れるお姫様とエトランジェ Phase-6.5 その3


Phase-6.5:『雨上がりの翌日』

6.5-9:もう一つの、変化した関係。

「んじゃお二人さん、本日の特訓はここまでにしときましょうか?」
 それからやがて、水泳部の伝統らしい一日の練習の締めくくりとして葵ちゃんから指示された、わたしと柚奈の25メートルガチンコ勝負が終わった直後に、午後4時半を告げる学校のチャイムが校内へ鳴り響き、プールサイドで審判をしていた茜が終了を告げる。
「はぁい……」
「……ふう。ありがとね、茜……」
 ちなみに、勝負は一応わたしの勝ち……だけど、まぁこれはどうでもいい話で、ともかく始めたのが午後1時くらいだったから、休憩を挟みつつ3時間半も練習していた事になったりして。
 ……まぁそのうち、40分くらいはわたしと茜が姿を消していたワケだけど、とりあえず柚奈に問い詰められられたりしなかったのは、幸いというべきか。
「今回はとりあえず、去年までに教えた泳ぎを思い出してもらうのが目的だったけど、まぁ二人揃って25メートル泳げる様になったなら上出来と言っても
いいかしらね?」
「まったく……。ホント助かったわ、茜……」
「うん……。さすがにもうくたくただけど……」
 授業開始までに水に慣れて恐怖心を払拭したというだけでも、わたし達には充分過ぎる予習だった。
 体育の成績も内申には無関係じゃないとしても、そこは最低限でOKと割り切ってる部分だし。
「でも、お二人共筋はいいと思いますよー?今後も練習を続けられれば、もう少しは伸びると思います♪」
「あはは、ありがと……」
 ”もう少しは”って辺りに本音が見え隠れしてますがね、葵ちゃん。
「んじゃ、あたし達はもうちょっと練習してから上がるから、お先にどうぞ」
 それから、話も一区切りした所で、去年と同じく先にわたし達を帰そうとする茜なものの……。
「へいへい、そうさせてもらうわ……」
「それじゃまたね、茜ちゃん」
「……ああ、そうだ。みゆが着てるそのスク水はプレゼントするわ。また着て見せてくれるなり、柚奈を誘惑するのに使うなり、ご自由に」
 しかし、その後で茜はわたしにニヤリとイヤらしい視線を向けながらそう告げてきた。
「あのね……」
 また、焚き付けるようなコトを……。
「…………」
(……あれ……?)
 しかし、そこで隣のヘンタイお嬢様が「では、遠慮なく〜♪」と早速襲いかかってくると思えば、珍しく無言でスルーしてしまう。
 意外と、柚奈ってスク水には興味ない……コトはないわよね?
「…………」
 いやいや、そこで物足りなさを感じてどうする、わたし。
 きっと、流石に今日は疲れちゃったんだろう。
「あ、何でしたら私を誘惑してもらっても全然構いませんよ?」
 ……と、何だか微妙な空気になりかけた所で、柚奈の代わりに葵ちゃんがわたしの前まで来て訴えかけてきた。
「こらこら……っっ。でも、葵ちゃんもありがとね?」
 何だかんだで、指導は自分の時間を割いて真剣にしてくれたし。
「いえ、こちらこそごちそうさまでした」
 そんなワケで、とりあえずツッコミを入れながらもお礼を言うわたしに、まるで美味しいモノでもご馳走になった後の様な笑みを浮かべて、ぺこりと一礼を返してくる葵ちゃん。
「……もう、あんたもですか……」
 まったく、どいつもこいつも……。
「……でも、本音を言えばちょっとだけ残念です」
「へ?」
「もし、茜先輩の想いが成就してたなら、もしかしたら姫宮先輩は……」
 そう言って、今度は名残惜しそうな顔を見せる葵ちゃん。
「えっと……」
「……ほら、みゆちゃんいこっ!」
 わたしは思わず返す言葉に詰まってしまうものの、そこで柚奈が横から割り込んでくると、強引にこちらの手を引いて歩き始めていった。
「あ、ちょ……っ?」
 えっと、何だか今日はこのパターンがやけに多い様な……?

                    *

「……ふう、今日は疲れたわね……」
「……うん……」
 やがて、着替えた後の帰り道、わたしと柚奈は夕暮れが近づく通学路を、いつもと違って特に会話が弾むこともなく静かに並んで歩いていた。
「…………」
「…………」
(えっと……)
 登下校のピーク時は制服姿の女の子で賑わうこの道も、土曜日の夕刻という、すっかりと外れた今の時間は自分達以外で帰路についてる生徒は
いないみたいで、それが余計に手持ち無沙汰な気分をわたしに与えていたりして。
「……ちょっと、一気に張り切りすぎちゃったかな……?柚奈は大丈夫?」
「みゆちゃんは普段から運動不足だもんね?……でも、今日は私も疲れちゃった感じ……」
 それでも、沈黙が何となく耐えられないわたしが苦笑いを浮かべながら言葉を続けると、柚奈は歩きながら小さく溜息を吐く。
「……運動不足、かぁ……。やっぱり、弛んできたのかなぁ?」
 柚奈と常時追いかけっこしていた去年と比べたら、確かに最近のわたしは運動不足なのかもしれない。
 うんまぁ、それは薄々自覚してるんだけど……。
「……そうだね……」
「…………」
「…………」
(……むぅ、会話が続かない……)
 ともあれ、あれから柚奈に手を引かれてプールサイドから出た後は、ずっとこんな感じだった。
 更衣室に戻った時だって、他に誰も利用しない時間で二人きりになったんだから、すんなりとは終わらないだろうと身構えていたのに、
このヘンタイお嬢様はわたしの方に目もくれず、黙々と一人で着替えていたし。
「…………」
 まぁ、へとへとに疲れるまで練習したんだから、さすがの慢性発情娘も体力の限界という事だろうか。
(でもなぁ……)
 それにしたって、ちょっと雰囲気がいつもより重苦しすぎるというか……。
「…………」
「…………」
 ……やっぱり、わたしが茜と何かあったのを勘付いているのかな?
 だけど、直接訊ねるのも気が引けるというか、藪から蛇を突っつくのもイヤだし……。
(う〜〜ん……)
「…………」
「はぁ……。やれやれ、これじゃ明日は筋肉痛かな……?」
 身体も、心の方も。
「……ね、みゆちゃん……。だったら、明日はお休みにしない?」
 そして、とうとう吐いてしまった深い溜息の後で、柚奈が遠慮がちにそんな提案を向けてくる。
「ん?休みって、勉強のこと?」
 つまり、週末恒例の柚奈の家でのお勉強会。
 まぁ、うち半分以上はヘンタイお嬢様とのいちゃいちゃタイムなんだけど。
「うん……。そのかわり、ちょっと付き合って欲しい所があるの」
 しかし、今回は柚奈の方からキャンセルの申し出をしてくると、どこか思いつめた顔を見せながら、わたしのブラウスの裾を掴んできた。
「……まぁ、別にいいけど」
 とりあえず、そんな柚奈の様子は気になりながらも、短い言葉で了承するわたし。
 柚奈の事だから、明日一日分の遅れはちゃんとフォローしてくれるだろうし、結局は一緒にいるのならば、わたしにとっては同じ事である。
「……うん……」
「…………」

                    *

「……しかし、一体どこへ連れて行かれるんだろうと思えば……」
 それから一夜明けた翌日の午後、柚奈に促されるがままシャワーを浴びて浴室から戻ってきた所で、改めて独り言の様に呟くわたし。
 珍しくデートの待ち合わせに駅前を指定してきた柚奈は、合流するなり会話もそこそこにわたしの手を取ると、そのまま近くのシティホテルへと殆ど
問答無用で連れ込まれて今に至るわけだけど……。
(結局、やるコトは大して変わらないのね、やっぱり……)
 何だか安心した様な、やっぱりいつもとは違う雰囲気で不安もある様な……。
「だって、今日はお母さんやお姉ちゃんもみんないるし、邪魔されたくなかったから……」
「……なるほどね」
 なにせ、言動はいつものヘンタイお嬢様そのものなのに、それでも先にシャワーを済ませてわたしと同じくバスタオル一枚でベッドの隅へ座る今日の
柚奈の表情は、昨日からの思いつめた雰囲気を引きずったままだし。
「迷惑……だった?」
「いや、別にわたしはいいんだけどさ……。こんな凄い部屋なんて利用したコトないし」
 繁華街とかにあるラブホとかへ連れ込まれるのはさすがに抵抗あるけど、ここは地元でも有名な高級ホテルで、しかも最上階のスイートルームと
きたもんだ。
 昨日の今日の話だろうに、予約が取れた所を含めて、正にお嬢様パワー炸裂って所だろうか。
「よかった……。それじゃ、みゆちゃんどうぞ」
 ともあれ、柚奈はそれだけ告げると、ぽんぽんと自分の隣を手で叩いて招き入れてくる。
「はいはい……」
 一応、昨日よりは重苦しさは緩和されてるけど、それでも、やっぱり今日はいつもとは違う空気。
 そもそも、最初のお風呂だって、普段なら一緒に入ってからの営み開始となるのに、今日に限っては別々だし。
(う〜〜っ……何か調子が狂ってくるというか……)
 そして、普段のノリなら、わたしが隣へ座った所で即押し倒されたりするんだろうけど……。
「…………」
「…………」
(ほら、やっぱり……)
 案の定というか、それから並んで座ったところで、またも無言になってしまうわたし達。
 互いに、何か言いたいことがある様で言葉が見つからない。……そんな所だろうか。
 ……ただそれでも、お互い頭に思い浮かべてる出来事は一つなんだろうけど。
「…………」
「…………」
「……あのね、みゆちゃん」
 しかし、それから一体どうしたものやらと頭を抱えそうになった所で、柚奈の方からぽつりと言葉を切り出してきた。
「う、うん……」
「私ね……。今までは茜ちゃんにだったら、少し位はいいかなって思っていたつもりだったんだけど……」
「……えっと、やっぱり気付いてたの?」
 そして、いきなりトボける余地すら無い核心に近い所から切り込まれて、躊躇いがちに確認するわたし。
「…………」
 すると、それに対して柚奈は言葉も頷く動作もなく、じっと前を向いた沈黙で肯定してくる。
(やっぱり、そうだったかぁ……)
 そりゃまぁ、ちょっとトイレで席を外したにしては不自然な時間だもんね。
 いくら帰りは茜とバラバラで戻ったとしても。
「だって、茜ちゃんは一番大切な友達だし、みゆちゃんと結ばれる為にいっぱい協力もしてもらったから」
「…………」
「……でも、ダメみたい。私、生まれて初めて茜ちゃんのことを憎らしいと思っちゃった……」
 それから、視線はわたしの方へ向けないまま、膝の上に乗せた両手をわなわなと震わせながら告白してくる柚奈。
 ……その表情には、ひと言ではとても表現出来ない複雑な感情を映していた。
「柚奈……」
 もしかして、一部始終……とはいかなくても、見てたのかな?
 ……なにせ、あの更衣室に秘密の覗き穴があるのをわたしに教えたのは柚奈なんだから。
「それでも、今まで大好きだった茜ちゃんにそんな気持ちを感じてしまった事もショックだったから、昨日の晩は頭を整理しようとしたんだけど……」
「でも……。考えれば考えるほど心がもやもやして、胸もチクチクと痛んで……」
「…………」
「今は、私のみゆちゃんは誰にも触れさせたくない」
「……みゆちゃんにエッチなコトしていいのは、この私だけ」
 そして、柚奈はそう締めくくった後でようやくこちらの方を向いてわたしの手を取り、そのまま目を閉じて掌に口付けしてきた。
 確か、その意味は……「懇願」。
「…………」
「……もう、少し前までは見せびらかしたいとか言ってたくせに」
「ごめん、みゆちゃん……それは取り消していいかな……?ワガママだけど」
 そこで、小さく肩を竦めながら返してやったわたしのツッコミに、ようやく苦笑いだけど柔らかい表情を見せてくる柚奈。
「あはは、もちろんいいわよ?……わたしもその方が助かるし」
 それを見て、わたしの方も何だか嬉しくて、笑みを見せながら了承してやる。
 ようやく、今までのノリに戻ってきそうかな……?
「ありがと……。それでね、このもやもやとした気持ちを解消するには、やっぱりこういう誰にも邪魔されない二人だけの時間で上書きするしかないのかなって……」
「……はいはい、分かってますよ。今日は柚奈に付き合うって約束したんだから、好きなだけ……」
 しかし、ここでふと言葉が止まってしまうわたし。
(……こうやって、ただずっと柚奈に身を委ね続けるだけでいいのかな……?)
 まぁ、それでも柚奈の望みは叶えられるのかもしれないけど、でもちょっと不甲斐無さ過ぎる気もする。
「…………」
「……みゆちゃん……?」
 そこでわたしは、昨日の茜やいつぞやに冴草先生から言われた、「柚奈に対してもう少し傲慢になった方がいい」という言葉を思い出す。

『……だから、これからもし柚奈と喧嘩しちゃった時とかあったら、敢えてみゆの方から自分のモノだと意思表示してあげたらいいんじゃない?……あのコはみゆを束縛したいのと同時に、自分もみゆに支配されたがってると思うから』

(そっか……)
 たまには、いいかな?せっかく、茜が色々アドバイスしてくれたんだし……。
 ……それに、ただ受け入れるだけが愛のカタチじゃないよね?
「……柚奈。」
 それから、ひと呼吸を置いて心を決めたわたしは、掴まれていた手を強引に引いて、逆に柚奈の身体を抱き寄せると……。
「え?……んぅ……っ?!」
 初めて結ばれた時以来の久々に、自分から唇を重ね合わせた。
「…………っ」
 やっぱり、自分でするのとされるのでは、気分が少しばかり違う。
 ……というコトを今更思い出す辺り、怠慢だったかもと改めて実感させられてしまうわたしだった。
「みゆ……ちゃん……?」
「……えっと、茜とのコトは今更言い訳するつもりはないけど……」
 ともあれ、やがて唇を離した後で驚いた顔を見せる柚奈に、わたしは相手の瞳を見据えながら自分の想いを伝え始める。
「…………」
「だけど、わたしが唇を許してるのは柚奈だけだから。……あんたにファースト・キスを奪われて以来ね」
「……うん……っ!」
 そして一番言いたかったコトを告白した後に、ようやく柚奈は嬉しそうな笑みを見せてくれた。
(良かった……。これで、取り戻せたかな?)
 ……ならば、あとは仲直りの儀式を交わすだけである。
「それと、もう一つ……」
「え?」
「……今日は、わたしが柚奈を抱いてあげる」
 そう言って、今度はわたしの方が柚奈の手を取ると、手の甲へ誓いの口付けをしてみせる。
 お膳立てされた二人だけの時間は、たっぷりとあるのだから。

6.5-9:独占欲。

「みゆ、ちゃん……」
 何だか不思議な位に、自分の気持ちに変化が起きているのを感じていた。
「ゴメン、柚奈……。わたしの方が欲しくなっちゃったみたい」
 最初は、傷心気味のお姫様の為にちょっといい所を見せてあげようかってつもりだったのに、柚奈が一晩ぶりに見せてくれた心からの笑顔がきっかけで、無性に求めたくなっているわたしがいる。
「……もう、どうして謝るかな?みゆちゃんは私にどんなコトをしてもいいし、何を求めたっていいのに」
「うん……。ありがと柚奈……っていうのも、おかしいかな?」
「んふっ……。おかしいけど……。でも、今は私からもみゆちゃんに言いたい気分だよ」
「……柚奈……」
 それは安心した喜びからか、もう二度と曇らせたくない意思表示なのか、それとも単純にわたしのお姫様の天使の笑みに改めて魅入られたのか、
はたまたそれら全てなのかは分からないけど……。
(もしかして、”愛してる”ってのはこういうコトなのかな……?)
 何かもう、無性に抱き締めたくて仕方が無くなってきたし。
「……んじゃ柚奈、そろそろバスタオル取っちゃおっか?」
 ともあれ、わたしは自らの欲求に従うがまま、手の甲に続けて柚奈の手首へ口付けした後で、相手の瞳をしっかりと見据えて促す。
「う、うん……。それじゃみゆちゃんが脱がせてくれる?」
「……ええ、もちろん」
 それから、珍しく躊躇いの感情を含めながら頷く柚奈の身体に巻き付けられたバスタオルをそっと解放すると、女性らしい美しい曲線美を持つ肢体が
わたしの目の前で露わになった。
「やっぱり綺麗だよね、柚奈の身体……」
 もう、同じ女性としての嫉妬なんて感じるどころか、逆に自慢のタネにしたい様な。
 ……んでもって、「わたしだけのモノだから」って羨ましがらせたりもして。
(ああ、そーいうコトか……)
 もしかしたらこれが、以前柚奈が見せびらかしたいって言ってた気持ちの正体なのかも。
「ありがと……。でも、みゆちゃんだってすっごくキュートだよ?」
 すると、無意識に言葉として出た台詞に柚奈は少しだけ照れた笑みを見せた後で、今度はわたしのバスタオルを外しながらそう告げてくる。
「あはは、キュートですか……」
 まぁ、今となってはコンプレックスを持っていたわたしの体型も、それが柚奈の好みなら結果オーライなのかなって思う様にはなってるんだけど。
「うんうん。特に夏服になって薄着になったから、最近は制服姿のみゆちゃんのうしろ姿を見ているだけで我慢出来なくなっちゃいそうになるし……」
「……というか、実際にトコロ構わず襲ってきてるでしょーが、あんたは」
「んふふっ♪……でも、みゆちゃんだって襲ってくれていいんだよ?」
「もう……。どんな変態カップルよ、それ……」
 ……でも、今どうしようもなくムラムラしてしまっているのは、確かにわたしの方である。
(たまには、わたしだってヘンタイさんになってみるのもいいかな……?)
「柚奈、おいで……」
 それから、互いにバスタオルを取り去って生まれたまま姿になると、わたしは柚奈の体温を直接肌で味わいたくなって、自分から腕を伸ばして抱き寄せていく。
「……あ……っ、みゆちゃん……っ」
「柚奈の身体、柔らかくてあったかい……」
 お風呂上り特有のホカホカとした熱はもう無くなってしまっているけど、むしろその方が本当の柚奈の体温が感じられて逆に嬉しいわたしだった。
「……うん……」
 そして、しばらく全身で柚奈のぬくもりを堪能した後で、今度はサラサラときめ細かいロングストレートの黒髪を撫でながら、前髪へそっと口付けをして
みせるわたし。
(髪は確か……思慕だっけ?)
「え……?みゆちゃん……?」
「……たまには、こういうのもいいんじゃないかなーって、ね?」
 何だか照れくさいけど、でも沢山の言葉を紡ぐよりは、こうやって行動で示す方が自分の気持ちをダイレクトに伝えられる気はする。
(100万回の”好き”よりも、1回の口付け……か)
 それはもう、柚奈はずっと前から実践してきているコトでもあったりして。
「みゆちゃん……」
「柚奈、ちょっと目を閉じてくれる?」
「あ、うん……」
 やがて、髪から額へと続けた後でわたしはそう促すと、今度は瞼の上へとキスするわたし。
「……んふ、そんな所までキスしてくれるんだ?」
「これも愛情表現の一つって聞いたから……。さすがに、直接するわけにはいかないけど」
 込められた意思は”憧憬”だったと思うけど、ともかく、強い信頼関係が無いと絶対に無理な場所なのは確かだった。
「何なら試してみる?みゆちゃんになら怖くないよ、私?」
「……生憎、わたしの方が怖いっての」
 すると、そこで瞳を閉じたままそんな提案をしてくる柚奈にわたしは苦笑い混じりの言葉を返して、今度は鼻先へと矛先を向けていく。
(えっと、ここは……)
 鼻梁もポイントにはなってたけど、普通にちゅーするにはちょっと間抜けな気はする。
 ……と、なれば……。
「……ん……?」
 そこで、わたしは唇の代わりに自分の鼻の先をこつんと触れ合わせると、柚奈がきょとんとした顔で目を見開いてきた。
「いや、これで鼻ちゅー……なんてね」
 うわ、余計に間抜けだったかも……。
「あはっ、もうどうしちゃったの?今日のみゆちゃん……」
「……まぁ一応、わたしも色々と勉強してるんで」
 きっかけが昨日茜からされたり教わったコトの受け売りなのは柚奈にナイショとしても、せっかくだったので、昨晩は勉強もしないでネットで復習していたりして。
 ……多分、お母さんが聞いたら何てふしだらな娘だろうと嘆く……心配は無いか、うん。
「それは、私の為に……?」
「他に誰がいるってのよ?……ほら、次は”誘惑”しちゃうから」
 それからわたしは柚奈の手を取り、耳元へと口元を寄せて、唇で何度か挟み込む様にキスした後で柔らかい耳たぶを甘噛みしていく。
「ん……ぁっ、みゆちゃ……」
「くすぐったい……?思えば席が隣だった去年とか、いつも不意打ちされてたわよね?」
 まぁ、クラスが離れた今でもそんなに大差は無いかもしれないけど……そういえば、今回はちょうどいい仕返しの機会でもあるのかな。
「あ……んっ、だって、みゆちゃんの耳があまりにも美味しそうだったから……」
「……しかも、わたしが我慢してたら、更に調子に乗ってこんなコトもしてきたっけ?」
 そして今度は柚奈の背中へ回り込むと、肩に手を添えながら首筋へ向けて口付けするわたし。
「はぁ……っ!」
「えっと……ここで強く吸い付いたりするとキスマークが出来るんだっけ?」
 付けてみたい様な、やっぱり自分がされたら困ることはやめておくべきか……。
「……うん、付けてもいいよ?……ううん、みゆちゃんに付けて欲しいの……」
「……柚奈……」
 しかし、そこでこちらの手に自分の手を添えながら柚奈が懇願してきたのを受けて、わたしは吸い込まれる様に再び首筋へ口を付けると、小さな音を
響かせながら強く吸い付いた。
「ん……っ!」
「あ、ごめ……ちょっと痛かった?」
 加減が分からなかったので少し強めにしたものの、柚奈の鋭い反応を見て顔を上げるわたし。
「ううん……。強いくらいの方が嬉しいから……」
「……あらら、キスマークというより、赤い痣みたいになってる……」
 ちょうど、白雪の様な柚奈の肌に赤い花が咲いた様な。
「私はどっちでもいいよ?みゆちゃんが刻み込んでくれたものだし」
「ごめんね……。わたしってば不器用だから……」
「んぁ……っ!ぁ……っっ」
 そこでわたしは、お詫びの印に赤くなった部分をゆっくりと舐めていくと、通過する舌先に合わせて柚奈の身体がぴくんと小さく揺れる。
「……くすぐったかもしれないけど、ちょっと我慢してね?」
「う、ううん……こういうの……すごく嬉しいから……ふぁ……っ」
(柚奈……)
 ……どうしよう。
 どんどん柚奈をめちゃくちゃにしてやりたくなってきてるんだけど……。
「……そう。それじゃ、こういうのはどう……?」
 その滑らかな肌の舌触りと、這わせるたびに肩を震わせながら敏感に反応する柚奈の姿を見て、更にムラムラが強くなってしまったわたしは、欲望の
赴くままに胸元へと手を伸ばした。
「あ……みゆちゃ……んぁ……っっ」
「……柚奈の心臓、すごくドキドキしてる……」
 すると、手のひらに収まりきらない膨らみの柔らかい感触と共に、心臓から大きく脈打つ鼓動がゆっくりと揉みしだくわたしの左手に伝わってくる。
「ん……っっ、だって……。今日のみゆちゃん……いつもと違う感じだから……はぁ……っ」
「やっぱり……らしくない……?」
 だけど、もう止まりそうにはないけど……。
「ううん……。ね、もっと……みゆちゃんの求めるままに……して……」
「……柚奈……っ」
 ほら、しかもこうして柚奈が更に扇情してくるし。
「んむ……っ、はぁ……っっ」
 それから、わたしは振り返ってそう懇願した柚奈の唇を再び奪うと、今度は貪る様に舌を絡め合わせながら、伸ばした指で胸の先端にある薄桃色の
突起を弄り始めていく。
「んふ……っ?!んん、んぅ……っ」
(……あ、もうこんなに固くなってる……)
 柚奈の乳首はくっきりと形が分かるほどの弾力を帯びていて、こねくるたびにぷるんとした感触がわたしの指に伝わってくる。
「んは……ふはぁ……っ、みゆ……んんっ」
 ……そして、その敏感な突起を弄れば弄るほどに、重ねた柚奈の唇から生暖かくて荒い吐息が送り込まれてくるのが、好きな人と肌を重ねて繋がっている一体感の様な喜びを感じて、余計にわたしの指は止まらなくなってしまう。
 しかも、わたしの愛撫にいちいち肩を震わせて感じているのを知らせてくれるものだから……。
「はぁっ、はぁっ、ふぁぁっっ、みゆちゃん……はひ……っっ」
(うおおっ、やっぱり今日の柚奈、いつもに増してかわいすぎる……)
 それに何より、する時もされる時も今までは殆ど柚奈にリードされてきてたから、今日は不思議なくらいに新鮮味と興奮を覚えてしまっているわたし
だったりして。
「ふあ……っ、ん……っ、はぁ……っっ」
(んじゃ、ちょっと調子に乗って摘んでみちゃおっかな……?)
 わたしがされるのは痛いから勘弁してと言ってるのに勝手な話だけど……まぁ仕方が無いよね?
 一応、あとが怖い気がしないでもないけど、それでもいいんだ。……柚奈になら。

 きゅっ

「んきゅぅ……っ?!」
 そして、しばらく指で挟みながら刺激した後で一気に力を加えて摘んだ瞬間、電流でも走ったかの様に柚奈の背筋が大きく反り返った。
「……あ、ご、ごめんっっ、やっぱり痛かった?」
 それを見て、我に返って痛みを和らげようと優しく撫でながら謝るわたしなものの……。
「はぁ、はぁ……っ、う、ううん……。ちょっとびっくりしたけど……凄く感じちゃった……」
 柚奈の方は、息を乱しながらも頬を赤らめながら恥ずかしそうに告白してくる。
「え、ええと……」
(やっぱり、M気……あるのかな?)
 こっちとしても、嬉しい様な恥ずかしい様な……。
「あ、でも……。みゆちゃん……もう、私……」
 しかし、それから上半身の震えを大きくさせながら、これ以上は背筋を伸ばしていられないとばかりに懇願してくる柚奈。
 どうやら、強く摘んじゃったんで余計に敏感にさせてしまったらしい。
「……んじゃ、そろそろ横になろっか?」
「うん……」
 そこで、わたしは柚奈の頬へ軽くキスをした後でそう告げると、ツインベッドの中央で互いの身体を重ね合わせていく。
「みゆちゃん……ん……っ」
「柚奈……」
 それから、まずは手を繋いだまま口付けを交わした後で、喉元から鎖骨へキスしていくわたし。
 ……これは、本番はこれからという欲求の意思表示。
「あは……。こうやって押し倒されると、またドキドキしちゃう……」
「今度は、舌で乳首を気持ちよくしてあげる。……でも、その前に……」
 そう言って、わたしは柚奈の左手を取ると、軽く持ち上げた後で二の腕の部分へ口付けをしていく。
「ん……っ」
 この腕の意味は……恋慕。
 照れくさくてなかなか言ってやれない、「愛してる」って言葉の代わりみたいなもんです、はい。
「……みゆちゃん……」
「んじゃ、いよいよ……と言いたいけど……」
 その後、持ち上げた腕と肩の隙間にある場所が目に映り、ちょっと寄り道でお姫様の脇へと顔を埋めていくわたし。
 確か、脇は例の格言の場所には入ってなかったけど……。
「あ……っ、みゆちゃんそこは……っっ」
「いいから、いいから……」
 柚奈から割とよくイタズラされる場所だけに、ちょっと逆襲しておきますかね。
 ……ってコトで、戸惑う柚奈に構わず、舌を這わせてみるわたし。
「ひっ、やあん……っっ」
「……ん、ちょっぴりしょっぱいかな。もう汗かいてる?」
 シャワーの時には綺麗に洗ってるんだろうけど、特に汗が溜まりやすい場所だしね。
「わ、私でも恥ずかしいよ、そんなトコロ舐められたら……っっ」
「……その恥ずかしい部分をいつも弄ってきてるのは誰だっけ?」
 その柚奈の自分勝手な言い分にわたしは素っ気無くツッコミを入れると、更に舌を伸ばして付け根を深くほじくってやる。
「あひぃん……っっ、み、みゆちゃ……あっ」
「でも、気持ちいいんでしょ……?」
 気持ちいいというより、くすぐったさを凝縮させた様な感じだろうけど。
「う、うん……。みゆちゃんがしてくれるなら……」
「ん……っ、わたしがしてくれるなら……もっとして欲しい?」
「あ、で、でも……そろそろ胸の方も……」
 しかし、そこで遠慮がちに訴えかけてくる柚奈。
「ん……?」
 そこで、視線を柚奈の胸元へ向けてみると、先の桜色の突起が物欲しそうにふるふるさせてる様……にも見えた。
「…………」
「……ふーん、胸がどうしたの?」
 わたしはそれに吸い寄せられる様に形のいい柚奈のおっぱいへ手を伸ばし、ちょっと焦らしてやろうと一番敏感な場所を敢えて避けながら、右と左の
それぞれの乳輪の周りを舌と指で這わせていく。
「……っっ、い、意地悪……しないで……」
「あら、お気に召さなかったかしら柚奈お嬢様?……なんてね」
 ……ああなるほど、これがわたしも飛ばしてるらしい「いぢめて電波」って奴ですか。
「もう……。みゆちゃんにお嬢様なんて呼ばれると……」
「あはは、やっぱり違和感ある?」
 ちょっと、キャラじゃないのは自覚しながら、茜の受け売りをやってみたまでだけど。
「……ううん、ちょっとゾクゾクしちゃったかも……」
 するとそう言って、顔を赤らめながらも嬉しそうな笑みを見せてくる柚奈。
「はいはい、それじゃたっぷり御奉仕しちゃいますよ、わたしのお嬢様?」
 結局、わたしにだったら何でもいいんじゃないの?とツッコミたくはなるものの、今はそれが嬉しかったりもして。
 ……というコトで、わたしは焦らすのをやめると、空いていた左手を相手の手と絡ませ、美味しそうな柚奈のさくらんぼに吸い付いていく。
「あ……っっ!み、みゆちゃん……いい……っっ」
「……ん……おいし……」
 それから、背中を震わせて喘ぐ柚奈の反応と、コリコリと適度に弾力のある感触を楽しみながら、ねっとりと舌を転がしていくわたし。
「はぁ、はぁぁ……っ、んぁぁ……っっ」
「……もう、待ちきれなかったって反応ね。そんなに気持ちいい……?」
「ふぁ……っ、う、うん……気持ちいいよ、みゆちゃん……っ」
(……そういえば、胸へのキスって”所有”だっけ?)
 つまり、こうして「あなたはわたしのモノ」って意志を柚奈の身体に直接刻み付けているってわけだ。
 ……何か更にゾクゾクとしてきたぞ、わたし。
「はぁ、はぁ……っ、んんっっ、だから……ぁ……」
「だから……。もっとして欲しいんでしょ?」
 たとえば、こんな風に……ね。

 こりっ

「あひぃ……っ?!」 
 わたしは柚奈の代わりに言葉を続けた後で、転がしていた敏感な突起を甘噛みしてやると、お嬢様のイメージには似つかわしくない嬌声が二人だけの室内へ響いていく。
「……ふふ、いい声で鳴くじゃない、柚奈?」
 いつもは逆に喘がされまくってる身としては、何だかしてやったりな気分だったり、同時に色っぽい声にドキドキとされられてしまったり。
「うう……っ、恥ずかし……んんっっ」
「……まだまだ、もっといい声を出させてあげる」
 そんな訳で、まだまだ物足りないわたしはそう囁くと、転がす舌づかいはそのままに右手を胸から下腹部の方へ伸ばし……。
「あ……っ、あ……んんあ……っ?!」
 その先にある、わたしと同じつるつるとした土手の先にある花弁へと到達すると、柚奈の腰がびくんと大きく跳ね、生暖かい湿りが指先を濡らしてきた。
「柚奈……もうこんなに……」
 どうやら、触れる前からすっかりと柚奈の花弁は熱を帯びていて、奥から蜜が溢れかけていたみたいである。
「……うう……っ、だって……今日のみゆちゃん、すごく焦らすのが上手いんだもん……っっ」
「一応、わたしは普段柚奈にされてるコトを参考にしてるんだけどね。こんな感じで……」
 ……あと、言えないけど昨日の茜にも大分レクチャーされちゃったし。
 いずれにしても、こういうのは感覚が共有しやすい女の子同士の利点なのかもしれない。
「んんぁっ、みゆちゃ……んん……っ!」
「ほら、こうしたりすると気持ちいいんでしょ……?」
 そして、湿った指先で入り口をなぞる様に愛撫しながら、やがて付け根にある”芽”の部分を擦り付けてやるわたし。
「……ひ……っっ!……そんな……されたらぁ……っっ」
「ん……っ、されたら、どうなるって……?」
 柚奈ほどの指づかいは出来ないのは自覚してるけど、今日は徹底的に攻めてあげる。
 ……だから、全身を痙攣させて感じていても手は緩めない……まではよかったものの……。
「あひっ、もう……わた……はひ……っっ」
「……え……?」
「や……っ、みゆちゃ……は、はぁぁぁぁぁぁ……っっ!!」
 ……しかし、それからわたしが柔らかくて狭い花弁の中へ指先をめり込ませた所で、柚奈は全身を仰け反らせながら絶頂を迎えてしまった。
「ゆ、柚奈……?」
 これから本格的に指で?き回してやろうと思っていたのに……。
「はぁ、はぁっっ、……だって……今日のみゆちゃん、いつもよりいっぱい愛してくれてるから……」
 そこで思わず呆然としてしまうわたしへ、柚奈は恥らいながらも幸せそうな笑みを見せてくる。
「柚奈……」
 ……もう、また更にわたしの心に火を点けてきますか。
「だから……。今日はもっと……甘えてもいい?」
「……もちろん。まだまだこれからなんだから」
 そして、柚奈が続けてきた願いを受けて、わたしは誘われるがまま、気持ちの赴くがままにそう告げると、再び唇を重ねていく。
 わたしの方のムラムラは解消されるどころか、更に強くなってきているワケであって。
「んぅ……っ、うん……」
「……んじゃ、もっと気持ちよくしてあげるね、柚奈……?」
 それから唇を離した後で、今度は胸からお腹の方へと下りていき、おへその前まで来た所で口付けをしてみせるわたし。
 ホント、改めて見るとお餅の様に白くて柔らかい、美味しそうなお腹だった。
「あ……んっ」
「……なんか、頬擦りしたくなる様なお腹だよね……?それと……」
 目の前の小さな窪みを見ていたら、むくむくと悪戯心も湧いてきたりして。
(ここはやっぱり……。えい……っっ)
「やぁんっっ?!み、みゆちゃん、そこはダメだってば……っっ!」
 そこで、欲求に従うままにわたしが舌を捻じ込むと、お腹がびくんと跳ねた後でわたしの頭を押さえてくる柚奈。
 どうやら、相当くすぐったいらしい。
「ん……っ、でも、ダメと言われたら、ますますやりたくなったりしない?」
 これも、柚奈に攻められてる時は散々言われてるコトだしね。
「んひっっ!……う〜〜っ、あとで倍返ししちゃうんだから……」
「…………っ」
(えっと……)
 そろそろ、調子に乗りすぎないうちにやめておこうか……うん。
 さすがにこれは、ちょっと後が怖い……。
「……あはは、ゴメンゴメン。それじゃ、これで機嫌を直してもらおうかな……?」
 そんなワケで、少しばかり嫌な予感がしたわたしは苦笑いを見せて一旦離れると、今度は一旦柚奈の足元まで下りた後で、両手で右足を拾い上げる。
「え……?まさか、今度は足の裏をくすぐったりするの……?」
「もう悪ふざけはしないってば。……こうするの」
 すると、勘違いで戸惑う柚奈にわたしはもう一度苦笑いを見せると、足の爪先に口付けをしてみせた。
「ふぇぇ……っっ、みゆ……ちゃん……?!」
(あ……。これ、なんかゾクゾクしてくる……)
 柚奈の方は困惑してるみたいだけど、好きな人相手なら……悪くない。
「いいから、いいから……ん……っ」
 やがて、口付けだけじゃもの足りない気分になったわたしは、そこから思い切って指の間へと舌を這わせていく。
 それは、自分でも不思議な位に躊躇いが無くて、まるでわたしの本能が欲している様な衝動だった。
「……っっ!そ、そんなトコロまで……」
「気持ち悪い……?」
「そ、そんなコトはないけど……でも……っ」
 一方で、柚奈の方は嬉しい様な、困る様なといったフクザツな表情を見せていたりして。
「いいの。……これがわたしの気持ちなんだから」
 それから、親指から小指まで順番に舐め上げた後で、今度は足の甲へキスをすると、更に脛へと続けていくわたし。
「みゆ……ちゃん……」
「柚奈はわたしのモノだけど、わたしも柚奈のモノだから……」
 一連の流れでわたしが示した意思は、崇拝に隷属、服従……。
 強制されるんじゃなくて、自らの意思で証を立てたいと思える相手がいるのって、幸せだと思う。
「う、うん……ぐす……っ」
「……こらこら、泣かないの。今はそういう場面じゃないんだから」
 そこで、感極まったのか声を震わせる柚奈へ静かにそう告げると、今度は両手を使って膝から左右へ押し広げて開脚させた後で、その奥の太腿へキスしてみせるわたし。
「あ……っ」
 そう。ここから先にわたしが柚奈へ示すのは、今までとは逆の支配の意思なんだし。
 ……は、ともかくとして。
「やっぱり柚奈のも、いつ見ても綺麗だよねぇ……」
 それから、視線をお姫様の腿の付け根へと向けた所で、すぐ目の前に広がる恥ずかしくも淫猥な光景に、ごくりとつばを飲んでしまうわたし。
「…………っっ」
 柚奈の秘所は慎ましくも可憐な薄桃色の花びらみたいな形をしていて、しかも周囲や土手の部分にもわたしと同じく一切の茂みが無いので、それが
余計に美しさとイヤらしさを際立たせていた。
 しかも、既に一度絶頂を迎えてその入り口からは溢れた蜜で濡れているのが、また余計に艶っぽさを醸し出していたりもして……。
「やぁん……っ、そんなに改めてじろじろ見られたら、恥ずかしいよ……」
「……よく言うわよ。いつもは恥ずかしがるわたしに構わず、こうやって奥まで見てるくせに」
 そして、わたしは羞恥に震える柚奈の反応に誘われる様に、指で花びらを左右へ広げてみる。
「はぁ……ぁ……っ、広げちゃ……」
 すると、桜色のこれまた綺麗な内壁に、柚奈の分泌した透明の粘液が滴り落ちてくる光景がわたしの目の前に広がってきて……。
(うは、これは……)
 ぶっちゃけ、エロ過ぎというか、もう何度か見ているのにそれでもドキドキが止まらない感じ。
 ……しかも、いい匂いもしてるし。
「み、みゆちゃん……い、一応私にだって、羞恥心はあるんだからね……っっ?」
「……とか言いながら、見られて感じてるんじゃないの?」
「…………っっ」
 どうやら図星らしいのか、顔を上げて意地悪なツッコミを向けてやるわたしから、恥ずかしそうに視線を逸らせる柚奈。
(ホント、可愛いんだから……)
 しかし当然の如く、そういう反応はわたしの情欲を更に掻き立てるだけであって。
 ……というか、同時にヘンタイお嬢様モードの柚奈の気持ちが理解出来てきているのも、何だかフクザツではあるけれど……。
「もう、こんなにぐしょぐしょにしちゃって……。仕方ないから、わたしが綺麗にしてあげる」
 ともあれ、こうなると次に芽生える衝動はただ一つ。
 わたしは柚奈の秘所へ視線を戻すと、途中で挟まれてしまわない様に腿を手で支えながら、伸ばした舌をゆっくりと花弁の入り口へと這わせていった。
「んあ……っっ!あひぃ……っっ」
「……ん……っ」
 その瞬間、大きな衝撃を受けた様に柚奈の腰が震えるものの、わたしは構わず欲望の赴くままに嘗め回していく。
「み、みゆちゃ……はぁぁ……っ、んぁ……っっ」
「ああ……はぁぁ……っっ、こんなの……ふぁぁ……っっ」
(……ん……久々の柚奈の味……)
 甘いとか辛いとかの特有の味があるものじゃないけど、柚奈がわたしの愛撫に感じてくれている証だと思うと、嬉しさや昂揚した気分が、更に更にと
求めさせていく感じだった。
「はぁ、はぁ……っ、みゆちゃん……みゆちゃ……ぁん……っっ」
「…………」
(柚奈……)
 ……しかも、柚奈の花弁を味わっていくのと同時に、普段このヘンタイお嬢様から舐り回されている時の感覚を思い出して、次第に何だか下腹部の方が熱くなってしまうわたし。
「んん……っ、はぁ……ぁ……っっ」
「…………」
(……ちょっとだけ、わたしもしちゃおっかな……?)
 やがて、次第に我慢できなくなってしまったわたしは、こっそりと離した右手を自分の秘所へ当て、指先で軽く弄り始めていく。
「……あ……ん……っっ」
(あ、わたしのもこんなに……)
 触れる前からそんな気はしていたけけど、既にわたしの花弁も熱を帯びて敏感になっていて、中からはぐっしょりと雫が滴ろうとしていた。
(……もう……)
 されてる時だけじゃなくて、している時ですらこんなになってしまうなんて、わたしにとっては本当に愛しくも罪なお姫様である。
「はぁ、はぁ……みゆ……ちゃん……?」
「……柚奈は、気にしなくていいの……」
 それから、舌の動きがぎこちなくなってしまったからか、こちらの変化に気付いた柚奈が顔を上げてくるものの、わたしは制止する様に舌を更に奥へと差し込んでやる。
「んひぃ……っ!み、みゆちゃ……んんあっ」
(……大丈夫、一緒に気持ちよくなろうね……)
 そして、差し込んだ舌に柚奈の粘液をまとわりつかせつつ、生き物の様に?き回してやるわたし。
 ……同時に、自分の秘所を弄る指の動きも合わせて激しくさせていきながら。
「や……ぁっ、そんな激し……っっ」
「ん……っ、柚奈だっていつもこのくらいしてるでしょ……?」
「で、でも……そんなにされたら……ぁ……っ」
(もっと気持ちいい……よね?……というか、これ……すごく……いい……っっ)
 自分と相手を同時になんて気が散ってしまうかと思ったけど、逆にどんどんと気持ちが昂ぶって、ますますわたしの舌と指が貪欲に刺激を求めるようになっていた。
「はぁ、はぁ……ぁっ、みゆちゃん……気持ちいい……よぉ……っっ」
「んぅ……っ、はぁ……っ、わたしも……ぁっ」
 しかも、柚奈の内部を?き回している部分と自分で弄り回す箇所を一緒に合わせたら、何だか快感がシンクロしていく様な心地になるのが、また何とも言えなくて……。
「あ……っっ、らめ……私ぃ……っ!」
(わたしも……できればこのまま、一緒に……っ)
 ……と、願ったのも束の間。
「あひっ、はぁ、はぁぁ……っ、み、みゆちゃん、私……わた……」
(え……?)
「ふぁぁぁぁぁぁぁぁん……っっ!」
 それから更に強い快感を求めようと、わたしの指がクリトリスへ伸びるのと同時に、相手の充血した蕾へ舌先を押し付けて抉り始めた直後、柚奈は全身を大きく震わせながら先に上りつめてしまった。
(……え、ええええ……っっ??)
 今、わたしもいい所だったのに……。
「はぁ、はぁ、はぁ……っっ、みゆちゃん、私また……いっぱい……」
(……う〜〜っっ……)
 肩で息をするほど感じてくれたのは嬉しいけど、あとほんのちょっとだけ耐えてくれれば……。
「…………」
 さて、逆恨みなのは分かってるけど、どうしてくれよう……。
 わたしの方は、この不完全燃焼のままじゃ終われないから……。
「はぁ、はぁ……っ、あのね、みゆちゃん、今度は……」
「……まだ終わってないわよ?今度はお尻を向けて四つんばいになりなさい、柚奈?」
 そこでわたしは、秘所を弄る手を一旦離した後で遠慮がちに何かを切り出してくる柚奈を遮ると、命令口調でそう促した。
「え……?」
「……だって、まだこっちが残ってるでしょ?」
 そう言って、滴り落ちる愛液で濡れた花弁の下にある、小さな窄みの入り口を指先で弄ってやるわたし。
「ん……っっ、そ、そっちも……してくれるの……?」
「柚奈だっていつも弄ってきてるじゃない?自分の時だけは嫌……とは言わないわよね?」
「ううん、嬉しいコトは嬉しいよ……。ちょっと恥ずかしいけど……」
 そして、柚奈は言葉通りに照れた笑みを見せると、わたしの要求通りに体勢を変えて、こちらへ丸くて形のいい、白桃の様なお尻を突き出してくる。
「……んふふ、とってもいい眺めだよ〜柚奈……?なんてね」
 あまりに無防備な格好で、割れ目もお尻の穴も、柚奈の最も恥ずかしいトコロが全て丸見えだった。
「もう……。どうしてそこで私の真似するかなぁ……」
「だって、いつもそうやって言葉で煽ってくるじゃないのよ?今日は逆の立場を味わいなさいってね」
 そこでわたしは、自然と顔がニヤニヤしてくるのを構わずそう告げると、柚奈のお尻の双丘を両手で広げて、その奥で不定期に窄まったり戻ったりしている窪みを間近で観察してやる。
「……もう、恥ずかしがってる割にはモノ欲しそうにヒクヒクさせてるじゃないのよ?わたしに見られて興奮してるの?」
 また、安産型のお尻が時々ふるふると小さく震えたりしている様は、まるでおねだりをされている様でもあったりして。
「や、やぁん……っっ、そんなコト言わないで……」
「ホント、学校だと清楚可憐で通ってる柚奈お嬢様も、わたしの前だとこんなにエッチなんだもんね?」
「ひゃん……っっ?!」
 それからそう続けた後で、ふうっと息を吹きかけてやると、びくんと背中を仰け反らせながらの過敏な反応を見せてくる柚奈。
「んっふっふ、柚奈のお尻だって人のコト言えない位に敏感じゃないの?」
「……うう〜〜っ、みゆちゃんがヘンタイさんみたい……」
「だから、これもあんたがいつもわたしにやってるコトでしょ?……でも、改めて眺めてみるとここも綺麗な薄桃色なのね……」
 何だかいい匂いすらしてくるし、流石と言うべきなのかな?
「……う〜っっ、みゆちゃんだってそうだよ……。思わず舐め回さずにはいられない位に可愛いんだから」
「…………っっ」
(……あ、いや、えっと……)
 しかし、まさかそこでまさかの反撃を受けて、口篭ってしまうわたし。
「何なら、今度見比べてみる……?んふっ♪」
「き、機会があったらね……」
 ……どうやら、やっぱりヘンタイ勝負じゃとても柚奈お嬢様には適いそうもなかったりして。
(……おっと、それより忘れる所だった……)
 ともあれ、すぐにでもお望み通りに可愛がってあげたいのは山々なものの、その前にすべき事を思い出したわたしは一旦手を離すと、柚奈の脇腹に
ソフトタッチで指先を這わせながら、背中へと視線を移動させていく。
「ん……っ?!みゆ、ちゃん……?」
「慌てないの、柚奈……。まだ、伝えなきゃならない気持ちが残ってるから……ね?」
 そして、戸惑う顔で振り返る柚奈へそう告げると、背中を覆うサラサラの黒髪を横にやった後で、抱きすくめながらその中心部へキスするわたし。
「はぁ……っ、あ……っっ」
 実は、これが柚奈に四つんばいになってもらったもう一つの理由だった。
 ……ここを含めて、まだ少しだけ口付けすべき場所が残っていたワケで。
「くすぐったい?……けど、もう一箇所だけ我慢してね?」
「…………っっ」
 続けて、わたしはそのままゆっくりと舌を這わせながら再び腰の方へと下がっていき、やがて骨盤の上辺りまでやってきた所で、再び抱きしめながら
口付けをしてみせる。
「……一応、これでひと通り……かな?」
 最後に示したのが”束縛”ってのが、ちょっと意味深だけど……。
 ……でも、それが柚奈の望みで、わたしの負う責任なんだよね。
「みゆちゃん……」
「これで、後は欲望の赴くままに……ってね。……覚悟しなさいよ、柚奈?」
 それから、わたしはそう告げた後で更にお尻の方へ舌先を伸ばして、柔らかい膨らみを軽くくすぐりながら、中心の裂け目へ向かって這わせていく。
「あ……はぁ……っっ、みゆ……ちゃ……んあっっ?!」
 やがて、その舌先が一番奥にある薄桃色の窪みへと触れた瞬間、小刻みに震えていた柚奈の身体が大きく反り返った。
「……ちょっとだけ寄り道したけど、もう離さないから……」
 そして、わたしのお姫様へそう告げた後で、欲望の掻き立てるがままに柚奈の窄みの皺に沿って舌を這い回らせてゆくわたし。
 ……柚奈がいつもしてくれているみたいに、ソフトタッチでくすぐる様に触れたり、時には抉る様に舐めたりして、大胆かつ執拗に……。
「あひっっ、ふぁぁっ……んあ……っっ!」
「ん……っ、気持ちいい、柚奈……?」
「う、うん……みゆちゃんにそんなトコロを舐めてもらってるってだけで……私……っっ」
「……わたしも……んっ、こうしてると……凄くドキドキしてくる感じ……」
 いつも柚奈にされてる時も、何だかんだで感じまくっていたけど、している側の今も同じ位に興奮しているわたしがいる。
 ……多分、実際に肌が感じてる刺激以上に、精神的な要因が凄く強いんだと思う。
「ひんっっ、みゆちゃ……そんなに……はぁぁっっ」
「……柚奈……ん……っっ」
 柚奈もいつも言ってるけど……やっぱりある意味最大の愛情表現だよね、これ。
 何か、いつまでも舐めていたくなるような……。
(……ううん……)
「みゆちゃ……気持ち……いいよぉ……っっ」
(もう、柚奈ってば……)
 ……そんなコト言われたら、入り口を舐め回すだけじゃなくて、思い切って舌先をねじ込んでみたくなっちゃうじゃないのよ……。
「ふぁっ?!あ……あぁ……っ、そんな……ほじっちゃ……ひぃんっっ」
 それから、わたしがそのまま躊躇い無く実行すると、甘い声をあげて腰を震わせていくお姫様。
「……んん……っ、んはぁっっ、はぁぁ……っっ」
「…………っ」
(……あ、わたしも……また……)
 そして、そんな柚奈を見ているうちに、わたしの下腹部が再び熱くなっていく。
 先ほどは不完全燃焼で中断しちゃってたけど……。
(……そろそろ続き……やろうかな……?)
 意識すればするほど、だんだん我慢できなくなったわたしは、右手を再び自分の秘所の入り口へと宛がうと、ぬるぬるに湿った感触が指先を迎え入れてゆく。
「……んぅ……っっ」
(あ……もうこんなに……ぃっ)
 さっきと同じ様に、柚奈に伝わっている自分の舌づかいの感触が頭の中でも再現されているからだろうか、まるでわたしも同時にされているかの様に
愛液が溢れ出していた。
「はぁ、はぁ……っ、みゆちゃん……ああん……っっ」
「……んん……っ、柚奈……もっともっとしてあげる……はぁ……っっ」
「あひ……っ、う、うん……もっと……ほじくってぇ……っっ」
(……これ……。やっぱり、気持ちいい……)
 柚奈のお尻の穴へ顔を埋めて舐め回しながら、こんなにクレパスを濡らせて自慰行為に耽っているなんて……。
 ……これ以上のお下品な行為は無いって位なのに、何故か逆にゾクゾクと気分が昂ぶり続けてしまうわたし。
(やっぱりわたしにも、ヘンタイさんの因子があるのね……)
 もしくは、この愛しのヘンタイお嬢様に染められてきた証拠なのかもしれないけど……。
「んひっ、はぁ、はぁぁ……っ、み、みゆちゃん……私……」
(……んあっ、わたしも……もうすぐ……)
 ともあれ、夢中で弄り続ける中で自分の絶頂も近いことを悟ったわたしは、ラストスパートをかけようと、シーツの上に膝を付いた左手の指先で柚奈の
花弁を弄り始めていく。
「んぁ……っっ、らめ……そんな同時に弄られたら……ぁっ」
「……んっ、いいのよ……何度でも……」
 だけど、今後こそ一緒に……っ。
「はぁ、はぁっっ、はひぃ……っっ」
「んん……っ、ほら、またイキたいんでしょ……?」
 そう言って、柚奈のクリトリスを軽く弄りながら、窪みの入り口を激しく左右に掻き回していくのと同時に、わたしの背筋にも痺れる様な快感の波が
押し寄せて……。
「やっ、み、みゆ……あひっ、ひぃ……っっ」
(あ……くる……きちゃう……っっ)
「みゆちゃ……んぁぁぁぁぁっっ?!」
「…………っっ!」
 舌先を柚奈の窪みの深くへ一気に捻じ込むのと同時に、わたしも指先をぐちゅぐちゅに濡れた蕾の部分へと押し込んだ所で、二人は同時に絶頂を迎えていった。
「はぁ、はぁ……はぁ……っっ」
「……はぁ、はぁ……っっ」
「あは……。恥ずかしかったけどすっごく気持ちよかったよ、みゆちゃん……」
「う、うん……わたしも……」
 それから、唾液の糸を引かせながらお尻からようやく顔を離した所で、肩で息を整えながら嬉しそうな笑みを見せてくる柚奈に、照れくささを感じながら頷くわたし。
 ……ただ、ちょっとヘンな手癖がついてしまわないかは心配だけど。
「…………」
「……ね、みゆちゃん。今度は二人で……しよ?」
 ともあれ、ここらでそろそろ小休止……と思ったのも束の間、今度は身を起こした柚奈が瞳をとろんと潤ませながら、わたしに覆い被さってきた。
「え……?」
「私、今度はみゆちゃんと一つになりたいから……」
 ……どうやら、柚奈の方は疲れるどころか更に火が点いてしまったらしく、そんな言葉と共にわたしの手を取りながら口付けしてくる。
(……柚奈……)
 何だか底なしの展開になりそうな予感がして、少々戸惑いは感じるものの……。
「う、うん……」
 ……だけど、こうやって柚奈から求められたら断れるはずもなく、唇が離れた後で手を引かれるがまま頷き返すわたし。
 確かに、これはやっぱり外せないだろうしね。
「それじゃ、足を広げてくれる……?」
「……こ、こんな感じ……?」
「うん……。そのまま……」
 それから、促されるがままわたしが膝を折りながら両腿を広げると、柚奈も開脚して挟み込む様に距離を詰めてくる。
「あは、こうしてるとお互いのが丸見えだね……♪」
「……も、もう……。どうしてそういうコト言うかな……」
 ただでさえ、これってすごく恥ずかしいってのに、その上お互いの花弁は既にぐっしょりと濡れて準備万端状態なワケで……。
「ん〜。何ていうか、嬉し恥ずかしって感じだから?」
「もう、はしたなくてよ……お嬢様?」
 でも、確かにドキドキはしてくるけど……ね。
「……ふぁ……っ?!」
「ん……ぅ……っ!」
 やがて、柚奈とわたしの花弁が口付けを交わす様に触れ合った瞬間、ゾクゾクっとする様な快感が全身を走り、お互いにびくんと背中を反らせてしまう。
「んふっ♪……とうとう繋がったね、みゆちゃん……?」
「う、うん……。やっぱり、恥ずかしいけど……」
 ……というか、ただ触れるだけじゃここまで過敏にはならないとは思うものの、何せこれは精神的な刺激があまりにも大きいから……。
「うふふ……。それじゃ……いくよ、みゆちゃん……?」 
「……うん、柚奈……きて……」
 そして、しばらく触れ合った余韻を味わった後に、柚奈がゆっくりと腰を動かしてきたのを受けて、わたしも合わせてお互いに擦り合せる様に動かし始めてゆく。
「あ……はぁ……っっ」
「ふぁ……っ、はぁぁ……っっ」
(……やっぱり……これ……すごい……っっ)
 お互い既に濡れそぼった花弁が絡み合うたびに、ぐちゅぐちゅと愛液が混ざり合うイヤらしい音が響き、更に恥ずかしさと、それ以上の何とも言えない興奮で、頭が真っ白になりそうになるわたし。
「はぁ、はぁ……っ、みゆちゃん……みゆちゃん……っっ」
「んぁぁぁ……っ、ゆいなぁ……っっ」
(こんな白昼から……ホテルでお互いの一番恥ずかしい部分を擦り合わせて喘ぎ合っているなんて……)
 なんて背徳的ではしたなくて……なんて素敵なんだろう。 
 ……ついでに、最初はなかなか上手く行かなかったものの、最近は回数も繰り返してコツも分かってきていて、互いの気持ちいい所を刺激し合うのが
スムーズになってきてるし。
「ふぁ……っっ、みゆちゃん、そこ……いい……っっ」
「柚奈……こそ……ああんっ……当たってるぅ……っっ」
 ほら、こうしてクリトリスを擦り付け合うのだって狙って出来る様になったし……。
「んぁ、はぁぁ……っっ、なんだか溶けちゃいそう……っっ」
「う、うん……。ホントに柚奈と一緒になってる……感じ……っ」
 ……それに何より、柚奈との愛の営みの実感を感じられるのが嬉しかった。
 ある意味、女の子同士の特権とでもいいますか。
「ああんっ、んん……っっ!」
「ゆいな……はぁ……っ、柚奈ぁ……っ」
 ……だけど、こんな気持ちにさせられるのは、ただ一人だけ……だよね?
(…………)
「……はぁ、はぁ……っっ、ね、みゆちゃん……手……」
 やがてそれから、互いに夢中になって擦り付け合う中で不意にわたしの手を求めてくる柚奈。
「んあっ、あ……っ、……え、こう……?」
「うん……」
 そこで、わたしは相手の手に近い左手を差し出すと、柚奈は優しく取った手首を口元へ近づけ、少し曲げた指先へ口付けしてきた。
「…………っっ」
(……あ、そういえば手の方の指先がまだ残ってたっけ……?)
 確か、その意味は……”賞賛”。
「……柚奈……」
 今日のわたしの愛情行為に対して、これが柚奈が返してくれた応えというコトだろうか?
「んふっ♪……ここで先に言っておくけど、みゆちゃんありがとね?……そして、愛してる……」
「……っっ、わ、わたしも……愛してるから……っっ」
 そして……。
「うん……ぁっ、はぁぁぁぁ……っ、み、みゆちゃ……っっ」
「ふぁぁ……っ、柚奈……ゆいなぁ……っっ」
 互いが贈った「愛してる」という言葉で何かが解き放たれた様に、わたし達の求め合う動きが加速して、その快感が何倍にも増していく。
 それは、擦り付け合う秘唇がジンジンと痺れる様な感覚。
「んぁぁっ、愛してる……愛してるからぁ……っっ」
「う、うん……っっ、わたしだって……負けないくらいに……っっ」
(あ……きちゃう……また……)
 ……だけど、そんな蕩ける様な快感はとても長く受け止め続けられるものじゃなくて。
「はぁ、はぁ……っっ、みゆちゃん……私……もう……っっ」
「わっ、……わたしも……だから……一緒にぃ……っっ」
 それから程なくした後で、頭がぼやける程の快感が全身を駆け抜けたかと思うと……。
「ん……っっ、み、みゆちゃ……んぁぁぁぁぁ……っっ!」
「ゆ、ゆい……はぁぁぁぁぁ……っっ!」
 ……互いの望み通りに、わたし達は深く繋がり合ったまま、再び身体を大きく震わせながら同時に絶頂を迎えた。
「はぁ、はぁ、はぁ……っ、ホントに……一緒だったね……」
「……ん……っ、こういうのって……いいよね……」
 そして、ぐったりとシーツの上へ仲良く並んで倒れ込んだ後で、汗を滲ませながら満足感で微笑みあうわたし達。
 ……ただ、ちょっとだけ気まずいのは、シーツに染みを作ってしまったコトだけど……まぁ、気にしてたら何も出来ないんだから、仕方が無いよね……?
(ふぅ……ともあれ、これでひとまずはひと区切り……)
「…………」
 と思いきや……。
「……んふっ♪でも、今日はまだまだ出来るよね、みゆちゃん……?」
「ち、ちょっ……んう……っ?!」
 それから、文字通り呼吸を整えた程度の時間を置いた後で、柚奈が不意に言葉を続けてきたかと思うと、再びわたしの上へ覆い被さりながら問答無用で唇を奪ってくる。
「ほら、みゆちゃんも私のを弄って……」
 続けて、わたしの手を自らの熱くてぬかるんだ秘所へと導いてくる柚奈。
「ち、ちょっ……ゆい……んぁ……っっ」
 その強引さに戸惑う間もなく、今度は柚奈の指先がわたしの花弁へと伸びて……。
「ん……っっ、ね、今度はキスしながら、このまま一緒に……」
「……う、うん……はぁ……っっ」
 あっという間に、第2ラウンドが始まってしまった。
(……いや、その前のわたしが柚奈を攻めていたのを含めると、一体何ラウンド目になるんだっけ?)
「ちなみに、みゆちゃんが先にイッちゃったら、今度は攻守交替だからね♪」
「え、ええええ……っっ」
 しかし、そんな埒も無いコトを考える間も無く、本気モードに入ってしまったヘンタイお嬢様は、小悪魔っぽい笑みを見せながらわたしにそう告げてくる。
(もしかして、今からが柚奈のターン……?)
 ……どうやら、行き着く先はまだ遠いみたいだった。

6.5-10:恋人同士。

「……う〜っ、さすがに……もう限界……」
 やがて、お互いが汗だくになるまで求め合った後、わたしは絶倫お嬢様と身を寄せ合いながら、ぐったりと純白のシーツの上へ身を沈めていた。
「あはは、昨日と同じくらい身体を動かしちゃった感じだね〜?」
「……もう、いくら想うトコロがあったからって、張り切りすぎ……」
 あれから当然の如くというか、攻守が入れ替わった後のわたしは、柚奈にしたコトとほぼ同じ行為をリプレイされて……早い話が、ヘンタイお嬢様の舌と指で全身くまなく可愛がられ尽くしましたとさ。
 ……勿論、キスだって全部の箇所にってのも言うまでも無く。
(というか、今日は二人で一体何回イッちゃったんだろう……?)
 正直、思い返すのも億劫というか、互いに夢中になって擦り合わせていた時はまだ明るかったのに、カーテンの隙間から覗く外はもう薄暗くなっていた。
 とりあえず、シャワーを浴びたい気もするけど、今はまだ動く気力が沸かなかったりして。
「んふふっ、でもこれでようやくすっきり出来たよ〜。ありがと、みゆちゃん♪」
「……それは何よりだけど……ふぁぁぁ……っ、わたしは眠くなってきちゃった……」
 それから、繋ぎ合わせた手とは別の指でほっぺを突っついてきながら満足げな笑みを見せる柚奈に、欠伸交じりの呟きを返してやるわたし。
 ……下手したら、このまま話をしている間に眠ってしまいそうである。
「んじゃ、このままお泊りしちゃう?実は一泊で借りてるから、私は全然OKだよ〜?」
「それ以前に、明日は学校だっての……もう……」
 ついでに、いくら公認の仲だからって、ホテルから朝帰りなんて親が泣くわよ。
「あはは、そうだねぇ……。んじゃ、夏休みに入ったらまた来よっか?」
「……やれやれ、味を占めちゃいましたか、柚奈お嬢様……」
 わたし的には、柚奈の部屋とそんなに環境は変わらない気がするけど……。
「だって、ここなら本当に私達だけの空間だしね?」
 しかし、そんなわたしに対して、心から嬉しそうな顔でそう告げてくる柚奈。
「…………っっ」
(ああ、そういうコトか……)
 確かに、他の人の気配を全く気にせずに済むとなると、こういう時だけになるんだっけ。
 ……桜庭家にお邪魔する時って、何だかんだで小百合さんや芽衣子さんに絡まれる事も少なくはないから、常に柚奈の独占状態とは限らないのよね。
 まぁ、家族ぐるみで迎え入れて貰えているのは、わたしにとって凄く有り難い話だけど、柚奈の本音の方は……。
「…………」
「…………」
「……しかし、案外変わらないようで変化してるもんだね……」
 それから少しの間を置いた後で、むっくりと上半身を起こしながら、独り言の様に呟くわたし。
「ん?なにが……?」
「……いや、あの日を境にした日常が、ね」
 一応、実際の日常生活そのものが大きく変わったってワケでもないんだけど……。
「だって、今の私達は”恋人同士”だもんね?んふふっ♪」
「あはは……。改めて言われると、何だか照れくさいけど……」
 でも茜の言葉通り、今は親友と恋人ではっきりと境界線が出来てしまっているみたいだった。
 ……つまり、それが変わってしまった部分の根源であって。
「…………」
「……ね、柚奈……。茜のこと、まだネガティブな気持ちを持ってる?」
「ううん、みゆちゃんのお陰で、そういうモヤモヤは全部晴れちゃった。あはは♪」
 そこで、ふと茜の顔が脳裏に過ぎったわたしは、言葉を選びながら遠慮がちに水を向けてみると、柚奈は晴れやかな表情を見せながら笑い飛ばして
しまった。
「ああ、そうですかい……」
 ……どうやら、昨日の件に関するモヤモヤは、今日一日で完全に発散してしまったらしい。
 確かに嫌な気持ちを上書きしてしまうには、これが一番てっとり早いんだろうけど。
「……それにやっぱり、嫌いになんてなれないよ。茜ちゃんは私にとって一番のお友達なのは変わらないんだから」
「まぁ、そうだよね……。わたしよりも付き合いは長いんだし……」
(……なんたって、茜は眠れるお姫様を目覚めさせた王子様なんだから)
 ただ、わたしに手を出して柚奈との仲を悪化させる事で、おそらく残っていた未練を清算しようとしていたっぽい茜にとっては、それが幸か不幸なのかは分からないけど。
(まったく、茜だってしょうもないコトしてんじゃないのよ……)
 勝手に思い込んで暴走しちゃうって意味では同類なんだよね、わたし達って。
「……でも、せっかくだから、ちょっとしたイタズラでも企んじゃおっか?」
 しかし、それからしんみりとした気分になりかけた所で、わたしに続いて上半身を起こしながら、柚奈が何やら思わせぶりな笑みを見せてくる。
「イタズラ?……何か仕返しでもするつもりなの?」
「んふふっ♪こういうのはどうかな……みゆちゃん?」
 そして、思わず目をぱちくりとさせてしまうわたしに、ひそひそと企みを耳打ちしてくる柚奈。
「……え……?本気……?」
「うん♪卒業前の最初で最後の思い出作りに。……ちょっと面白そうじゃない?」
「いや、まぁ……うん……」
 何とも大胆だなぁ……とは思うけど、確かに時期さえ間違えなきゃ面白いサプライズなのかな?
 ……一応、わたしとしても茜に一矢報いてやりたい気持ちも無いわけじゃないし。
「んじゃ、決まりだね♪んふふ〜っっ」
「……もっとも、3人で無事に卒業を祝える状態になればって条件付きだけどね」
 実際、そこまで悲観してるつもりではないものの、ただ心理的に皮算用はしたくないってのが本音だったりして。
「大丈夫♪みゆちゃんには私が付いてるし、茜ちゃんも目標が出来たみたいだし」
「……目標って、先生になってみればってアレ?」
「うん……。私がなってみれば?って言った時の茜ちゃんの目、真剣だったから」
「……なるほどね。となれば、茜の志望先は教育学部のある大学……かな?」
 水泳選手としての自分を客観的に見て、その道を究めるのは早々に諦めていた反面で、だったら何を目指すべきかと悩んでいたみたいだけど、最初は下心ありで柚奈を指導していくうちに、いい落とし所を見つけちゃったってわけか。
 ……ちょっと皮肉といえば皮肉めいてるけど。
(やれやれ、茜にも先を越されたか……)
 わたしも方も早く悟りを開かないと、柚奈にまで悪影響が……。
「…………」
 あ、柚奈と言えば……。
「ん?どうしたの、みゆちゃん?」
「……いや、そういえば結局、柚奈の方は真剣に考えてたの?……あの茜にたきつけられてた、研究者への道」
 そこで、続けて7月の初日の登校時に茜と交わしたやりとりを思い出したわたしは、遠慮がちに水を向けてみる。
「研究者って……IPSのこと?」
「うん……」
 正直、天才肌の柚奈にはぴったりだと思うし、目指す理由もあまり大きな声じゃ言えないとしても、しっかりとはしてるんだよね。
 ……もしそうなったら、進路は別々なってしまうのは否めないけど。
「あはは、確かに興味を引かれたのは確かだけど、でもみゆちゃんと一緒の時間を犠牲にするまでにはね〜」
 しかし、そんな複雑な心境で訊ねた質問に、学園トップの秀才を誇るお嬢様はあっさりと否定してしまった後で、わたしの肩へと身体を預けてきた。
「……やっぱり柚奈って、刹那的よねぇ……」
 ホント、そういう所も天才肌の所以なんだろうなーとは思うけど。
「そうじゃなくて、欲張っていないだけだよ。見えない将来よりも、手の届く身近な幸せってね」
「……柚奈……」
「だから、あとの全ては結果論でいいんじゃないかなって。みゆちゃんと一緒にさえ居続けられるなら、私の方はとりあえず幸せだし♪」
「…………」
「そっか。確かにそんなもんよね……」
「うんっ♪」
 だったら、わたしもそれでいい。
(……やっぱり芯が強くてブレないわね……このお姫様は)
 ホント、幸せモノなエトランジェもいたものである。
「…………」
 ……だけど、その優柔不断で頼りないエトランジェも、少なくとも一つだけ成長した部分があった。
「……さて、それじゃそろそろシャワーでも浴びて帰り支度する?」
 それから、話もひと区切りした所で、静かにお開きを切り出していくわたし。
 名残は惜しいけど、そろそろ家へ帰らなきゃならない時間である。
「うん……。でも、あれだけ愛し合った後だから、やっぱり余計に別れが寂しいよ……」
 すると、拒否こそはしなかったものの、わたしにもたれかかったまま、握る手を強めて甘える様に溜息を吐いてくる柚奈。
(……はいはい、ちゃんと分かってるわよ……)
 なぜなら……。
「……誰も、ここでお別れとは言ってないでしょ?場所を変えるだけよ」
 そして、そんなワガママお嬢様へわたしは敢えて素っ気無くそう告げると、繋いだ手を引き寄せて抱きしめてやった。
「……あ……」
「だから、さっとシャワーを浴びた後で、わたしと一緒に帰りましょ。柚奈?」
「……うんっ♪」
 そう……。
 果報者のエトランジェは、自分が幸せモノだと自覚しているのだから。

                    *

 変わらない様で、少しだけ変わった日常。
 そして、変わった様で、変わらない日常。
 雨上がりの翌日、芽生えた変化に最初は何だかんだで鈍感だったわたしだけど、でも自分の心を解放したコトで燻っていた想いの火種は確実に着火
していて……特に最近は、それがはっきりと自覚できる形で現れる様にもなっていた。
「はぁ〜〜っっ……疲れたよ〜。みゆちゃん……」
「あはは、お昼前の体育はキツいわよねぇ……」
 プール開きのお昼休み、並んで座った校庭のベンチで広げたお弁当を全然食べ進まず、気だるくぼやきながらもたれかかってくるお嬢様に、背中を
貸してやりながら苦笑いを見せるわたし。
 茜に訓練してもらったお蔭で泳げるようになったとはいえ、水泳はああ見えて体力の消耗が激しいだけに、元々運動が苦手なわたし達にとってキツい
授業であるコトは間違いないわけで。
「私……。一応はクラスだといい子にしてるつもりだけど……。体育の後だけはダメ……」
「んじゃ、4限目で良かったじゃない?もっと早ければ教室で居眠りしてたわよ?」
 まぁ、今更柚奈が授業中に転寝してたからって、殆ど影響なんて無いんだろうけど。
「う〜〜っ……。でも、せっかくみゆちゃんと一緒のランチタイムなのにぃ……」
「確かに、お弁当はちゃんと食べといた方がいいわね。午後からバテちゃうし」
「……んじゃ、みゆちゃん食べさせてぇ……」
 すると、予想通りというか期待通りというか、甘えた声をあげながら、ひな鳥の様にわたしの前で口を空けてくる柚奈。
「はいはい……。かりこまりましたよ、お嬢様?」
 もちろん、こちらとしても往来だからと今更恥ずかしがって断る理由なんてないので、素直に頷いて柚奈の方へ向き直るわたし。
 ……いや、それどころか……。
「えへへ♪そうこなくっちゃ」
「んじゃ、定石に従って玉子焼きからいくわね?……はい、あーん……」
「あーん♪……」
 そこで、わたしはお弁当箱から厚焼き玉子を箸で取ると、嬉しそうな顔で待つ柚奈へ差し出すフリをした後で、自分の口へぱくっと放り込み……。
「…………」
「あれ?……ああっ、みゆちゃんずる……ん……っっ?!」
 そして、こちらの行動に気付いて抗議に身を乗り出してきたタイミングを狙って、わたしは両手で柚奈の頬を固定すると、ひと目もはばからずに
口移しをしてやった。
 ついでに、ほんのちょっとだけべろちゅーもしちゃったりして。
「……っっ、みゆ、ちゃん……」
「……ま、せっかく恋人同士なんだから、この位はやってもいいんじゃない?ってね」
 すると、わたしの方からこんな大胆なコトをしてくるとは思っていなかったのか、珍しく驚いた顔を見せる柚奈に、片目を閉じてそう告げてやる。
 もっとも、これはバレンタインの時に柚奈にされたリプレイなんだけど。
「でも……いいの、みゆちゃん?結構見てた人いるかも……」
「あはは、別に今更、困る話じゃないしね?」
 去年だったら、既成事実を作ろうと狙ってくる柚奈から全力で警戒したり、逃げていたんだろうけど、今は逆にわたしの中で芽生えてしまった独占欲が
日に日に強くなってきているのだから、どうにも仕方が無い。
 それをはっきりと自覚させられたのはこの前のお休みの時だし、一応はまだ戸惑いが残っていないのかといえば、嘘にもなるのかもしれないけど……。
「あはっ♪んじゃ、残りの全部も口移しでお願いね〜♪」
「えー……。全部は面倒くさいからパス……」
 さすがに何度もやるのは間抜けすぎる……というか、ふと周囲を見渡したら、ちらちらとこちらを覗いてる人も少なからずいるっぽいし。
(見られるのは別にいいけど、見世物になってしまうのはなぁ……)
「う〜〜っ、みゆちゃんが恋人のくせにつれない……」
「……というか、わたしもご飯食べなきゃならないんだからね?」
 さっきから柚奈に付き合って、全然食が進んでない事でもあるし。
「んじゃ、みゆちゃんには私が食べさせてあげる〜♪」
「もう、だからそんなコトやってたら日が暮れるっての……」
「だって、みゆちゃんはもう一度やってるんだから、不公平じゃない?」
「……はいはい。んじゃ、ひとつくらいなら……」
「うんうんっ、それでこそ私のみゆちゃんだよ〜♪」
「もう、何言ってんだか……」
 ……それでも、とっくに覚悟は決めてるんだし、今が幸せなんだから、それでいいかなって……ね。

*******おわり*******

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