anonより 「恋のばるぷんて・ジャム」 あゆあゆSide

 

 

「ね、あゆちゃん。」

 .......きっかけはそんな秋子さんの台詞。秋子さんは相変わらずにこにこしながら、両手で小さな小瓶をボクに見せる様に持っていた。

「新しいジャムを作ってみたんだけど食べてみない?」

 そう言って、紅茶を飲んでいたボクの前に、ことりという小さな音と共に小瓶が置かれる。

「う.......」

 それを見て椅子に座ったまま思わず一歩後ずさりする。以前も確か赤色の不思議なジャムを食べさせられたことがあったけど......今回もそれに負けず劣らずの怪しい色のジャムだった。7色の色のジャムが混ざり合っている様な感じで。

「不思議な色のジャムでしょ?ぱるぷんて・ジャムって言う名前なの。」

 うぐぅ......怪しいと不思議は同義語だったのか。いや、それはともかく.....

「.......ぱるぶんて?」

 ?????

「そう。食べると不思議な事が起こる魔法のジャムなの。」

 魔法?????(汗)

「あの....それをボクに食べてみてと.......?」

「ええ。」

 にっこり笑う秋子さん。

「うぐぅ......」

 その笑顔で何故か働く不思議な強制力。......しまった。今日は仏滅だったのかも。
 ボクは秋子さんから発せられる無言の強制力のままにスプーンを手にとって、軽く一掬いそのジャムを掬ってみる。

「うぐぅ....何かオーラ出てるよぉ......」

 すると、ジャムと同じ色のオーラがスプーンを持ったボクの手から霧のように発生していた。

「大丈夫よ。」

 にっこり。

『................』

 うぐぅ......ボクの本能が危険を告げてる。
 とは言えやっぱり逃げるのも無理.......なぜだかボクの本能が同時にそれも確信していた。

「うん。食べてみるよ......」

 要するに食べるしか道は無いと悟ると、ボクはそう言うと掬ったまま持っていたスプーンを傾けて、一緒に添え付けられていたパンの上に乗せる。

「.........(にこにこ)」

 .......そして、それを手に持った時にちらと覗いてみた秋子さんの表情はとても嬉しそうだった。


 と、その時......

「ただいま〜」

 玄関の方向から、聞き覚えのある少しとろんとした間延びのある声が響いて、その本人がとたとたとこちらに向かって小走りで向かって来た。

「あら、名雪ね。」

 うん......今日は珍しく祐一君より名雪さんの方が早いみたいだ。

「お帰りなさい、名雪。」

 それを笑顔で出迎える秋子さん。

「お母さんただいま〜......あ、あゆちゃん来てたんだ♪」

 名雪さんはそのままキッチンに駆け込むと、そこに居合わせたボクを見て嬉しそうな声をあげる。 .....が、それと同時にボクの手にある怪しい色のジャムが乗ったパンと、その向こうにある小瓶を目にするや否や、

「あ、あの....わたし、疲れているから部屋で休んでるねっ!」

 と即座にその場を立ち去ろうとくるりと踵を返す。

「うぐぅ......見捨てないでよぉ〜っ」

 それを涙目で抗議するボク。

「あはは。冗談......だよ〜」

 ......その割には顔が思いっきり引きつってるんですけど。

「名雪もお茶にしますか?」

 名雪さんもしぶしぶテーブルに付いた所でそう促す秋子さん。それを聞いて名雪さんばぎくっとした様な表情を見せて「あ、わたしお腹空いてないからお茶だけでいいよ〜」と慌てて取り繕う。
 ......裏切り者。

「......ゴメンね、あゆちゃん......」

 そんなボクの心の声が届いたのか、キッチンで名雪さんの分のお茶の準備している秋子さんに聞こえない様に小声で謝ってくる名雪さん。

「......今度イチゴサンデーおごるから。」

 と言い終わらないうちに秋子さんが紅茶を運んできて、向かい合って座っているボクと名雪さんの間の席に座る。そして、

「..............」

 再びじっとボクを見据える。うぐぅ........

『......ホントにゴメンね、あゆちゃん......』

 向かい合った名雪さんの表情から心の涙が見えた.......様な気がした。

『......まぁ、いいかな。』

 それを見て何となく覚悟も決まったボクはそれを口に運ぶ。

「...........」

 やっぱり複雑な味だった(汗)。甘いとか辛いとかそんな言葉では形容できない味。
 不安げにボクを見つめる名雪さんに対して、秋子さんは相変わらず食べてるボクを意味深な表情でじっと見つめている。

『......けどやっぱり.....』

 前回と同じく、やっぱりお世辞でも「美味しい」とは出てこなかった。かといって「不味い」というのも何か違う気がする......つまり感想の言い様が無い、そんな味というのが正解だと思う。

「......あの、」

 それから暫くした後でやっとの事で口を開く。

「はい?」

「秋子さん、このジャムの材料......何なのかな?」

 多分教えて貰えないだろうけど......

「秘密です♪」

 予想通りの答えを即答する秋子さん。
 だけど.....

「......それで、どんな感じかしら?あゆちゃん。」

 その後で予想外の質問をボクに向ける。

「え?」

 そして、秋子さんのその言葉が合図だったが如く.......

「うぐ.......っ?!」

 次の瞬間、ボクの体に異変が起き始めた。

「あ、あゆちゃんっ?!」

 どくんっと言った感じで体の中が弾けるような感覚。体が......熱い.......っ?!

「ふ.....ぐぅ......っ」

 熱い何かがボクの体の中で一点に収束してくる。そして、

「うぐぅーーーーーっ!」

 一気に弾けた。というか実際にぼんっという音があたりに響いた様な気がする.......

「.............」

「あ、あゆちゃん.......大丈.......夫?」

 爆発が収まった辺りで青ざめた様な顔でおそるおそるボクを呼ぶ名雪さんと、やはり意味深にじっと成り行きを見つめる秋子さん。

「............」

 ボクはすぐには何も答えなかった。というか答えられなかったと言った方が正しいかもしれない。


違和感


 そう、ボクはあの爆発の直後から何か不思議な違和感を感じていた。何なんだろう.......まるでボクの体が今までの自分の体とは少し違うような.......そんな感覚。

「というか......」

 明らかに違う気がする.......えーっと......

「?????」

「大丈夫?あゆちゃん.......?」

「.............」

 朧気に気付いた違和感の正体。でも、またも名雪さんの呼びかけには答えずにボクはがたっと立ち上がって、

「あ、あの.....秋子さん、ちょっと......パスルーム借りてもいいかな?」

「???」

「ええ。どうぞ。」

 頭にクエスチョンマークを浮かべる名雪さんと、対照的にまるで全てを知っているような表情の秋子さんを背にボクは小走りで駆け出した。......説明するより早く確かめたかったから。

『............』

 そして、バスルームでその違和感の正体を確かめた時.........

「うぐぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ?!」

 ボクは今日二度目の悲鳴を上げた。

 

************

「ふ〜ん......お母さんのジャム食べていきなり男の子になっちゃったのね〜。」

 ほへ〜という表情を見せて感心したように呟く名雪さん。祐一君なら飛び上がって驚いている所だろうがこの反応の鈍さはさすが名雪さんという所か。まぁ、それはともかく......

「うぐぅ.....うん。」

 つまり違和感とはそういう事だったりして。あって、無い。そんな感じ。

「お母さん.......」

 名雪さんは困ったような表情で秋子さんの顔を覗き込むと、

「ええ。すごいわねぇ。」

 同じく感心したように呟く秋子さん。

「.......だぁ〜っ!」

 それを聞いて名雪さんと同時に上半身を豪快に机に向かってヘッドスライディングさせるボク。
 うぐぅ。ボクをこんなにしたのは秋子さんだよぉ〜っ。

「うぐぅ......ボクこれから一体どうすれば.......」

 .......これじゃもうお嫁には行けないよぉ。.......いや、それならお嫁さんを貰えばいいのか。
 って違ーーーーーーう!そう言う問題じゃなーーーーーい!

「大丈夫よ。」

 そんなあれこれと脳味噌フル回転で今後の事に頭を抱えるボクを後目にあっさりと言い放つ秋子さん。

「それでお母さん、その根拠は......?」

 何かいたたまれなくなったといった感じでボクの代わりに問いかける名雪さん。どうやら相当負い目を感じているみたい。と言っても名雪さんは全然悪くないんだけど。

「大丈夫よ。」

 それに対してもう一度繰り返す秋子さん。

「......でも......」

 秋子さんがそう言い切って外れたことは確かに無いのはボクも、そして秋子さんの娘である名雪さんも良く知ってはいるけど、やはり今回は不安感がどうしても抜けない。

「そうね.......とりあえずあなたが見てあげたら?名雪。」

「え?う、うん......」

 突然話を自分に振られて頷く名雪さん。そして、名雪さんが゜頷いたのを見て

「だから、今日は泊まって行きなさいね、あゆちゃん。」

 それだけ言うと秋子さんはキッチンの奥に消えてしまった。

「.......うぐぅ。」

 あの秋子さんだからボクが困るのを見て楽しんでいるとはとても思えないけど.......でも.......秋子さんの真意が全然掴めなかった。

 

***********

 結局今日は秋子さんの家にお泊まりさせてもらう事になり、それでとりあえず名雪さんと一緒にお部屋に向かう事に。その途中で......

「ただいま帰りましたー。」

 と、ようやく学校帰りの祐一君とばったり鉢合わせた。

「うぐぅ......祐一君.......」

「お、あゆ、来てたのか。」

 いつもの表情でボクをじっと見る祐一君。......でもボクは何となく顔を合わせ辛かった。今は祐一君と同じ......男の子なんだよね、ボク......胸だって.....無くなっちゃったし。

「うん。あゆちゃん今日泊まっていくことになったから。」

 ボクの代わりに答える名雪さん。

「そっかそっか。んじゃ後でな。」

 それを聞くと一言そう言って、祐一君は後手で手を振りながらキッチンの方に消えて行った。......まるで何事もなかったかのように。

「........むかつく。」

 その祐一君の態度にボクは妙に怒りを感じていた。.......つまりボクは普段から男の子と見分けが付かないって言いたいんだね........!

「.......ま、まあまあ^^; あゆちゃんはどちらかと言うとボーイッシュで可愛い女の子だから.......ね。」

 わなわなと手元を震わせているボクを必死でなだめる名雪さん。

「うぐぅ.......どうせボクの胸は小さいよぉっ。」

「よしよし......別に胸の大きさなんて関係ないから.......ね。」

 半べそをかくボクを、優しく抱きしめてなでなでしてくれる名雪さん。ちょっと嬉しかったけど......でもボクが埋めている名雪さんの胸.......ボクより全然大きかった。うぐぅ。

 

 やがて、夕食をごちそうになって、お風呂から上がった後で再び名雪さんの部屋に戻ると時計は夜の10時を回ったところだった。......そろそろ名雪さんも眠くなる時間かな......そう思ったら、

「それじゃ、はじめよっか。」

 お風呂から戻ってきたボクに意気揚々とそう告げる名雪さん。

「ほえ?」

「だから、あゆちゃんを元に戻す方法を考えるの。」

 戻すって言ったって......

「名雪さん何か当てあるの?」

 その問いかけに少し困惑の表情を見せながら、

「無いけど......でも何もしないよりはマシって程度......かな。」

 最後の辺はトーンダウン気味になる返答。とりあえず当てはないみたいだけど.......

「うんっ」

 それでもボクは大きく頷いた。だって名雪さんの心遣いが嬉しかったから。当てはないけど、名雪さんなりにボクの為に頑張ってくれようとしてる。
.....だから素直に縋ってみようと思った。

「うん♪ それじゃ.......」

 ボクの頷きから自分の気持ちが伝わったことを確認したのか、名雪さんも大きく頷く。
 ここら辺からなんとなく名雪さんとの絆を感じることが出来て、こんな状態だけど何だか幸せな気分になれそうだった。

「うん、最初はどうしたらいいかな?」

 ボクも段々と乗り気になって名雪さんの言葉を揚々と待つ。

「それじゃ......とりあえずあゆちゃん全部脱いでくれるかな。」

「うん。分かった!........ってえ?!」

 そのまま反射的に着ていたセーターを脱ぎ掛けた所でぴたりと手が止まる。

「脱ぐって.......(汗)」

「だから、まずどういう状態なのか確かめたいから.......全部脱いで。」

 え、ええーーーーーっ???

「だ、だって......」

「女の子同士だし、平気でしょ?」

 にこにことそう告げる名雪さん。.......今のボクは男の子だよぉ。顔と中身はそのままだけど。

「え、えーーーーーっと......(汗)」

 そのままぴたりと硬直する。そんな、いきなり脱げって言われても......うぐぅ。

「........どうしたの?」

 きょとんとした目で見る名雪さん。

「うぐぅ.......やっぱり恥ずかしいよぉ.......っ」

 そう答えるボクの顔が、かあっと赤らんでいるのが分かる。.......でも別にボクが今男の子の体だからっていうより、多分女の子のままでもいきなり名雪さんに脱げって言われたらこうなると思うけど......

「う〜ん......」

 名雪さんは少し考える仕草をして、

「んじゃ恥ずかしくなくなるおまじないしてあげる。」

 ボクにそう告げるとすっと近づいてくる。気のせいか名雪さん顔も少し赤らんでいる気がするけど.......

「え?どうするの?」

「簡単だよ。目を閉じて。」

「こ、こう?」

 そしてボクが名雪さんの言うままに目を閉じたとき、

ちゅっ

 ボクの唇に柔らかい感触が広がった。.......ってままままさか.......これって名雪さんの唇........?

って事は........

『......名雪さんとキスしてるーーーーーーーっ?!』

 そう認識した瞬間、ボクの顔が真っ赤になると同時に頭の中の思考回路が一瞬止まる。びっくりして思わず瞳を開けると、ボクの目の前すぐに名雪さんの瞳があった。

「ん........っ」

 そのまま力の抜けたボクは、名雪さんに押し倒される様に、どさっという軽い音を立ててボクの背後にあった名雪さんのベッドに倒れ込む。

「はぁ.....っ、あゆちゃん........」

 そして唇が一度離れると、今度は艶めかしい視線でボクを見つめて.......ってあの名雪さんにこんな表情があるなんて.......うぐぅ

「な、名雪さん........」

 と何か言おうとしたボクの口を今度は指で軽く塞いで、

「........ね、今だけでいいから、わたしの事なゆちゃんって呼んで欲しいな........」

 と、じっとボクの目を見つめながら囁きかけてくる。

「で、でも.......」

 .......やっぱりちょっと抵抗があった。一応年上だし。

「.....ダメかな?」

 少し悲しそうな目で訴えてくる名雪さん。この押し倒された状態だと哀願というより脅迫っぽい物を感じるんですけど......(汗)

「......え、え〜っとぉ........」

 それで名雪さんの目を見たまま何も答えられずにいると、

「......まぁ焦っても仕方がないよね。それより.......」

 と言った次の瞬間、名雪さんの手がボクの服を脱がしにかかる。

「え....? うぐぅ......っ」

 それに対して反射的に体を両手で庇うボク。

「もう......脱がないと話が進まないよ〜?」

 そんな事言われたって......

「うぐぅ......やっぱり......んっ」

 やっぱり恥ずかしいよぉ.....って言いかけたところでもう一度名雪さんに唇を塞がれて、そして今度は名雪さんはボクにキスしたままの体勢で服を脱がそうとする。

『......ん......んん〜っ』

 そしてボクは力が抜けたところで強引に持ってくるなんてずるいってばぁ〜と心の中で叫びながらも、為す術もなく脱がされていった。.......といってもこの体勢の場合完全には脱がせられなくて中途半端に服をずらられているって事になるんだけど......

『.......うぐぅ(涙)』

 その分下手に動けなくなっていたりして。

「はい、大人しくしててね。あゆちゃん。」

 そしてとうとう名雪さんの手がボクのキュロットに手が伸びて、

「うぐぅっ......ダメえっ!」

 と最後の抵抗を試みるも......

「んんんんん......っ」

 やはり唇を塞がれてするすると下げられていく。名雪さん気のせいか手慣れてない〜???まさか前からこういう展開を予測してたなんて事ないよね........???

「うん。一度あゆちゃんをこうして襲っちゃおうかと考えてたんだよね〜♪」

 ......やっぱりぃ(涙)。って心の中読まないでぇ.......うぐぅ。

「だってあゆちゃん本当に可愛いんだもん。」

「うぐ.......」

 そう名雪さんに間近で言われるとドキドキするよぉ。

「.......そう言えば可愛いと言えば.......」

 と、そこで名雪さんの視線がボクのある一点に向かう。そして、

「.......”これ”もあゆちゃんにお似合いでかわいいね。」

「うぐぅ〜(涙)」

 .........しくしくしく。良く分からないけど、そう言われた時、なぜだか少し悲しかった........

 祐一君もこういう事言われたら悲しいのかな?

「........って きゃう.......っ! ち、ちょっと.....ぁ..........っ」

 そんな事を一人で浸っている間にも名雪さんはボクのを興味深そうに弄り始める。

「......どう?どんな感じ?」

 ど、どんな感じって言っても......

「.......何か変......な感じだよぉ.....」

 としか言えなかった。名雪さんが指で弄るたびに慣れない刺激がボクを襲う。.......それは今まで感じたことの無い感覚。そして、

「あ、大きくなってきた......それに熱い.......」

 .......うぐぅ。先に言わないでよぉ。

 そして名雪さんは今度はボクのを軽く握って上下させ始める。

「う......くぅ.......っ」

 自然と声が出てきてちょっと恥ずかしいよ.......でも、ボクのものを楽しそうに弄っている名雪さんと、今ボクが置かれている状況を考えると心臓がドキドキして来る。まさか名雪さんとこんな風になるなんて......さっきはキスもしちゃったし。うぐぅ。

「どう?気持ちいい........?」

「よ、良く分かんない.......」

 いや、実際気持ちいい.....んだと思うけど......でもやっぱり今は慣れない感覚への戸惑いの方が先行気味みたいだった。

「そっか......それじゃこうしちゃお。」

 やがて、手でボクのを弄ぶ傍ら、名雪さんはボクの胸に顔を埋めて来る。

「うぐぅ.......ん........っ」

 名雪さんの舌がボクの胸に触れたとき、ぴくりと電気が走ったような感覚がボクの体を走った。

「胸無くなっちゃったけどやっぱり敏感なんだね.......」

 名雪さんはそう呟きながら更に舌を這わせる。......でも、やっぱり元の女の子の時とは少しだけ違った感覚.......気持ちいいのは一緒なんたけど.......っていや、別に普段そういう事してるって事じゃなくて......

「?」

 ......一体誰に焦っているんだろう、ボクは.......いや、それはともかく......

「ん.....くっ......はぁ........っ」

 名雪さんに胸と同時に攻められていくうちに、次第にボクのものがじんじんとしてくるのを感じる。
 そして、突然何かが弾けるような感覚が襲ってきて......

「うぐ......何か.......出ちゃうよ......っ」

 どくんっ

 次の瞬間、ボクのものから何かが迸った........

「......わ.....っ」

 ボクから勢いよく飛び出して来たその”何か”に少し驚きながら手を止める名雪さん。いや、実際全然驚いてない様にも見えるけど。

「うぐぅ......っ」

 とりあえずどうしたらいいか分からずに困っていると、名雪さんは「そのままにしててね」と言うと丁寧に拭き取ってくれ始めた。........これだと何かボクお漏らしした子供みたいだよ.......

「ね、どんな感じだった?」

 ふきふきしながら興味深そうに尋ねてくる名雪さん。

「うぐぅ.....良く分かんない。」

 いや、何となく説明できなくも無いけど、だからって具体的に説明するのって何だか凄く恥ずかしかったのでお茶を濁す事にした。
 .......それはとても女の子の言う台詞じゃ無い様な気がするから。それより......

「そっか......でも.........」

 またも名雪さんがボクのある一点に着目する。

「.....うぐぅ。」

「出しちゃったのに全然小さくなってないね。あゆちゃん........」

 うぐぅーーーーーーっ 恥ずかしいよぉ........っ!

「うん......だったら......」

 それで名雪さんは少しだけ考える仕草を見せて、

「........しちゃおうか?わたしと。」

 ......ほえ?

「す、するって......?」

 思わず問い返すが、

「具体的に聞き返さないでよ〜(汗) 恥ずかしいんだから。」

「うぐぅ.....」

 そう言って顔を赤らめる名雪さんと同時にボクも自分の顔を真っ赤に紅潮させる。や、やっぱり「する」って事は......

「で、でも......」

「あゆちゃん、わたしとじゃ......嫌?」

 ボクの顔の直ぐ側でそう囁きかける名雪さん。

『........名雪さん.......』

 一度は落ち着いた心臓のドキドキが再び高鳴る。

「ボクは......その......名雪さんとだったら.......」

 .....いいかなって.......そう思った。良く分かんないけどいつの間にか名雪さんに特別な感情が芽生え始めたのかな.......?

「.......うん。」

 名雪さんはボクのほっぺに一度ちゅっとキスすると、密着状態だったボクから少し離れてするすると一枚ずつ丁寧に自分の服を脱ぎ始める。

『............』

 ボクはそれを見とれる様にじっと見つめていた......というかボクの目に映る名雪さんの躰、思わず妬いちゃうくらい綺麗だった。.......うぐぅ。
 そして、名雪さんが最後の一枚の下着を脱いだ時、何か透明な粘着質の様なものが、つーっと、まるで糸を引く様に走っていた。........ドキドキドキドキ。それを見てボクの心臓が更に高鳴る。

「.......わたしの仮定なんだけどね。」

 最後の一枚を脱ぎ捨てた所で名雪さんが話し始める。

「あゆちゃんのその中に溜まっちゃってるモノを全部出しちゃったら戻るかもしれないね。」

「え.....?」

 それはまたえらく突拍子も無い理論だなぁと思ったけど.......でも考えたらボクの今の状態そのものが非現実で突拍子も無いことなんだよね.......

「そ、そうかな.......?」

 だからボクはそれを間に受け止めてそう聞き返す。

「うん。何となくだけどそう思うよ.......」

 それに......実際はボクが元に戻る事が出来るかどうか自体誰にも分からないんだよ......
 それを考えるとしゅんと意気消沈せずにはいられないボク。でも、名雪さんはそんなボクに、にっこり笑って「大丈夫だよ。」と、そして、

「もし元に戻れなかったら、わたしが貰ってあげるから。」

 と言ってくれた。

「う〜......フクザツだよぉっ」

「あははっ」

 ......でも、ちょっぴり幸せだった。このまま元に戻れなくてもいいかなって.....うぐぅ、やっぱり元には戻れないと困るけど......

「......だけど......ありがと、なゆちゃん。」

 その時のボク、本当に嬉しかったから......

「.....うん。」

 やがて自然にお互いの唇を重ね合わせる。もう今日だけで4回目だけど、でも、これが始めてのボクとなゆちゃんのお互いが求めあったキスだった。

「............」

 そのまま唇を重ね合ったままの静寂の後で不意に離れるなゆちゃんの唇。その直後になゆちゃんの顔を見るのは何だか恥ずかしかった。

「........そ、それじゃ......ちょっとまってね。」

 なゆちゃんも同じだったのか、そう言ってボクから視線を逸らすように顔を移動させる。

「え......?どうする.......わっ!」

 そして、どうするの?と言い終わらぬうちになゆちゃんはそれを実行に移した。

「こうする......の。」

 なゆちゃんはあろう事かボクのものをそのお口にぱくんとくわえ込んでいた。

「ん.......っ そんな......事......っ」

 思わずボクの下半身に顔を埋めているなゆちゃんの頭を押さえる。なゆちゃんが自分のお口に含んだボクのものから、直接なゆちゃんの柔らかい舌の感触が伝わる。

「あ......はぁ......っ なゆ......ちゃん.......っ」

 たどたどしいながらもなゆちゃんの舌がボクを這い回ってとろけそうになる。.....うぐぅ。

「ん.........っ」

 そのまま一心不乱にボクのを舐め続けるなゆちゃん。それを見ていると何かボクの胸がきゅんとなる心地がした。けど......

「うぐぅ.......っ」

 ......このままだとボク.......また直ぐに出ちゃいそうだった。やはり例によって慣れていない刺激だけにもの凄く敏感になってるし。

「.......ん。そろそろいいかな。」

 と、そろそろ本気でマズイかなぁと思った矢先の絶妙のタイミングでなゆちゃんは顔を上げて、独り言の様にそう言うと、ボクに跨るような体勢になる。

「それじゃ、いくね......」

「う、うん....」

 そのままなゆちゃんはボクのを手に添えて、自らなゆちゃんの部分に宛っていき、そして.....

「ん.....あ.........っ!」

 ボクはなゆちゃんの中に入っていった。ゆっくりと、その感触を確かめるように。

「.......熱.......い」

 思わず声に出してしまう程、なゆちゃんの中は熱かった。そして、なゆちゃんに可愛いと言われてしまったボクのものでも奥まで入るのか心配になるほど狭くて、そこから感じるなゆちゃんの中の感触に、一気に頭が真っ白になっていく。

「は......うっ........あゆちゃん、少しこのままで.......」

 なゆちゃんもやはり最初は辛いのか、ボクのものが根本まで一通り入ったところで一端動きを止める。

「う、うん......」

 ボクもこのまま動いたらいきなり暴発しそうだったので、そのまましばらくなゆちゃんの中に入っている感触を実感する事にした。

『.......今なゆちゃんと一つになってるんだよね........』

 流石に口に出して言うのは恥ずかしいけど、それを意識するともの凄く感慨深い気分になる。きっとなゆちゃんも同じ事考えているんだろうな........
 そして、そんな時にふと繋がったままでお互いの目が合った。

「............」

 しかしお互い話す言葉が見つからずにそのまま黙って見つめ合ってしまう。......うぐぅ。

「なゆちゃん何か喋ってよぉ.......このままだと気恥ずかしいってばぁ。」

「.......あゆちゃんこそ.......」

 と次の瞬間お互いが顔を赤らめて視線を外してしまう。特にボクよりリードしてくれてるなゆちゃんの方がこういうときの恥ずかしさは大きいみたい。

「そ、それじゃそろそろ動くね........」

 そんな状態をはぐらかす様にそう告げるなゆちゃん。

「ふぁ.......ぁ........っ」

 そんな切ない声を喘げながら、なゆちゃんの体がゆっくりと、たどたどしく浮き沈みし始める。その時、ボクのお腹にかかったなゆちゃんの長い髪がちょっとくすぐったい感じだった。

「なゆ......ちゃん.......」

 その姿に、そのままなゆちゃんをぎゅっと抱きしめてしまいたくなるようないじらしさを感じながら、ボクはなゆちゃんの行為を受け入れていく。

「ん......はぁ.......ぅっ.......」 

 そして時折なゆちゃんの両手の間から、ボクとなゆちゃんが出入りしているところが見え隠れしてボクのものに更に血が上っていく。

『.......男のコの感覚ってこんな感じなんだ......』

 ホントは敏感な部分全てを包み込むような刺激に、気を抜くとすぐにでもまた暴発しそうだったけど、そんな不思議な感慨が丁度いい具合に刺激を緩和させてくれていた。

「........んぁ.......っ あゆちゃん........気持ち........いい?」

 だって.....

「うん......なゆちゃんの中.......あったかくってとっても気持ちいいよ.........」

 ボクだけ一方的に気持ちいいなんてずるいし.......ね。

 そして、ボクは不意に手を伸ばしてなゆちゃんの胸にそっと触れてみる。......うぐぅ。やっぱり大きくて形が良くて柔らかくて.......ホントに羨ましいよ。

「はぁ......っ........胸.......あんっ」

 それに対して甘い声の喘ぎで反応するなゆちゃんを見ながら、ボクはそのまま優しく愛撫していく。ホントはどうやったらいいのか良く分からなかったけど、でもなゆちゃんがもっともっと感じてくれる様にって、そんな想いを込めて。

 ......それにボクだって同じ女の子なんだよと、変な女の子としてのちょっとした意地もあったりして。

「ね、なゆちゃんも.......気持ちいい?」

 ボクもそう聞いてみる。すると、なゆちゃんは恥ずかしそうに「.......うん」と肯定しながらも、

「......でも女の子にそんな事聞かないでよぉ。」

 .....怒られた。うぐぅ。ボクだってれっきとした女の子だよぉ。

 そして更に行為を続けるうちに、最初よりも挿入が円滑になっていって、今度はなゆちゃんの腰の動きと同調してまるで生き物のように絡みついてくるような感覚がボクを襲う。

「はぁ......はぁ........っ あゆ.......ちゃん.......っ」

「なゆ.......ちゃんっ........」

 .....そして、いつしかボク自身もなゆちゃんを求めて動き始めていた。

「あ.....あゆちゃん.......ふぁ........っ」

 初めはタイミングがなかなか合わなかったけど、次第にボクとなゆちゃんのお互いリズムが掴めてきて、それによって更に快感が倍増してくる。

「う.....くぅ.......っ こんなの.......はぁぁ......っ」

「ふぁぁ......っ あゆちゃん........もっと.......来て.......」

 やがて、抱きしめ合うような格好で殆ど無心にお互いに動き合うボク達。

「なゆちゃん.........っ ボク.........っ!」

 そして、脳髄まで染み渡るような快感の渦で頭の中が空っぽになっていって、やがて不意に襲いかかってくる登り詰めるような感覚と共に、

「く......ボク......もう.......」

「いいよ......わたしの中に......来て.........」

 そして、なゆちゃんのその言葉をきっかけにして、

「う......ああ.......っ!なゆちゃん......なゆちゃ.......」

「ふぁぁっ........あゆちゃ.....ん.......っ!」

 ボクはなゆちゃんの中に果てた.......何度何度も。ボクとなゆちゃんが求めるままに。

 .......そして、まるでお互いの身も心も一つに溶け合っていく様な感覚と共に。

 

 

********

「う〜ん、結局戻らなかったね〜」

 お風呂で湯船に浸かりながらしみじみ呟くなゆちゃん。

「いや、まぁボクも流石に本気で元に戻るとは思ってなかったけど........(汗)」

 その呟きにボクもごしごしと体を洗いながら答える。.....いや、なゆちゃんがもし本気だったのなら悪いけど。

「う〜.......ごめんね。」

 申し訳なさそうにそう言うなゆちゃん。

「ううん。なゆちゃんがボクの為に頑張ってくれてたのが嬉しかったから。」

 不思議と今のボクの頭にあるのはその事ばかりだった。さっきまでのやり場のない不安感は何処かに行ってしまったみたいで。だって.......

「......ね。それより、さっきボクに言ってくれたこと.....」

『もし元に戻れなかったら、わたしが貰ってあげるから。』

「うん。....約束、だよ。」

 幸せそうな笑顔でそう約束してくれるなゆちゃん。

 ......やっぱり、このまま戻れなくても........いい.......かな。

 そう思った。同じベッドで寄り添うように眠りながら、そして直ぐ側にいるなゆちゃんの寝息と体温を感じながらボクは凄く幸せだと感じたから。それは同じ幸せでも祐一君と一緒にいる時とは少し違う幸せ。

 ........でも、今はそれを一途に感じていたかった。

 

 と思ったんだけど......

「.......うぐぅ、戻ってる......?」

 次の朝目覚めてみると、まるで何事も無かったかのようにボクの体は元に戻っていた。

「?????」

 それで、慌てて寝ぼけ眼のなゆちゃんと二人でキッチンで朝ご飯の準備をして待っていた秋子さんに尋ねてみると、

「ええ。あのジャムにかけられた魔法の効果は一晩だけですから。」

 とさも当然の事の様にあっさり答えてくれた。当然次の瞬間、完全に目の覚めたなゆちゃんと二人で豪快にテーブルへごんっと頭をぶつけて、

「もう、そう言うことは最初に言ってよぉ〜っ(汗)」

 と叫ぶと同時にどっと疲れが出るボク達。........うぐぅ。秋子さんも人が悪いよぉ〜と、その時は机に俯せになりながら心からそう思った。

 

 でも......

「......実はね、あゆちゃん。」

 その後で秋子さんはボクだけにホントの事を話してくれた。

「あのジャムに掛けられた魔法って、縁結びの魔法だったんですよ。」

「縁結び........?ボクの?」

 そこでふと昨晩のなゆちゃんとの事を思い起こす。

「ええ。ちょっと変則的な効果だけど.......」

「あ.......」

「ふふ。.......そういう事です。」

 それだけ言うと秋子さんはキッチンの奥に消えていった。

「...............」

 うぐぅ......やっぱり意地悪.......だよぉっ。でも.......

『.......もう一度、あのジャム食べてみてもいいかな......』

 ......何故かその後、そう思うボクがいた。

 

********そして、数日後

「うぐぅ.......」

 雪ですべってお尻から着地した地面はとても冷たかった。
 やっぱり普通に玄関から入れば良かったかなと今更思うも、既に目的の場所はすぐ目の前。

『.....突然顔を出したら驚くかな......?』

 それ以前にあの人がもう眠っていないかどうか心配になって腕時計を見ると、時刻は午後11時の10分前。うぐぅ。微妙だなぁ......
 それでもカーテンの隙間から光が漏れているから多分まだ起きてる......と思う。電気付けたまま眠っている可能性も大いにあるけど。

「............」

 そしてガラス戸の前に立って一瞬躊躇する。ここに来て「やっぱ非常識だったかなぁ」と今更考え出してしまう。

『......でも.......』

 ここまで来て引き返すのも嫌だよね。......それに降りる方法考えずに登ってきたんだし。

「............」

 勇気を振り絞ってコンコンと軽くノックする。ガラス戸とカーテン越しの無効にあの人が居る部屋に。
 そして、コンコンと叩き続けても反応が無くて、いい加減凍え死ぬ前に隣から入れる祐一君のお部屋から入れて貰おうかと考え始めた刹那、

「え.....誰か居るの?」

 不意にカーテンが開けられて、部屋の明かりが驚いた顔をして表を覗き込むあの人の前にボクを映し出した。

「うぐぅ.......寒いよぉ.......」

「え.....あゆ.....ちゃん??」

 相変わらずの間延びした台詞と共に慌ててガラス戸を開けるなゆちゃん。何とか凍え死にする前に辿り着けたみたい......

「うぐぅ.....こんばんわ。」

 開けられたガラス戸から慌てて自分の部屋に入れようとするなゆちゃんに挨拶する。

「どう.....したの?(汗) こんな夜更けに。」

 流石に驚いているみたい。.......まぁ、当然だよね。

「うぐぅ、なゆちゃんに会いたくなったから.......」

 極寒の外とはまるで別世界のような、暖房の効いた暖かい部屋に入ってとりあえずほっとする。

「それで、ベランダから来たの........?」

 何はともあれボクを部屋の中に招き入れて、そして再び閉め直したガラス戸越しにベランダを見つめるなゆちゃん。

「うぐぅ、祐一君達には内緒で会いたかったから........」

 と、一度視線を落とす。

「あゆちゃん.......」

「うぐぅ.......やっぱり迷惑だったかな?」

 そして、落とした視線からおそるおそるなゆちゃんの顔色をうかがおうとした時、

「あ.......」

 ボクはなゆちゃんに抱きしめられていた。.......全身で伝わるなゆちゃんのねこさん半纏の暖かい感触がボクを包む。

「.......ううん。嬉しいよ。......実はね、ホントはもうそろそろ眠ろうと思っていたんだけど........」

 というより、多分明かりをつけたまま寝ていたなゆちゃんをボクが起こしたという方が正解だと思うけど.....

「そういうことなら、今日はあゆちゃんとずっと一緒にいるね。」

 うぐぅ。その言い方だと後一時間もないけど.......

でも......

 .......ボクは幸せな気分に包まれていた。秋子さんにかけられた意地悪な魔法の効果を確かめるために来た今夜も、あの日の夜の様になゆちゃんはボクを優しく受け入れてくれた。
 ボクの姿は元に戻っちゃったのでもうあの約束は無効になったけど.......でも、

「......あゆちゃん........すー.......」

 .......また、なゆちゃんと新たな約束を紡ぐことが出来たから。

 

***********とりあえずおわり♪***********

 

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