてじっと見つめる。それは、今にも張り裂けんばかりに膨張していて、

『それに.....熱い.....』

 そっと手に触れたとき、まるで火傷しそうな程に熱を帯びていた。

『.....僕のと、ちょっと形が違う.....』

 特に大きさが違う為か、僕と直君は同い年なのに直君のモノの方が随分大人びて見えた。

 そそり立った直君の分身に目が釘付けになりながら、僕はそれを右手で軽く握ってみる。すっかり固くなった肉の感触。これが直君の..........

「えっと、こうすれば気持ちいいんだよね?」

 .....どうしてだろう?ドキドキが止まらない。そして、直君の分身からも生き物の様な鼓動を感じる。

『直君も、ドキドキが止まらないのかな?』

 そんな事を考えながら、僕は握る手を上下させ始めた。自分でこういうコトする事は僕にも.....そして直君にもあるだけろうけど、人にされるのってどういう感じなんだろう。

「..........」

 直君からの反応は無い。こういう体勢だと表情も見えないから、直接的に直君がどう受け止めてるかは分からないけど.....

『.....くす。びくびくしてる.....』

 直君の亀頭部分がぷるぷると震えてるし、そして更に良く見ると、亀頭の部分の先からぬるぬるしたものが付着しているのに気付く。ほうほう、結構やせ我慢してるのかな?

「ね、直君.....」

 今度はこっちが少し意地悪な台詞を言ってやろうとした所で、

「雪音.....お前の口でしてくれないか?」

 次なる要求が届く。

「え.....う、うん.....」

 口.....かぁ。流石にこれはしたこともされた事もなかったけど.....

 それでも僕は特に拒絶を感じるコトも無く、まず舌先でちろりと先端部分に触れてみた。

「お..........っ」

 .....変な味。でもまぁあまり気にはしない。それより、口でするって言っても、これからどうしたらいいのかイマイチ分かんない方が問題だった。

『むう..........』

 とりあえずアイスキャンディーでも舐める様にぺろぺろと舐めてみる。全体を自分の舌で拭き取る様にしてまんべんなく。

 .....これでいいのかな?直君、気持ち良くなってる?

「.....ね、直君、どう.....?」

「ああ.....いいぞ。今度は、口に咥えて中で転がしてくれ」

「う、うん.....」

 僕の口の中に入るかな.....?そんな疑問も浮かぶけど、とりあえず直君の望むままに口の中に含んでいく。

『歯が立ったらダメなんだよね.....?』

「ん..........」

 僕の口の容量的には殆どギリギリだった。.....と言っても先端部分を咥えるのがの話だけど。実際には全体の半分も入っていない。それでも口の中で残った隙間を使って一生懸命自分の舌で直君のモノを転がす。

「お.....いいぞ.....」

 直君に撫でるように頭を押さえられながら続ける僕。

「ん.....んん.....っ」

 そして、そうやって直君のモノを舌でしているうちに不思議なくらい僕自身も興奮していた。別に直君にしながら自分のがされてる事を想像してる.....とかじゃなくて、直君にご奉仕してるっていう気分が不思議と僕自身を更にHな気分にさせていた。何だか本当に直君のメイドさんになった気分で。

『.....御主人様〜とか言ってみたら、驚くかな?』

 ついそんな悪戯まで思いついてしまう。

「.....っ、雪音.....」

 続けているうちにいつの間にか要領も覚えていっているのか、直君の声も変わっていく。自分がこうされたら気持ちいいだろうなーって事を試してみたりすると結構ツボをついてるみたいで。悟ってみると案外やりやすいのに何となく心の中で苦笑してしまう僕だった。

『女の人同士も同じなのかな.....?』

 今度は奥まで咥えたモノを少し引き出して、口の中に隙間が出来たところで尿道口の辺りに舌をもぞもぞと這わせてみる。僕だとちょっと痛いけど、直君なら.....

「う.....っ、ゆき.....ね、お前.....」

 堪らないといった感じの呻きを挙げる直君。.....どうやら効果はてきめんみたい。今度は一緒に口の外にある竿の部分を手でしごいてみたりしちゃったりして。

「こ、こら.....お前.....」

『ぬっふっふ.....どーだ?』

 段々余裕が無くなってくる直君に対して、僕の方は口にモノを咥えている分声には出せないけど心境的には正にそんな感じだった。さっき色々意地悪された分の仕返しをしてるみたいでちょっと気分がいい。

 .....しかし、一方でこの時はあまりやりすぎるとどうなるかまでは全然考えて無かったりしていたのも事実で、

「く.........っ!ダメだ、出る.....っ!」

「.....えっ?」

 程なくして、直君が一瞬唸った後で僕の口から自分のモノを抜き取った瞬間、

「ふぁぁっ?!」

 直君の分身の先から熱くて粘着質の濃い液体が僕の顔に一斉に降りかかった。

「ふぇぇ.....っ」

 僕はそれを避ける間もなく全てを顔面に受けると、鼻先や頬等に大量に降りかかったモノが伝わり下りてぽたり、ぽたりと零れていく。

「これ.....直君の.....」

 呆然とした心地の中で頬についた固まりをひと掬いして目の前で広げると、琥珀色の弾力のない液体がねばねばと伸びたのを見て、

「...............」

 ぺろり

「.....うぇ〜っ、まず〜っ(汗)」

 思わずえぐえぐと涙が溢れる。もしかしたら甘いかな〜?とか思ったのに。

「.....何をやってるんだ?お前は」

「だって.....」

 上から呆れた声でそう言う直君に何か返そうと思って見上げると、

「...............」

 直君は僕の顔を見て何も言わず、硬直したかの様にしてじっと直君の精液で汚された僕の顔を見つめ始め、そして.....

「.....わわっ!」

 再び直君の股間に目を戻すと、またさっきの様にカチカチにそそり返っていた。

『直君のえっち.....』

 あんなに沢山出たのがウソの様にすっかり復活してしまってる直君の分身。.....つまりこーゆうノリが好きなのか、君は。

「.....雪音」

「え?」

 その後、ベッドの端にあったティッシュの箱から2,3枚取りだして顔を拭いていた所で直君に呼び止められる。

「.....ん?.....わっっ」

 一通り拭き終わったところで振り向いてみると直君の大きなモノが僕の目の前に突き出されていた。.....というか直君の元気すぎ(汗)。

「一回出したら落ち着くと思ってたのに、全然みたいなんだ」

「そ、そーみたいだねぇ」

 直君にしては珍しく演技がかった台詞に、僕は苦笑混じりに答える。.....とゆーかナニをどーして欲しいのか、僕でも直ぐに分かる台詞だった。

「.....また口でするの?」

「いいや。今度は.....別のトコロで」

「別の.....所?」

 そして直君はじっと僕を見据えて、こう告げる。

「なぁ、雪音..........入れてもいいか?」

「...............」

 男の子の僕にとって、お口以外の別の所といえば一つしかなかった。

「.....う、うん.....」

 ほんの少しだけ間を開けて、そして躊躇いがちに頷く。やっぱり、しちゃうんだ.....

 さっきで一区切りが付いて冷めかけていたテンションが再び頂点近くまで上がり、再びドキドキと心臓を強い鼓動が脈打ち始める。

「それじゃ、入れやすい様な体勢になってくれ」

「あ、うん.....」

 僕は再び直君に向けて四つん這いになり、そして、

「.....いいよ直君.....来て.....」

 自ら左の指でお尻の穴を少し広げた格好で首を直君の方に向け、誘うようにして頷いた。

 .....どうしてだろう?さっきまでの.....この部屋に入る直後の僕だったら絶対に嫌って言ってたのに。今の僕はまるで媚薬に侵された様に淫らになっていた。これも.....この衣装の魔力なんだろうか?

「.....力を抜いてろよ。はじめはゆっくりと.....な」

 程なく、僕のお尻の穴の入り口にぴたりと直君のモノが触れる。.....入れられるってどんな感じなんだろう?やっぱり痛いのかな?それとも.....

「くぁ..........っ?!」

 挿入と同時に最初に襲いかかってきたのは異物感と鋭い痛み。

「ち、ちょっと待って.....っ!」

 先っぽが半分くらい入ったかなって辺りで更に痛みが走り、直君を慌てて制止する。

「やっぱり.....痛いか?」

「う.....ん.....でも.....ゆっくり入れたら多分大丈夫だから.....」

 何となく.....だけど絶対入らない事も無いかな。もうちょっとなら我慢できそうだし。

「.....そうか。んじゃゆっくりと.....な」

 もうしばらくこのままで待っててくれるかな、と思っていたのに、僕の台詞を受けて直ぐに再開する直君。相変わらずのせっかちさんなのか、それとも.....早く入れたくてしょうがないのかな?

「ん..........っ!」

 もう先っぽの一番太い部分はさっきまてで入ってしまっていたのか、今度はそれほど強い痛みはなかった。.....今度は、ゴリゴリと擦られる感じでちょっと苦しいけど。

「お.....っ、入った.....大丈夫か雪音?」

「うん.....大丈夫だけど.....でも激しくされたら苦しいから.....」

 ここは無理をしないで正直に告げる。すると直君は初めは穏やかに、

「ふっ.....安心しろ。慣れるまでは優しくしてやる」

「うん.....ありがと..........って、慣れてきたらもう優しくしてくれないのっ?」

「.....さぁてな」

 そして後から底意地の悪さをたっぷり含めた返答が帰る。

「ふぁぁあ..........っ!」

 その直君の返答の直後、直君のモノが僕のお尻の中で動き始める。一応約束通りゆっくりとしたペースだけど、やっぱり慣れるまで待ってくれる事もなくてグリグリと擦られていく。

「直君やっぱりちょっと待って、たんまっっ」

「.....ダメだ。もうちょっと我慢しろ」

 しかし、2度目の中止要求はあっさり却下され、直君の腰は規則正しいペースで僕を容赦なく突いた。

「あふぁっ!はぁ.....はぁ.....ちょっと.....激しいってば.....っ」

 そして次第にペースアップする直君の腰の動き。もう、慣れるまで優しくしてくれるって言ったのに.....っ!

「雪音.....なかなかいいぞ。締め付けも.....中の感触もだ」

 直君ももう自分の世界に入っちゃってるのか、独り言の様にそんな事を呟くとお尻を掴んでいた手を僕の胸に持ってきて両手で揉み始めた。

「ぁ.....胸.....んぁっ」

 ちょっとだけ乱暴気味だったけど、それでもきゅっと乳首を摘まれたりすると快感の方が先立っていき、更にお尻の方も次第に痛みの代わりに何か別の感覚が僕を支配していく様になる。だんだん痛いんじゃなくて.....

「.....お尻が.....んっ.....熱いよ.....」

「ん.....?」

『.....熱くて.....気持ちいい.....!』

 自分のお尻の中の粘膜が熱を帯びて熱くなっているのを自分でもひしひしと感じる。直君のが出入りしてる分の摩擦熱?ううん。きっとそれだけじゃなくて.....

「なんだ.....もう感じてきたのか?」

「うん.....なんか.....変な感じ。お尻だけじゃなくて体が熱くなってく感じで.....」

 そして気付けば、僕自身も無意識に腰を動かし始めていた。.....まるで痛みから快感に変化してきているこの感覚を貪る様にして。

「そうか、なら俺も遠慮はいらないな」

「え?ちょっとまって.....それは.....くぁ..........ぅっ!」

 それを見て更にペースを上げる直君。お尻の中の熱も上がって体全体に伝わっていく。

「やは.....っ、激しいよ.....ああぁぁぁぁぁっ」

 そうしているうちにだんだん意識が何処かへ飛びそうになって、頭の中が真っ白になっていく心地がして.....そして、

「はぁ.....っ?!出る.....出ちゃう..........っ?!ふぁ...............っっっ」

 次の瞬間、不意に自分のモノが熱くなったと思うと、その先から自分の白濁液が大量にスカートの部分に迸った。

『うそ.....一度も触ってないのに.....出ちゃった?』

 こんなの.....初めてだよ.....胸弄られて.....お尻に入れられて出しちゃうなんて.....!

 戸惑いと驚きとで一瞬混乱してしまう。やっぱり、どうかなっちゃったのかな.....??

「やれやれ。結局服まで汚ししまったな」

「ご.....ゴメン.....」

 しまった、全部脱いで無かったからスカート汚しちゃった.....

「まぁいいさ。.....だったら俺も.....っ」

「え.....?どういう.....?んん..........っ?!」

 一度僕が出しちゃった後でペースが緩くなっていた直君の腰使いが再びヒートアップする。

「ちょっ、ダメ.....僕出したばかりだから.....あうっ!」

 そして突かれているうちに強制的に再び自分の分身が大きくなっていく。しかし先ほど大量に出したばかりなのでちょっと痛かった。

「今度は俺が出す番だから.....な。.....お前に」

「はぁ.....はぁ.....直.....君?んぁっ」

 呟くようにそう告げると、ぐいっと僕の腕を後から引っ張りながら一気にスパートをかけていき、

「直君.....あぁっ、激しすぎ.....壊れちゃうよぉ..........っっ!」

「う.....っ!」

 .....そしてそれ程時を置かずして、直君の分身からの熱い迸りが今度はお尻やスカート、ガーター等の辺りに大量に降りかかってきた。

『わ.....また直君のがいっぱい.....』

 とても2回目とは思えない程の量が勢いよく放出され、それはお尻から太股にかけてどろりと伝わってくる。

「ふぅ.....せっかくだからこっちも汚してみたくなってな、雪音」

 その後、そう言って満足した表情を見せる直君。

「もう.....変態」

 これで直君に上も下もすっかり汚されてしまった事になるけど.....まぁいいか。直君なら.....ね。

「.....どーでもいいけど、お姉さん帰ってくるんじゃなかったの?」

 その後シャワーを借りた後、直君の部屋でドライヤーをかけながら、ふと思い出した事を尋ねてみる。僕の視線の先にある時計の針は、あれからかなりの時間が経過している事を示していた。

「ん?今日は帰ってこないぞ。友達の家に泊まりって言ってた」

 あっさりと答える直君。

「はぅっ!.....騙された〜?」

「そうでも言わないといつまでも話が進まなかっただろうが?」

「いや、というかさ.....」

 .....適当に理由付けてHなコトしようとした直君の方が悪いと思う。

 しかし、とりあえずそれは口にしないでおくことにして。

「ね、直君?」

 ドライヤーをかける手を止める。それより、今突然浮かんだ疑問の方に答えてもらおう。

「..........ん?」

「結局.....直君は最初から今日こういうコトをするつもりだったの?」

 その問いに、直君は腕組みをして暫く考える仕草を見せ、

「.....ふむ。ホントはまだ手は付けないでおこうと思ってたんだがな。お前の格好が予想外に似合ってたから理性の箍(たが)が外れてしまった.....って所か」

「まだ、って.....?」

「.....いや。こっちの話だ。それより、試着の方は申し分無しだな。『華』の方はこれで心配なくなった訳だ」

 にやりとした後で満足気に頷く直君。

「.....そう?」

「ああ。例えば、これなら少々スカート捲りされても大丈夫だな、うむ」

「.....ええっ、僕はそういうコトされるのっっ?」

 いきなり突拍子も無いことを言われて反射的に突っ込む。

「.....冗談だ。多分な。」

 その多分ってのがかなり心配なんですけど(汗)。いや、確かに直君の多分は今までの実績で言えば殆ど外れたことは無いんだけど.....

「ホントにこんなので上手くいくのかなぁ.....?」

 しかし、やっぱり僕の方は不安感が消えなかったりして。

「上手くはいくさ。.....ただ、別の心配事を抱えることになりそうだがな」

「.....別の心配事?」

「ああ.....俺の杞憂で済めばいいが」

 その時、ほんの一瞬だけ複雑な表情を見せた直君の顔が不思議と僕の脳裏に焼き付く。.....一体直君は何を心配してるんだろう.....?

 

********そして学園祭当日、

「.....今更かもしれないけど、プラネタリウムにメイドさんってのも考えてみたら何だかシュールだよねぇ(汗)」

 とりあえず先に着替えを終え、会場のプラネタリウムの中心部であれこれと指示をしている直君の隣に立って、僕はまず第一印象を述べた。.....何やらものすごく場違い感を感じるんですケド。

「いやいや、そのミスマッチ感がまたなんとも面白い」

 それに対して満足そうに頷く直君。まさにしてやったりといった表情をしている。

「現に前評判は上々だ。お前目当てに来る客だけで前年の3倍位は見込めるぞ」

「.....このチラシは絶対何かが違うと思うんだけど(汗)」

 その直君に僕は呆れた感情を込めて学際ガイドブックの小冊子を見る。その中の天文部ブースの紹介ページには僕をモデルにしたメイドさんのイラストが全体の半分近くを占めていて、更に残りの3割分くらいは全く天文に関係があるとは思えない売り文句で埋められていた。

「直君、何部の部長さんだったっけ?」

 皮肉を込めて"何部"の辺りに強いアクセントを込めてそう尋ねる僕。

「ふっ、勝てば官軍。詭弁なんぞ後で好きな様に言えるもんだ」

 それに対して事も無げにあっさりと返す直君。

「そもそもなんでそんなに業績にこだわるのさ?先生の言葉じゃないけど、別に無理して呼び込まなくても、参加すること自体に意義があると思うけどなあ」

 運動部と比べて、そんなに競争意識をもつ必要は無いと思うんだけど.....

「うちみたいなクラブはこういう時しか目立つ機会はないからな。俺達文化部系ってのは唯でさえ日陰で存在すら知られていない様な部活が多いんだ」

 その、一見何処まで本気か分からない様な直君の台詞には不思議なくらいの真剣な意思が含まれて僕に伝わってきた。彼の視線の先にあるものを、使命感を持った確かな視線で見据えていた。

「.....それが、天文部の部長さんになって、生徒会長としての仕事よりも優先させてる理由?」

「ん?」

 そこでお店の準備状況を監督していた目線がちらと僕の方を向く。

「だってさ、直君って実際天体観測の趣味なんてないでしょ?」

「いや、そうでもないぞ。.....最近はな」

 少し口ごもるようにそう答える直君。

「何か特別な理由でもあるの?」

「.....別に。ただの気まぐれだ」

「面倒ごとを嫌う性格なのに?」

 人付き合いが決していいとはいえない直君だが、彼はそういった人達にありがちな面倒事を嫌う性格を持ち合わせいていた。一応現在生徒会長という事になってはいるが、これも決して彼自身が立候補したわけでもなく、誰かが推薦したら他の候補者が出てこずにそのまま信任投票でなし崩し的に決まってしまったというのが実情であったりしていた。.....最もそうなったのは、他の立候補者がどういう経緯であれ彼が候補に上がってしまった以上は勝ち目が薄いと判断して、途中で会長の立候補を取り下げて副会長や他の役員の方に目を向けてしまったからという事らしいけど。現に他の役員選挙の方はえらく激戦だった覚えがある。

「ん.....約束したからな。部を存続させるって」

「誰と?」

 そこで直君は答えるべきかどうか一瞬悩んだような仕草を見せて、

「.....お前の母親だよ」

 僕から目を逸らせたままそう答えた。

「はい?」

 そこで突然意外な名前が出てきて目を見開いてしまう僕。

「なんで?」

 そして、それは当然の質問だった。

「お前の母親は昔この学校の教師だったろ」

「あ、そういえばそうだった気も」

 言われて思い出した。そういえば僕の母親は元教師で、数年前に退職するまで勤務していた学校が確かうちの学校だった。ちなみに退職したきっかけが父親が単身赴任する事が決まった事らしいんだけど、その理由が僕を気遣ってという事だから自分でいうのもなんだけど過保護だなぁと思ってたりもして。

「あの人がいまのうちのクラブを作った発足人でな。退職まで顧問も勤めていたそうだ」

 そして直君は相変わらず視線を店内に向けたままで、

「当時の思い出話を捲くし立てられた時の内容は全部覚えてはいないが、お前の母親.....由紀子さんにとってよっぽど思い入れが強いのは確かみたいだったからな」

「他にいなかったとは言え、生徒会長を引き受けたのも少しでも立場を有利にする為?」

 現に彼が生徒会長になってから、少なくともやる気のある文化系クラブの立場は飛躍的に上がっていた。

「まぁあれは不可抗力もあるが、確かにそれもあるな」

 一応、といった感じで認める。

「でもさ、そうとしても直君はどうしてそうまでして引き受けたの?直君の方の理由は?」

「む.....まぁ、ちょっとな」

 そこで再び口ごもる直君。

「??」

「.....極めて個人的な理由だ」

 そしてぼそっとそう呟く。

「んで、その個人的な目的の為に僕を利用している.....と」

「お前は親孝行だと思え」 

 更に追い討ちをかけるつもりがあっさりと返される。むぅ、まだまだ直君に口ではかなわないか.....

 いや、多分一生勝てないだろうけど。

「それじゃな。俺はそろそろ生徒会の方に行かなきゃならん」

 そこで不意に話題を打ち切ると、入り口の方に歩き始めた。

「え?ずっとここにはいないの?」

 慌てて直君の背中に声をかけると、首だけ振り向かせて、

「しょうがないだろ。俺は一応生徒会長なんだ」

「いや、まぁ、そうだろうけど.....」

 そういえばその事をすっかり忘れていた。今日はずっと直君が側にいると思ってたのに.....

「接客方法などは既に教えた通りだ。後は他の部員がきっちりフォローしてくれるはずだから、大丈夫だろ?」

「う、うん.....多分大丈夫。練習もしたし」

 言葉とは裏腹に不安感ばかりがどんどん積もっていく。

「まぁ別にずっと外している訳じゃない。頃合を見計らって直ぐに戻る」

「うん.....」

「ま、頼りにしてるからな」

 不安が顔色に出た頃、直君はぽんっと僕の頭を軽く叩いた。

「う〜.....っ」

「仮に接客の方が上手くいかなくても気にするな。お前は元々見世物みたいなもんだ。店内で立ってるだけで効果は見込める」

 み、見世物って.....(汗)

「それ、フォローになってない.....(汗)」

「悪かったな。根が正直なんだ」

 と宣まう直君だが、これは別に冗談でも自画自賛でも自虐でも何でも無く事実そのものだった。直君は相手が誰であろうと、どんな状況でも自分の判断で間違ってると思えば容赦無く批判するし、逆にライバルであろうと良いと思えば褒める。

 まぁだからこそ彼の言動には重みがあるんだけど、ただその代わりにこういった場面での励ましだのフォローだのと言った事はえらく苦手だった。

「まぁ、いいけどね。責任は直君が取るって約束だし」

 忘れかけてた直君の台詞を思い出す。意味は無いのは分かっているけど。

「そういう事だ。お前の出来る範囲で適当に頑張ってくれ」

 しかし、直君は真面目に頷き、そして一度僕に薄く微笑んで立ち去っていった。

「..........」

 果たして、直君にとって一体何処まで本気なんだろうね?あの言葉。

 それから大体20分くらい後で、校内放送で直君による学園祭開始の短いスピーチが行われて学園祭が開始された。その瞬間、学園全体がまるで一斉に打ち上げられた花火の様に歓声があちこちで起き、校舎はライトのついたネオンみたいに生徒の姿がバタバタと廊下を走り始める。

 それを見ながら、相変わらずのテンションの高さだなぁと苦笑してると、程なくして直君の言う前評判通り、うちのカフェにもドドドドドという効果音が聞こえそうな程の勢いで、男子生徒の集団が押し寄せてきた。

「あ、いらっしゃいませ.....っ(汗)」 

 .....有る程度は予測内とは言え、その勢いには思わずたじろがずにはいられない僕だった。

 

*********

『なんってゆーか、常に誰かの視線を感じるんですけど.....』

 いや、まぁ僕は見世物なんだろーから、直君にとっては予測どおりって事にはなるけど、開店してから今までの2時間というもの、ずっと物珍しさや好奇心、そして何だか舐め回されてる様なべったりした視線等がひっきり無しに向けられて、どうも僕自身は何だか落ち着かなくて居心地が良いとは言えなかった。

 時折客として来てくれたクラスメイトや友人達が「よおっ!」って声かけてくれるのはいいんだけど、揃ってニヤニヤとした目でこちらを見るのがどーもねぇ。

 ちなみに、特に直接的なセクハラを受けた事はあまりなかったものの、一度だけ不意を付いてばばっと派手にスカート捲りされたのには閉口した。その後僕も「きゃあ!」等と叫んで真っ赤になりながらスカートを太ももの間に押し込むようにしてその場にへたり込んでしまったけど、あれは絶対ドツボに嵌ってしまった気がする.....その後「お〜、お〜」という歓声やら、注がれてきた嫌らしい視線で暫く立ち上がれなかったし。

『.....そもそも直君の多分がいきなり外れてるじゃないの』

 .....こりゃ残りの後半戦、先が思いやられるなぁ。そう思いながらトボトボと先ほど開いたテーブルを片付けようと向かったその時、

「...........っ!」

 不意に後ろの方から、何かが触れた。そしてそれは偶然当たってしまったとかいうものではなく、意思を込められたものだという事に直ぐに気づいてその場で硬直してしまう。

『ち、ちょっと.....!』

 こ、これはもしや......っ?!

 後ろの方から伸びてきている手は、まず腰の周りをさわさわと這いまわり、次第に下の方へ進んでいく。

『う、嘘でしょ?』

 早くこの場を離れなくちゃ......と思いながらも、体が硬直して動かない。僕こんな格好してるけど男の子なのにぃーーーっ(汗)

 しかも、周囲からは好奇の視線がいくつも僕に向けられているのに気付く。周りの人達は、僕が何をされてるのか分かっているのに、止めようとする所かそれを楽しんで傍観しているみたいで。

『わっ、ちょっと.....ダメ.....っ』

 次第に触り方が大胆になっていき、まるで弄ぶ様に手が指が僕のお尻を這いまわっていく。最初は谷間の表面を、そして次第に指が中に潜り込んで来て、一つのポイントを探し当てようとしていた。

『あ.....っ そこは.....っ!』

 僕を這い回る指が目的のポイントにたどり着いたとき、ぴくんっと強い刺激が僕の体を包む。下着の上からの感触でここが目的の場所だと確認した後、指はそこでぐりぐりと指を上下させて刺激を加え様とする。

『はぁ.....はぁ.....こんな所で.....そんなトコ弄られたら.....』

 乱暴なようで、的確なポイントを付いた指の動き。この人、手馴れてる..........っ?!

『ダメ......声が出ちゃう......っ』

 その場で立ち尽くしたまま、下半身から湧き出てくるような刺激に必死で声を出すまいと唇をかみ締める僕を嘲笑うかの様にして指は僕のお尻を弄りまわしていた。

『や.....はぁ.....それ以上は.....』

 そしてその指がとうとう下着の中に直接潜り込んでこようとした所で.....

「こら、雪音!」

 その時、直君の突然の僕を呼びつける鋭い声にびくっと体全体が逆立つ。すると同時に僕を支配していた硬直も解けた。

「忙しいんだから、そこでぼーっとしてないでこっち来い!」

「あ、う、うん.....!」

 そして僕は今まで僕の体を撫で回していた相手に振り向く事無く駆け足で直君の所へ戻っていった。

「直君、戻ってたんだ?」

「ああ。ようやく一区切りした。.....それはともかく、」

 直君は一呼吸置いて、

「.....どうしたんだ?さっきは硬直した様に突っ立ったままで。」

 全速力で直君の所に辿り着いた後ではぁはぁと肩で息をしている僕に違和感を覚えたのかそう尋ねてきた。

「.....う〜っ.....」

 それに対して憮然とした顔で直君を見る僕。

「何かあったのか?」

 その当然の質問に、正直に答えるかどうか迷ったが、

「.....お尻触られた」

 ぼそっと呟くようにそう答えた。

「.....そうか」

 そして直君も僕と同じ様にぽつりと答え、

「ここは足元の方は薄暗いからな。確かに格好の場所かもしれんな」

 周囲を軽く見回して冷静にそう言ってのける直君。

「.....まさかと思うけど、それも計算に入れてたって言うんじゃないよね?」

 その時ふと浮かんでしまった疑問をそのまま言葉にして、僕は疑るような視線と共に直君に仕向けると、

「.....俺を見損なうな。いくらなんでもそんないかがわしい商売をする気は無かったぞ。」

 と直君は即座に否定した。

「というか既に十分いかがわしい気もするけど.....」

 そもそもこの発案自体が.....ねぇ。

「む.....まぁ、そうかもしれないが.....」

 僕の指摘に直君は一瞬口篭り、しかしその後で一呼吸置いて、

「ともかくだ。.....もし、また今度そういう事をされたら今度は相手の腕をひっつかまえて大声をあげてやれ。俺が迅速かつ穏便に処置してやるから」

 微かに不穏な意志を含みながらの笑みを浮かべる直君の表情は真剣そのものだった。

「う、うん.....」

 でも、その直君の意志とは裏腹に、その言葉を聞いてもう少しくらいなら我慢してもいいかなと思った。僕にとってはその言葉だけで充分だったのかもしれない。

「んじゃ、また行ってくるよ」

 僕は直君に笑みを見せて再び接客に向かおうとした。

「雪音.....」

 その僕の背中を、直君の独り言の様な声が呼び止める。

「ん?」

 振り向くと、直君の表情は珍しく、というか今まで殆ど見たことが無い、思いつめた様な顔をしていた。

「.....悪いな」

「ううん」

 そんな直君に僕はさっきよりもう少しだけ心を込めた笑みを見せる。

「.....僕は直君の家に立てるのが嬉しいから」

 .....と、最後にこう付け加えて。

 

**********そして、

「終わった〜..........っ」

 校内放送で副会長の学園祭終了の放送が入った後で、直君の閉店宣言と同時に僕ははぁーーーーーっとため息混じりに呟いた。疲労感、とりわけ精神面での疲労の方が終了と同時にどっと出てくる。

 予想はしていたけど、結局あれからすんなり平穏に進む訳も無く、一応さっきみたいにネチネチとされる事は無かったものの、その後も薄暗さに紛れてお尻やら太ももやらあれこれ触られまくってしまう。寧ろ最初に誰かか試して僕があまり抵抗を見せなかったので他の人が味をしめたというのが正しいんだろうけど、

「.....結局みんな、外見が女の子っぽかったらそれでいいのだろーか(汗)?」

 何となく嫌悪感というより、なんだかなぁという呆れを含めた気持ちが先立ってしまったりして。触ってた連中の中には確かにうちのクラスメートも混ざっていたし。

「よっ、お疲れさん」

 直君が僕の隣に立ってぽんっと頭に手を置く。

 .....そう言えば直君、君も結局そーいう事なのかね?

「お前のお陰で売上目標を遥かに超え.....ん?どうした?」

 何時の間にか僕は直君の顔を無言でじっと見据えていたらしく、僕の視線に不思議そうな表情をのぞかせる。

「ん?あ、ううん。なんでもない」

 別にそれならそれでも構わない様な、何となく釈然といかない様な.....む〜。

 .....まぁでも、それもとりあえずこれで終わりだし。

「先に着替えてくるね」

 とりあえず先に着替えて気分を入れ替えよう。このままだと片付けも手伝えない。

「着替えるっても、うちの更衣室は先に片付け中で使えないぞ」

「校舎に更衣室があるよ。あそこは使われてないでしょ?」

 そこは校舎の奥にある小さな更衣室で、元々女性教員用に用意されたものだったけど、今は教員の数が少なくなって職員室内の一室を更衣室にしてそこで賄われている為に必要が無くなり、実質は空き部屋になっていたりしていた。その為に良くあまり真面目でない生徒さん達のサボり場所にもなってるみたいだけど。

「わざわざあそこまで出向かなくても片付け終わるまで待ってもいいんじゃないか?後30分かそこらで終わると思うが」

「いや、まぁ何となく。.....そういう気分なんだ」

「ん?」

 またも怪訝そうな目で僕を見る。はぁ.....まったくデリカシーが無い.....と一瞬悲嘆しそうになったが、考えてみれば当然だった。直君は何も知らないんだろうから。

「とにかく、着替えてくる」

 きっぱりと直君にそう告げると、僕は自分の荷物だけを清掃中の更衣室に取りに行ってそのまま校舎に向かった。

『.....抜き足、差し足、忍び足.....っと』

 忙しく後片付けが続いている校舎の中を通らずに、僕は制服を胸に抱えて人目に付きにくい道を選んで目的地にこっそり向かう。

 別に今更クラスメイトや他の友達の目に止まりたくないという無駄な足掻きをする気も無かったけど、だからと言ってわざわざ人前に出て目立つつもりも無かった。

 こっそりと校舎を回りこむようにして歩いていって、そして持ってきていた上履きに履き替えて非常階段の辺りから上って目的地に入り込む。さながらまるでスパイか泥棒の様に気配も痕跡も残さずに。

「ふぅ.....」

 更衣室に滑り込んだ後、すぐ後ろ手にドアを閉めて一息つく。しかしそこで慌てて周りを見渡して、再び一息。この中に誰かいるかもしれないという可能性を忘れてた。

 .....とりあえずとっとと着替えよう。僕は振り返らずに適当な開いてるロッカーを選び、もって来た制服を吊り掛けて服を脱ぎ始めた。

 しかしその時.....

がちゃっ

「え..........?!」

 エプロンドレスのボタンを手早く外してエプロンと一緒に脱ぎかけた瞬間、更衣室のドアが突然開き、そこから何やら楽しそうに談話しながら二人組の生徒が入ってきた。

「あ..........」

「お..........?」

「わーーーっ!」

 一瞬その片方と目が合ってしまい、僕はブラ1枚で剥き出しになっていた上半身を慌てて両手で隠す。

「お、わ、悪りぃ.....!」

 そして相手も僕の叫び声を受けてあわててその場から後ずさりそうになったが、

「.....待てよ、ここに女生徒がいる訳ねぇだろ」

 冷ややかな声で後ろに立っていたもう一人に押し戻された。

「ああ、そういやそうか」

 後ろからの突っ込みを受けて、飛び出しかけてた方も改めてこっちを向く。

「..........」

 僕は胸の辺りを両手で覆い隠した格好でそれから身動きが取れないまま、入ってきた二人を見比べた。一人は長身で華奢な体格をしている軽薄そうな金髪の生徒で、もう一人ががっちりとした体躯にドレッド頭で目付きがギラギラと鋭く光っている。二人とも割と美形の部類に入る様な整った顔をしてたが、少なくとも校則を完全に無視している様なファッションから見てもガラは悪そうだった。

「って、こいつプラネタリウムにいた売り子じゃねーか。」

 ドレッド頭の方が思い出した様に声を出す。特に誰に言ってるという訳でもなく。

「ん?おお、何でこんな所で着替えてんだ?」

 .....しまった、鍵かけるの忘れてた..........っ!相手はまだそれ程僕の方には強い関心を持ってない様だったが、僕の方は慌てふためいていた。

「えっと、その.....会場の更衣室は清掃中だったから.....だから.....」

 早く出て行ってくれーと心の中で叫びながら、当り障りの無い言葉でお引取りを願う。

「んだよ?」

「出来れば一人にしてくれるか、向こうを向いててもらえると嬉しいんだけど.....」

 しかし、

「あん?気にせずに着替えりゃいいじゃねーか」

 あっさりとそう返された。わざわざ僕の為に外してくれるつもりはないらしい。

「いや、そう言われても.....」

「男同士の癖に男の前で着替えるのが恥ずかしいってか?」

 だから、確かに普段はそうだけど今回は事情が特殊なんだってばっっ

 .....それに、下着だって履き替えなきゃなんないんだし。

「.....何なら俺達が着替えを手伝ってやろうか?」

 くっくっくっと笑い声が飛ぶ。

「け、結構です..........っっ」

 しかしこの時、僕は先ほど大きな勘違いをしていたらしいという事に気付かされてしまう。

「.....まぁ、そう遠慮すんなよ」

 僕に対して関心を持ってない所か、片方の一人が後手に更衣室の鍵をかけて躙り寄ってくるこの二人がいつの間にか僕に対して獲物を見るような目つきで見ていたという事を。

「え.....っ?ちょっ.....寄らないで.....っ」

 本当は着替え中だろうとすぐに飛び出して逃げるべきだった。そんな判断が今更出来ても、もう既に手遅れ以外の何物でもなく、

「そう嫌うこたぁねーだろ?.....仲良くしようぜ?」

 いつの間にか、僕は前後を挟んで二人に取り囲まれていた。

「..........!」

 そして、僕はその場でただ硬直するしか出来なかった。薄ら笑いを浮かべる二人の視線には、強い威圧感が込められていたから。

「あ.....あの.....っ?」

 とりあえず何か話そうとするものの、

「わっ!」

 相手はまったく聞く耳を持たない様子で、僕はドレッド頭の方に後ろから胸を隠していた手を強引に掴み上げられてしまう。

「はぅぅ.....」

 そして二人の目の前でブラに身を包んだ上半身が露になり、体全体が恥ずかしさで火照ってきた。普段裸の状態で見られても平気なのに、ブラをつけてるってだけで恥ずかしさで死んでしまいそうな程羞恥心を煽られてしまう。

「つーかよ、まさかこいつブラジャーまでしてるとは思わなかったぜ」

「へっ、なかなか徹底してるじゃねーの」

 そんな僕の姿を見て、からかう様にそう言う二人。

「大体前から疑問に思ってたんだが、こいつ本当に男なのかよ?」

 そう言って、僕の前に立った金髪の方が、俯いてる僕の顎を掴んで自分の顔の前へ引き寄せ、そして興味と疑惑が入り混じった目つきでこちらを見る。

「う.....っ」

「さっき試しに触ってみたが、いいケツしてたぜ」

 すると、今度は僕の後に立っていたもう一人が軽薄な笑いと共にそう告げる。

「っ?!」

 じゃあさっきお店で触ってきたのは.....

「ほう。つまり、とても男のものとは思えない.....って意味か?」

 そう言って、彼は掴んだ顎を弄りまわしながらジロジロと僕の顔を品定めするかの様に見据え、

「まぁな」

「ふん、何なら今から調べてみるか?」

 そして、相方の返答を受けて金髪頭の方が下卑た笑いを含めて、そう提案した。

 ちょっ、冗談でしょ.....??

「ああ、いい機会かもな。じっくり調べてやろうぜ」

 その相方もくっくっくっと顔を歪ませて同意する。しかも、こっちの方の目付きはまるで獲物を捕らえた後の獣の目そのものだった。

「う、嘘.....っ」

 きっと、今の僕はこの二人の前でこの上ないくらい怯えた表情を見せていたと思う。

 .....でも、多分それは火に油を注ぐ結果にしかなっていなかった。

「や、やめてっ!」

「うるせぇよ」

 僕はそう叫びながら身を避けようとするも、間伐入れずに乱暴に上半身を押さえつけられる。

「.....あうっ!」

 金髪の方にほとんど地面に顔がついてしまう位置まで抑えられて、僕は獣の目付きをしていたドレッド頭のもう片方にお尻を突き出した格好のまま、完全に身動きが取れなくなっていた。それから程なくしてスカートをめくり上げられ、下着が丸見え状態にされてしまう。

「へっ、良い格好だな、おい」

「やぁ.....見ないで.....っ」

 押さえつけられた息苦しさに加えて、先ほどより更に羞恥心が煽られ、まるで火がついた様に体が熱くなってくる。

「なに言ってやがる。恥ずかしい目に遭うのはまだまだこれからだぜ?」

 クククククと勝ち誇った笑い声が響く。

「おい、とっとと剥いちまえよ」

 僕の頭を押さえている金髪の方は苛立つ様にそう言うが、

「まぁ慌てるなよ。へへへ、やっぱいい触り心地だぜ」

「あう.....触ら.....ないで.....っ」

 スカートをまくられて剥き出しになった下着越しに男の手が這い回ってくる。.....この手つきはまさしく先ほど触られたときと同じものだったけど、さっきと比べて僕を完全に蹂躙しているという状況の為、時間をかけて更にネチネチとした動きだった。

「んで、あれから、どの位の連中に触られたんだ?」

「..........っ!」

 そしてそのまま好き放題に触りながら、まるで見透かしたような台詞を僕に向ける。

「そ、それは.....」

「俺が触ってた時も随分遠巻きのギャラリーがいやがったからな」

 そんなこと無い、と嘘でも言ってやらないとと思うも、

「ははっ、案外元々そういう店だったんじゃねーの?」

 僕が答える前に金髪頭の方が笑い飛ばした。

「ち、違うよっ.....!」

 どこか断言しきれないような後ろめたさを持ちながらも必死で反論するが、

「結果的には同じコトじゃねぇのかよ?.....はっ、どいつもこいつもいい趣味してやがるぜ」

 核心を付いた射る様な視線で僕を見る。

「ふ、まったくだぜ」

「.....てめぇの話だよ。つーかとっとと剥いちまえって」

 そして再び金髪頭の方が急かすと、相方の方は「せっかちな奴だぜ」と呟きながら脱がしにかかってくる。

「やだよ.....やめてよぉっ!」

 僕に最後に残った抵抗手段である口で許しを請うが、そんなもの最早効力がある訳も無く。

「お、なんだ、脱がしやすくなってるじゃねーか」

 腰の所に手を持ってきたところで、ショーツが左右で止めている仕組みになってるのに気付くとそれを手早く外し、

「おお、なんかこーいうのも悪くねーな」

 半分だけ取れかかって半分露出した状態を見て小さく感嘆の声を挙げた。

「君も悪趣味.....」

 直君といい彼といい、どうして人に恥ずかしい格好させて楽しむんだよぉっ

「なにやってんだよ、てめーはよ」

 しかし直接見えない位置にいる金髪の方はさほど興味も無さそうに冷たい視線を送る。

「まぁそう言うな。つーかこれならあの場で脱がせてやる事も出来たかもな」

「.....っ!」

 そ、そんな事されてたらもう明日から学校に行けなかったってばっっ

「さて、ご開帳といくか」

 そしてそのままもう片方をはぎ取るようにしてショーツを僕の体から取り外し、「へぇぇ、いいケツしてるじゃねーか」と舐めるような視線で後から覗き込んできた。

「ゃ.....ぁ.....見ないでぇっ」

 .....ううっ、嫌なのに.....こんな人に全部見られちゃうなんて.....

「おい、どうだ?男だったか?」

「.....ああ、ま、男として役に立つかどーかは別として一応モノは付いてるみたいだな」

 確認役の方があまり残念な様子は見せずにそう答える。

「なぁんだ、ちょっと期待してたってのによぉ」

 一方で、僕の目の前で僕を押さえつけていた方は、まるで僕が女の子で無い事を嘲る様な口調でそう言い、次の瞬間髪の毛をぐっと掴まれて強引に彼の目の前に反らされた。

「あううっ!」

 そして鼻先が触れ合うかという所まで持っていくと、

「ルックスの方はこんなに女みたいな可愛い顔してるのにな」

 満面の歪んだ笑みを見せた。

「..........」

 「君に可愛いって言われても嬉しくもないよ!」その言葉にそう言い返したかったが、その狂気すら入り混じったような表情に僕は声が出なかった。

「だがよ.....やっぱりケツは上物だぜ。こっちは下手な女のよりかよっぽどよさそうだ」

 そしてぐいっと力任せにお尻の肉を握りしめる。

「ひう.....っ!」

「.....こんなに柔らかいしな。へへっ」

 そして満足気味に先程より少し力を緩めて揉み始めた。

「やめ.....んぁっ」

 今度は痛みよりも刺激が勝ってくる。.....やだよ。こんな人達に弄られて感じるなんて。

「お?もしかして感じてやがんのか?」

「そ、そんなことな.....!」

 それを吹き飛ばすかの様にして大きな声を挙げる。しかし、

「大きな声出すんじゃねーよ」

 ぐいっと頬を掴まれて言いかけていた言葉をかき消されると、更に続けて後にいる方がお尻の谷間をぐぐっと広げ、

「へへっ、だがこいつのケツの穴、ヒクついてるぜ?」

 ねっとりと嫌らしい視線と口調でそう告げた。

「お前に弄って欲しくておねだりしてんじゃねーの?」

 そしてもう一人の方も僕への嘲笑混じりに返す。

「違うよ!そんなこと絶対に.....んんっ!」

 僕は必死で反論しようとしたが、次の瞬間にはお尻の割れ目に鼻先が飛び込み、そしてその奥にあるお尻の穴にぬめりとした柔らかいものが這いまわってくる。

「あ.....ふ.....ぁ..........っ」

 荒っぽくも執拗な舌の動きに抑えきれない快感を感じてしまい、挙げてはいけないと思いつつもくぐもった声が次第に漏れていく。

「おいおい、やっぱこいつ感じちまってるよ」

「ゃ.....ぁっ.....舌.....入ってくるぅ.....」

「..........っ」

 抑え切れない喘ぎの声に、前からごくっという生唾を飲み込む音が聞こえる。僕の今の表情は、目の前の彼にはどういう風に見えているんだろう?

 こんなに乱暴な事されて嫌なのに.....苦しいのに.....

「もう我慢できねぇ、入れちまおう」

 そして気の済むまで僕のお尻を嘗め回した後で荒い息と共に告げられたその台詞は、僕にとってまるで処刑宣言の様なものだった。

「おいおい、男だぜ?こいつは」

「.....知るかよ」

 金髪の冷やかしもぴしゃりと遮り、そして手早くカチャカチャとベルトを外してジッパーを下げる音と共にそそり立った男の分身が僕のお尻に宛われる。

「っ!やめて!もうこれ以上.....うぁぁっ!」

 必死の懇願が終わらないうちに、突き刺さる様な感覚と共に硬いモノが強引に僕の体にねじ込まれた。

「.....か.....は.....っ」

 そのショックで一瞬息が詰まる。自然に目は見開いて声が出ない。

「へ.....っ!こいつは.....」

「どうだ?美少年のケツのお味の方は?」

 金髪の方が皮肉をこめてそう尋ねるが、相手はもうまったく耳に入った様子も無く、

「最高だな。いい締め付けしてやがるぜ。こんなの.....初めてだ」

「そりゃ男を抱き慣れてたら俺が困るぜ。」

 さっき流された皮肉を再び向ける。しかしそれもあっさりと返して、

「なんとでも言え。俺はマジで男だの女だのどうでも良くなってきた」

 と、更に腰のぶつかりが音を立てるほど激しくなり、同時に脱ぎかけでむき出しのままだった上半身に手を伸ばし、そして両手をブラの下から僕の両胸に差し入れて荒々しく揉まれていく。

「胸も殆ど膨らんではいねーが、柔らかいしな」

「く.....はぁぅ.....っ」

 痛いよ、乱暴にしないで.....

 しかしそんな叫びも声にはならずに掠れた呻きを吐き出すのが精一杯だった。

「.....それに、さっきからいい表情で鳴きやがるしな」

「ああ.....だがよ。」

 ドレッド頭の方が、何かに気づいた様に邪悪な笑いを浮かべながら、

「.....こいつ初物じゃねーぞ」

「.....!!」

 そう告げられた瞬間、僕の頭の中のものすべてが一瞬吹っ飛んだ。まるで絶対に見つかる事のないと信じていた罪を不意に暴かれたように。

「あん?既にやられちまった後だって言うのか?ええ?美少年君よ?」

「..........」

 僕は何も言えずに目を逸らす。本当は違うって嘘付きたいのに、何もかにも見抜かれたような台詞に真正面から否定できなかった。

「ハハハ、そいつはいい。うちは男子校だしな。あり得ねぇ話じゃ無いだろーよ」

 それを肯定と受け止めると高笑いを挙げる。

「.....ま、けどそんなにやりまくってるってぇ訳でもなさそうだがな。美味しいトコだけつまみ食い出来て案外都合いいかもしんねぇぜ」

 その台詞の次の瞬間、再びずんっと強く根元まで差し込まれる。

「くぁっ!うぁぁぁぁっ!」

「成る程。んじゃ俺もそのおこぼれに預かるとしましょうかね」

 妙に冷静な口調で

「はっ、お前もとうとう堕ちやがったか」

「言ってろ。.....さて、とりあえず俺はこの可愛い顔の方をいただくか」

 もう片方の男もジッパーを開けて怒張したものを目の前に出し、

「.....ほら、咥えろよ。痛い目にあいたかねーだろ?」

 そしてそれを僕の目の前に突き出し、有無を言わさぬ強い調子でそう命じる。

「..........」

「ケツの方を経験済みってコトはこっちもした事あんだろーが?」

「..........」

 その強い威圧を込めた命令に僕は逆らいきれずにおずおずと突き出された怒張に唇を寄せ、

「クックッ、それでいい。ほら咥えろ、歯ぁ立てんじゃねーぞ」

 そして身動きは殆ど取れないので、四つん這いになったままで命じられるままに亀頭部分を口に含んで、おずおずと舌で転がす。直君にした時と比べて強い屈辱感が僕の精神を支配して、目からは涙が自然にこぼれてきた。

「.....ふん、感触は悪くは無いが、あんまり上手はねーな。成る程、そんなに仕込まれてるっつー事もねぇか」

 .....まだ、直君とした1回だけだよ.....っ

「なんなら、俺達がたっぷりと仕込んでやるか?」

「ははっ、それも悪くはねーな」

 僕の気持ちはまったくお構いなしに、僕の体を蹂躙しながら好き勝手な事を言う二人。

「ほら、もっと奥まで咥え込むんだ!」

「んんんーっ?!」

 不意に喉の奥の方まで突っ込まれて苦しさが途端に増すが、相手はそんな僕の事など推してくれる素振りも見せず、ただ自分の快感の為だけに僕の口内とお尻に自分たちのモノの出し入れを繰り返すだけ。

『.....なんで、こんな事になるんだよぉっ.....!』

 それから、声も出ない状態で僕は人形の様に二人に弄ばれていった。.....どうしてこんな事になってしまったのか、その理由も分からずに。

「く.....出るっ?!」

「うぐ.....ん.....んんんっ?!」

 そして暫く続いた後で、まずどくんっ、そんな感じの勢いで僕の咥内の奥に向けてどろっとした粘着質のモノが流し込まれ、

「うぇぇっ、ごぼっ、ごほっ、ごほっ.....!」

 僕はたまらず吐き出した後で思いっきりむせて咳き込んでしまうが、それでも粘度の高い液体は完全には出せずにねっとりと口や喉に残り、生臭くて嫌な味が広がっていく。

「おーおー、苦しかったか?そりゃゴメンな、へっへっへっ」

 誠意のかけらも感じないどころか、悪意すら感じる謝罪の言葉。僕をいたぶって楽しんでる、そんな意思がはっきりと伝わってきた。

「おいおい.....お前俺の後からの癖に先に出してどーすんだよ」

「.....るせぇよ。てめぇこそモタモタしてねぇでさっさと一発目出しちまえよ」

「ああ.....俺ももう.....くっ.....出るっ!」

 そしてお尻に入れてるドレッド頭の方もラストスパートとばかりにペースが上がり、そして.....

「や.....ぁ.....ぁあああああっ 熱..........っ!!」

 程なくして、どくどくどくっともの凄い勢いで熱くて大量の白濁液がお尻に注ぎ込まれていき、.....そして僕は為す術もなくそれを全て受け止めさせられた。

「.....へへへ、なかなか良かったぜ」

 ずるりと抜いた後で、僕のお尻の穴から受け止め切れなかったものが逆流していく。それでも僕は奈落の底へ落ちていく様な心地と共に、ぐったりとその場に倒れこむだけだった。

『拭き取らなきゃ.....直君に見られたくない.....』

 辛うじて考えられたのはそんな事くらい。口の中に残る金髪頭の精液の嫌な味ももう気にする気力もなくなってきた。

 .....しかし、

「おいおい、そりゃ出しすぎだぜ。後から入れる奴の事も考えろよ」

「ヘヘヘ、悪りぃ悪りぃ、あんまり気持ち良かったもんだからよ。.....つーか、何だかんだいっててめぇもケツに入れんのかよ」

「まぁ、せっかくだからお互いフルコースと洒落込もうじゃねーの」

「んじゃ、今度は俺が口でしてもらうか。」

 う、嘘.....まだ.....続くの.....?!

 しかし、僕にはもう助けを呼ぶ力も抵抗する力も、そして哀願する力さえ僕には残ってなく、ただ絶望感の中で二人の行為を受け入れるしかない状態だった。

 だから、もういい。.....好きにして。これ以上壊れようがあるのなら。

「.....そう言えばよ、結局こいつの相手って誰なんだろーな?」

「クックッ、そうだな。そいつには悪りィ事しちまったかもな」

『..........!』

 薄れかけてた意識が突然我に返る。ダメ.....それだけは言っちゃダメだ。

「おら、誰なんだよ?お前の御主人様はよ!」

 しかし、向こうは強引にでも聞き出そうというのか、ぐいっと後ろ髪を引っ張って顔を仰け反らさせられる。

「あぁうっ!」

 直君..........っ!

「.....俺だよ」

 その時、誰かが不意に僕の後ろ髪を掴んでいるドレッドの方の肩にぽんっと軽く手を置いてそう答えた。

「な..........っ!」

 「何だてめぇは!」とでも言いかけたのだろうか、しかし結局彼の感情は言葉にならず、代わりに絶句するかの様にして凍りつく。彼の視線の先にあった直君の表情は冷静そのもので、同時にその視線の向こうには、普段から彼の鋭い視線を見慣れている僕でさえぞっとさせる様な冷酷さも多分に含んでいたから。

 

***************

「.....まあ、これで、お前の両親や俺が心配していた理由が分かっただろう」

「..........」

 僕の隣に座って控えめにそう告げる直君に僕は沈黙を続ける。あれから直君の家で熱いシャワーを浴びて体中からほかほかと沸き出ている湯気の行方をぼんやりと見据えながら。

「もちろん、今回の事は俺に責任がある訳だが.....」

 珍しく弱気な態度を示してそう呟く直君。どうやら思ったより相当負い目を感じているみたいだった。

「..........」

 知らない方がいい事を知らしめてしまった。.....きっと直君が僕に感じてる負い目はそういう事だろう。『.....結局みんな、外見が女の子っぽかったらそれでいいのだろーか?』、さっきの二人組との事はこの台詞を裏付ける結果になってしまった。あの二人にしても元々男の子としての僕には興味なかった筈だし、直君に痛めつけられた後で、実際初めはちょっとからかう位であそこまでするつもりも無かったとも言ってた。だったら、それをあんな風に狂わせたのはあんな格好をしていた僕自身という事になる。

「謝ってどうにかなる問題じゃないのは無いのは分かってるが.....すまない」

「..........」

『なんだかなー.....』

 でも、僕が複雑な心境になってる原因はもっと別の所にあった。結局、あの二人も今日プラネタリウムに来ていた人達も.....そして直君も、みんな一体誰を見ていたんだろう?メイドさんの衣装に身を包んだ僕.....雪音だとちゃんと思ってくれてたんだろうか?結局僕は衣装に着られたマネキン人形になっていなかっただろうか。着替えた後で紙袋に一纏めにされて部屋の隅に置かれている今日の衣装一式を見ながら、僕はそんな自問自答を意味も無く繰り返していた。

 しかし、だからと言ってあの衣装に嫌悪感を抱いている訳でも、もう二度と着たくないだとかそんな事を考えてる訳でも無かった。色々ありながらも僕自身、何だかんだで楽しんでいたという事も事実だったのだから。ただ.....不安なだけ。また襲われそうだ、とか言うんじゃなくて僕が僕で無くなってしまう事が。

 .....だから、僕が欲しかったのは謝罪でも何でもなかった。俺はあいつらとは違うって.....ただこの言葉が欲しいんだと思う。それとも.....

 .....君にとっての僕も、僕を襲った彼らと同じ.....女の子の代用品に過ぎないのかい?

「..........」

 それから僕も直君も、次にかける言葉がお互い見つからず、隣り合ってベッドに腰掛けたまま沈黙を守り続けていた。しかし、ふと俯いていた状態から顔を上げてみると、既に午後8時を過ぎた時計の針が僕の目に映る。

「.....あ、もうこんな時間だ」

 もう帰らなきゃ。今まで頭の中で色々渦巻いていた思考が瞬間的に霧散してその一言に集約していった。まるで止まった時間が再び動き出す様に。

「.....帰るのか?」

 次いで直君の止まっていた時間も動き出す。

「うん。遅くなっちゃったし」

 僕は無意味に先ほど着替えた制服を正しながら立ち上がる。今の僕は間違いなく雪音だ。近くの私立男子校に通ってる男の子の.....ね。

「何なら送って行ってやろうか?」

 特に強制はしないといった具合でベッドに腰掛けたままで僕を見上げる直君。

「.....ううん。一人で帰れるから」

 しかし僕はそれを断り、「ありがと。」と一言付け加える。

「それじゃ、また明日学校で.....」

 そして直君に背を向け、部屋のドアに向かおうとしたその瞬間、

「.....待て」

 直君の手が、部屋を出ようとした僕の手をしっかりと掴んでいた。

「直君.....?」

「.....まだ、お前を帰すわけにはいかない」

「え.....?」

 その直君の台詞に振り向いた僕の直ぐ前には真剣な表情の直君が立っていた。

「まだ、俺は果たしてないんだ」

 僕の手を握ったまま、そう語りかける直君。

「果たす.....?何を?」

 それは、何度も直君に言われてたのにすっかりと忘れていた言葉。

「.....言っただろ、責任は取るって」

 そう言われて次に気付いたときには僕は彼に引き寄せられ、その胸に抱かれていた。

「あ.....っ!」

 瞬間的に停止する思考。そして、再び動き出したときは僕の心臓の鼓動がとくん、とくんと震えるように早くなる。

「責任.....?」

 直君の胸に抱きすくめられたまま僕は顔を上げた。

「.....ああ。」

「どうやって.....?」

 真剣な目を崩さない直君に問い返すと、彼は一端引き寄せてた僕の体を離して、

「.....こうやって」

 .....そして次の台詞と同時に、僕は直君のベッドに押し倒された。あの時と同じ、直君の前に初めてメイド服を着て姿を見せたときの様に。

「直君..........?」

 覆い被さるようにして迫ってくる直君に、僕は驚きを表情で表現した。その後、『.....どうして?』と、そんな疑問を言葉にして表す前に、直君の方が先に語りかけた。

「.....これが俺の取れる責任だ。せめて嫌な想い出となる前に俺が忘れさせてやる」

「え..........?」

 言うが早いか、直君は僕のYシャツのボタンの間に指を滑り込ませて脱がせにかかる。

「ち、ちょっと待って.....!」

 しかし僕はそれを慌てて止めて、

「あのね.....その前にひとつだけ聞きたいんだけど」

 先ほどまで自問していた言葉を思い出しながら一つの質問を試みる。

「.....なんだ?」

 僕に促されて脱がせる手を一端止める直君。どうやら今回はちゃんと話を聞いてくれるらしい。

「.....直君、君が求めているのは誰なの?女の子の格好をした僕?それとも.....クラスメートの僕.....?」

 直君の目をじっと見据えて問いかける僕。

「..........」

 真剣な目で相手の回答を待つ僕と、きょとんとした顔で質問の意味を考える直君。.....彼は一体どんな答えを返してくれるんだろう.....?僕にしてみれば、これは直君に告白する位の勇気を振り絞った質問だった。

「..........」

 が、しかしそれに対して直君はと言えば、

「.....愚問だな」

 と、なんだ、そんな事かとばかりにあっさり返されてしまった。

「.....愚問ですか」

 愚問で意味不明っぽくても、こっちは本気なんですけど.....

「そんなの.....両方に決まってるだろ?」

「両方っ?!」

 両方の部分を強調してあっさりとそう答える直君。.....はうっ、両方ときましたか。

 そして、更に間をおかずに続けて、

「そもそも、どっちだろうとお前である事に変わりはないだろ、雪音」

 ..........あ。

「うん.....そうなんだけど.....」

 直君、ちゃんと分かってくれてた。

「だから俺はお前を抱く。責任なんて今はただの口実だ」

「ん.....っ?!」

 それだけ言うと、直君は躊躇う暇すら与えずに僕の唇を奪った。

「んんんーーーーーっ?!」

 瞳を閉じた直君に対して、僕は逆に目を見開く。唇同士が触れ合うだけの短くて浅いキスだったが、まるで魔法にでもかかった様にその場で硬直してしまった。その後で、「ま、ついでにこれが答えだとでも言っておこう。」とニヤリと笑みを浮かべる直君に対して僕は固まったままで赤くなりながら彼の顔を見据えるだけしか出来なかった。

 しかし直君はそんな僕にはお構いなしに、続いて僕の制服のズボンの中に手を入れ、下着越しに一番敏感な男の子の部分に触れてくる。

「あ..........っ!」

 直君の触れた手から、僕の体にぴくんっと仰け反るような強い刺激を受け、そのまま僕にかかっていた魔法が解ける。そして直君はまだ僕のに手を触れたままで、

「本当はな、雪音。.....俺はお前が男であろうと女であろうと、その中間だろうとどっちでもいいんだ」

「え.....?」

 直君の言っている意味が一瞬見えなくて問い返す僕。

「俺が好きになったのは雪音、お前という存在そのものなんだからな」

 .....直.....君.....

「.....う.....ん。」

 僕が頷くと同時に、再び触れ合う唇。その時閉じた僕の瞳には一滴の涙が零れ落ちようとしていた。

 先ほどと比べて長い長いキス。多分僕はずっとこうなる事を望んでたんだと思う。だから.....唇を離したくなかった。窒息するまで触れていても決して後悔はしないだろう。

「.....ふぁ..........っっ!」

 しかし、その時間は自分の喘ぎ声と共に終わってしまった。僕にキスしてる途中でも直君は僕への愛撫は止めることなく、直君の手は下着の中に手が入り、今度は直接僕のモノを弄ってくる。

「どうした?もうこんなに固くなってるぞ?」

 今度は意地悪ではなくて、優しげな笑みを浮かべて囁く直君。

「その.....キスで感じちゃったから.....」

 そして僕は赤らめながらもそう正直に答えると、

「.....そうか」

 直君は首筋にキスしてくれて、服の上からもぞもぞと愛撫をし始める。.....が、

「ね、直君.....」

 僕はそれを一端制して、

「ん?」

「.....まず、全部脱いじゃおうよ?ね」

「ぁ.....直君.....そこ.....っ!」

 直君の舌が僕の小さなモノを所狭しと這い回っていた。決して大きいとはいえない僕の分身は直君の手と口の中に収まって直君の中で踊らされていく。まさか直君にしてもらえるなんて思わなかったけど、快感と同時に不思議なくらいの嬉しさがこみ上げてきていた。

「気持ちいいか?雪音?」

「う、うん.....」

 初めてした時と比べて、今回は直君の優しさが僕を包み込んでいく様で。あの時の直君も実は嫌じゃないんだけど.....幸福感に当てられほろ酔い気分な心地の今回はやっぱり格別だった。

「そうか。それじゃもっとしてやる.....」

 そして直君の舌が優しく剥いた亀頭の部分を丹念に舐め取っていって、

「く.....はぁ.....ぁっ」

 最初は痛みに近い刺激が、慣れてきてだんだん気持ちよくなっていく。

 .....なんか、直君達が口でして欲しがった理由が分かった気がする..........っ!

「んん.....っ、はぁ.....っ、」

 やがて全体がムズムズする様な感覚と共に、強い射精感が沸き上がってくる。.....早いのは分かってるけど、でも.....

「直君.....ゴメン、もう僕.....っ!」

「.....ん?」

 そして不意に直君が僕のモノを口から離した瞬間、直君の握っていた手にすべてぶちまけてしまった。

「..........を」

「はぁ.....はぁ.....」

 .....やっぱり、男の子失格かもしんない、僕。.....まぁ別にだから悲しいって訳でも無いんだけど。

「.....ゴメン」

 どういう意味で謝ってるのかは置いておいて、無意識に出るそんな言葉。.....しかし、直君は聞かない振りをして、じっと僕のモノがついた手を眺めていた。

「..........」

 そして徐ろにそっと口を近づけ、

「.....なるほど、不味いな」

「あはははは」

 そう言って顔をしかめる直君を見て笑いがこみ上げる僕だった。.....共有してる喜びって感じなのかな?

「今度は.....僕の番だね」

「.....雪音.....?」

 直君が手に付着したものを拭き取った後で、僕は仰向けになった直君の腰に跨り反り返っている彼の分身を自分の手で自分のお尻に宛がう。そして、

「入れるよ..........んっ!」

 ゆっくりと直君に向けて腰を下ろしていく。やっぱり挿入した瞬間に痛みが走るが、それももう最初の頃に比べると長くは続かなかった。

「く..........はぁ..........」

 ゆっくり、ゆっくりと腰を下ろして直君の分身を僕の中に導いていく。それが一番奥まで入った頃には、もうあまり痛みは無かった。

 僕も慣れてきたのかな.....?それとも、好きな人のだから..........?

「雪音..........」

「はぁ.....はぁ.....ね、直君.....気持ちいい?」

「.....ああ。最高だ、雪音.....」

 その言葉に胸がきゅんと締まってくる。.....それは好きな人に喜んでもらえる幸せ。

「それじゃ.....もっとよくしてあげる」

 そして一度奥まで入り込んだモノを、僕は自分で腰を上下させて出し入れし始めた。.....流石にそんなに激しくは無理だけど、それでも僕に出来る範囲で精一杯に。

「ぁ.....はぁ.....っ入ってる.....直君のがいっぱい.....!」

「雪音.....くっ.....!」

 直君.....もっと感じて.....僕の中でもっと気持ちよくなって.....!

 そんな想いを込めて一心不乱に動く。

「.....はぁ.....はぁ.....っ、ふぁ.....っ」

 いつしか僕の体から汗が滲み出し、その雫が直君の体に降り注いでいく。腰の辺りを掴む直君の手の動きの合わせた激しいグラインドと共に、ベッドがギシギシと軋みをあげていた。

「雪音.....もう出そうだ.....中に出していいか?」

「うん.....いいよ、出して.....僕の中にいっぱい..........っ」

「..........、出すぞっ!」

「ん..........っ!」

 どくんっ

 .....そして何回目の交わりの後か、僕の中の一番奥まで入り込んだ瞬間、直君の分身から熱い精液が注ぎ込まれていく。

「あ.....はぁ.....っ、入ってくる.....ぅ.....」

 それは、満たされていく快感。まるで直君に染められていく、そんな感覚だった。

「.....いっぱい、出しちゃったね」

 直君のほとぼりを全てお尻に受け止めたままで、くすりと直君に微笑む。さっき無理矢理出されたときとは違って、今度はなんだかずっとこのまま受け入れていたかった。

「ああ.....もう一度シャワー浴びる羽目になっちまったな、雪音」

 そして直君の方もそんな僕の気持ちを察したのか、少しだけ嬉しそうな笑みを見せる。

「そうだね.....んじゃ洗うの手伝ってくれる?」

 通じ合った想い.....それが実感できるこの時間。きっと一番幸せな時なんだろうな、僕はそう思った。

「ああ、いいぞ。今度は一緒に入るか」

「あ、でももうえっちはダメだからね?」

「..........ちっ」

「『ち』、じゃないってば〜っっ^^;」

 .....まぁ、明日になればまたいつも通りなんだろうけど.....ね。

 

 その後、すっかり夜も更けて家に帰った後で、僕はとっくに用意されていた遅い夕食を食べながら目の前に座っているお母さんに直君の話を持ち出してみた。

「んで、お母さん直君にどういう条件を出したの?」

 もう前置きも無く、単刀直入に。

「あら?何の話かしら?」

「.....天文部のコトだよ。部が潰れそうになってるのを知って直君に部長さんになって存続させる様に依頼したでしょ?」

「ふふ。今回の件は聞いたわよ。直樹君もなかなかやるもんね」

 満足げに頷くお母さん。

「実際苦労したのは僕だよ、今回は(汗)」

「ん〜、まぁ条件って言うほどのことも無かったんだけどね。寧ろ本気で受け取られるとは思ってなかったんだけど.....」

「どんなの?」

 それでも直君にとってはよっぽど重要な条件だったって事になるけど.....

「.....っとね、」

 口ごもる。

「もしかして、僕にいえないコト?」

「ん、言えないって訳でもないんだけど.....雪ちゃんを君に進呈するって」

「.....はい?(汗)」

「いや〜、結構冗談のつもりだったんだけど、直樹君ったら妙に神妙な顔して「分かりました」って請け負っちゃったのよねぇ」

 そう言ってお母さんはまいった、まいったと頭を掻く。

「って、直君が?」

「ええ」

 .....つまり直君の責任取るって意味、こういう事だったんだ。

 でも.....

「.....それって、人身売買と言わない?お母さん.....(汗)」

 僕の知らないうちにそんな密約が交わされてたなんて.....果たして僕の意思は一体(汗)??

「まぁ否定はしないけどね。でも、」

 .....否定しろよ、おい。

「でも、雪ちゃん直樹君の事嫌いじゃないんでしょ?」

「いや、まぁ、.....そう、だけど.....」

 カップを両手で握り締めたまま、かぁぁっと頬が熱を帯びて赤らむ。

「なら、いいじゃない。みんなが得したって事で♪」

「う〜っ」

 でもやっぱり何処かが釈然としない僕だった。

 .....もしかしたら、それは贅沢な感傷なのかもしれないけど。

 

*********次の日

「.....おはよ」

「おう」

 通学路の途中、直君の家からの通学路と重なる通りの門で、壁に背中を預けて腕組みをしている直君の姿が僕の目に映る。それは自他ともに断言できる、実に珍しい光景だった。

「.....もしかして、待っててくれてたの?」

「まあな」

 僕の質問に対してにっと軽く微笑みながらそう応える直君。

「..........」

 .....雨でも降らなきゃいいけどね。今から折りたたみの傘でも取りに帰ろうかな?

「意外そうな顔してるな?」

「まぁ、どんなに達観した嘘つきさんでもこれは否定できないと思うよ?」

 それと、この状況を予測できた人も。

「だろーな」

 僕の返答にふっ、と直君も同意するように笑って、今まで背中を預けていた壁から離れ、

「行くか」

 と優しげな目を僕に向けてそう促した。

「う、うん.....」

「.....それでさ、僕お母さんから聞いたよ。お母さんと直君との間で交わした約束のコト」

 それからしばらく無言で歩いた後で、僕は不意に直君に昨日の話題を向けてみた。

「.....そうか」

「うん」

「..........」

「..........」

 お互い相槌だけうって、そして沈黙。.......僕は今更ながらちょっとこの話題を振ったのを後悔した。考えてみたら何にも言い様がないよね。僕が直君の立場でも沈黙するしか無い事に今更気づいてしまった。

「..........」

「..........」

 更に続く沈黙。このまま学校に着くまでずっとこのままかと思われたけど、この沈黙を破ったのは直君の方だった。

「.....雪音」

「うん?」

「それなら話が早いな」 

 しかも、えらく突拍子も無い切り出し方で。

「はい?(汗)」

「.....実はな」

「ん?何、これ?」

 渡されたのは1枚の写真だった。ハンガーにかけられたふりふりのドレス.....??

「今度はお前にこれを着てもらおうと思って昨晩ネットの通販で注文したんだ。明日中には届く予定なんだがな」

「え?え?え?」

 話が突然妙な方向に展開していってんですけどっ?!

「うむ、何だかんだ言ってもやっぱりお前はこういう服の方が似合うと思ってな」

「だからってどうして突然.....」

「まぁ先日ああいう事があったばかりだ。もしかしたら嫌がるかなと思ってなかなか言い出せなかったんだが.....」

 そこでニヤリと笑みを浮かべて、

「しかし、話がついた以上はもう必要以上に相手を気遣う必要はあるまい?これからは俺の好きな事を遠慮無しに言わせてもらうさ」

「それって、なんかかなり強引で無茶苦茶言ってる気がする.....(汗)」

 相変わらず僕に対してはえらく自己中心的な直君だった。

「そうか?もうお前は俺のモノだろ?」

「はっきりと言い切るし.....(汗)」

 僕の意思は一体何処に〜っ!と叫びそうになるが、

 

 だけど、直君の想いは確かに昨日受けとめる事が出来たし、それに.....もし直君にとって遠慮なくワガママが言える相手が世界で僕一人だけなのなら.....

「もぉ.....仕方がないなぁ」

 きっと、僕にとっても凄く幸せなことだから。

「お、それじゃ.....」

「.....うん、いいよ」

 .....なら、それでもいいかなって、僕は思った。僕自身、直君の為ならどんなコトでもしてあげられる、そんな気持ちが芽生えている今は。

 

 

******そしてあれから暫く経ち、

「んでは、今日はこれを着て貰おうと思う」

「.....ち、ちょっと流石に体操服とブルマは.....^^;」

「ん?スクール水着の方がいいか?」

「はうっ、そんなモノまで用意してる〜?!(汗)」

 すっかり僕に女の子の格好をさせてHなコトをするのが趣味になってしまった直君と、

「はぁ.....あふっ.....そこ.....気持ちいい.....」

「嫌がってた割には随分盛り上がってるな、雪音」

「だって.....こんなの.....されたら.....」

「ふっ、体操服&ブルマで手錠にアイマスクして全身ローター責めってのもなかなかマニアックだろう?」

「もう.....悪趣味.....あんっ!」

「口ではどうこう言ったって、ココは正直みたいだぞ?」

「や.....あぁっ、そこに直接当てたらダメぇ.....っ」

 僕の方もちゃっかり順応.....というか調教されちゃってたりして。最近更にディープになって来ている直君に呆れと戸惑いも感じならがらも、すっかりと直君との行為に溺れてしまっていた。客観的に考えたら男のコ同士でえらく退廃的な日々を過ごしているなぁという自覚も無くはないんだけど。

 .....だけど、それが間違っているかどうかは誰にも言えるものじゃないし、僕達も改めて検証してみる気も毛頭なかった。直君に言わせれば、そもそも僕という存在が特殊なんだと言う。男の子である必要がまったく無いのに、それでも何故か男の子という事になっている不確定な存在。内面的にも女装癖なんてついてしまった割には特に性格やしぐさに変化が起きてる訳でもなく、相変わらずどっちつかずのままだった。直君にとっても今の状況はたまたま偶然の悪戯で辿り着いた選択肢、これだけの話でしかない。

 .....しかし、そんな理屈も本当は大して重要な事でも無いのだけど。

 だって..........

「さて、俺の方も我慢出来なくなってきたな。.....そろそろ入れるぞ」

「え?んじゃせめて手錠外し.....わっ!」

 手早くブルマとショーツを一緒に膝下までずらすと、僕を後から抱きかかえてベッドの端に腰掛ける。

「手錠外したら意味無いだろうが?.....それに、せっかくだから今日はまだまだ趣向を凝らしてるんだ」

「趣向って..........ふぁっ?!」

 殆ど不意打ち気味にして直君のモノが僕の中に入っていく。そして初めはゆっくりと、そして段々早いペースで僕自身が動くまでもなく直君に下から突き上げられていった。

「あっ、くっ、ちょっと.....激しすぎ.....っ!」

「おお、そうだ。アイマスクは外してやらないとな」

 急に思い出したとばかりに動きを止め、僕の視界を奪っていたアイマスクを優しく外してくれる。

「あ.....ありがと.....って、ええっ?!」

 しかし、視界が復活したその時には、僕が直君に犯されてる姿がはっきりと姿見に映されていた。

「ちょ.....こんなの.....やだよ.....っ.....あうっ!」

 恥ずかしさからすぐに直君から離れようとするも、それを許さずと言った具合で腰の突き上げを再開する直君。そもそもこの体勢で両手を手錠で繋がれている以上、僕にはもう直君の為すがままになる以外は無かった。

「どーだ?自分が身動きできないまま犯されてる姿を見ながらってのは?」

「もう、直君のバカっ、悪趣味、変態ーーーーーーーっ!」

「ふふふっ、何とでも言え」

 .....どういう形であれ今僕たちはこの現実を躊躇いもなく受け入れ、そして楽しんでいるし、何より直君は間違いなく僕を僕として見ていてくれてるって事を知ってるから。それだけで充分だった。

「さて雪音、今度はシースルーのベビードールと裸エプロンのどっちがいい?」

「.....直、君.....(汗)」

 いや、まぁ何処までエスカレートしていくのか、ちょっと怖い部分もあるけど.....ね。

 

************おわり************


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